今月の学校図書館


2016/12/04

東京大学教育学部附属中等教育学校

Tweet ThisSend to Facebook | by 村上
 今月は、同じ国立の附属学校つながりで、親交のある東京大学教育学部附属中等教育学校の司書教諭 勝亦あき子先生と学校司書の菅瑠衣さんに、図書館の紹介をお願いしました。近年、探究学習を核として学校図書館活用が急速に進んできた様子を詳細なレポートで紹介いただきました。


1.概要


 東京大学教育学部附属中等教育学校(以下、東大附属)は、全校生徒数約720名の中高一貫校です。毎年男女60名ずつ合計120名が入学し、2年ごとにクラスと担任を替えながら、中高6年間ほぼ同じメンバーで過ごします。本校は双生児研究を行う「ふたごの学校」でもあり、1クラス40名あたり約7~8名が双子の片割れです。長年、生徒個々の興味・関心を重視し主体性を育む学習活動を展開してきましたが、10年ほど前から協働学習も全面的に導入し現在に至っています。

 東大附属の図書館は蔵書数約3万冊。年間貸出冊数は約6千冊で1日あたりの平均来館者数は約100名です。授業での活用も増えており2015年度の授業利用回数は300時間を超えました。


2.卒業研究を支える図書館


 ここでは、本校の教育課程上の大きな特色である卒業研究のおおまかな流れと、卒業研究のために生徒がどのように図書館を利用しているかをご紹介します。

 本校では30年以上ほぼ同じ形で卒業研究を課しています。5・6学年の生徒は全員、1年半かけて自ら立てた研究テーマに取り組み、16,000字以上にまとめる「卒業研究」を提出します(卒業要件)。教員も全員体制で卒業研究を担当し指導します。

   まず、生徒は4学年の終わりに卒業研究のテーマを決めなくてはなりません。このテーマを決めるためには3人の教員を説得し、承認印をもらうことが必要です。毎年2月になると、校内のそこかしこで教員を呼び止め、懸命にプレゼンしようとする4学年生徒の姿がよく見られます。

 図書館ではテーマ決めのために本やインターネットで情報検索をしてノートに記録する生徒の姿が見られます。教員の助言で調べ物に来る生徒もいますが、テーマが決まらず困った表情で漠然と相談しに来る生徒もいて、カウンターの司書が相談に乗ることもしばしばです。

  5年生からは卒業研究が本格的にスタートします。授業は5・6年通して毎月1回設定され、生徒はここで指導教員に毎月進捗状況を報告し、教員から助言を受けます。生徒はパソコンでA4の紙1枚分の小レポートを作成し、この報告に備えます。5年生の1月には4800字の中間報告書を提出して中間発表会を行い、6年生の7月に卒業研究本体と1600字の要旨を提出します。その後9月に発表会を行い、10月の文化祭で全員分の卒業研究を展示・公開します。
 卒業研究の授業前日頃から当日昼頃まで、図書館には報告用の資料を作成するために多くの生徒が来館し混雑します。だいたいは家庭で書いてきて、印刷する時に少し手直しを加え、その後プリントアウトする生徒が多いようです。また卒業研究が終わると図書館に来て文献を探しに来る生徒もいて、ここでも司書が相談に乗り活躍します。
  1月の中間報告や7月の提出直前ともなると、生徒の姿は更に多くなり、互いに情報交換して製本の仕方を確認したり、目次や注などの書式や印刷方法を司書に相談したりする姿がよく見られます。ノートパソコンは争奪戦となり図書館内は大混雑です。期日に卒業研究を完成させて提出しないと進級・卒業に関わるため、生徒も必死です。
  提出日の6年生の表情を見ていると、卒業研究には全員で行うからこそ得られる独特の達成感があるようです。こうした卒業研究に打ち込む先輩達の姿を見て「すごいなあ」「大変そうだなあ」とつぶやく下級生もおり、先輩の背中は後輩達のよきモデルとなっているようです。

 図書館に上級生がやって来て真剣に頑張る姿を多く見かけるようになったことで、図書館全体の雰囲気が前向きに引き締まり、下級生達にもよい影響を与えていることを実感しています。


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