江戸の魅力たっぷり! 『絵本 江戸のまち』

2017-09-07 05:34 | by 村上 |

 『絵本 江戸のまち』 太田大輔作 講談社 2017
 
新しく入った本のコーナーに飾ってあったこの本に目を止めたのは、歴史が専門の社会科の先生。「こんな本が出ていたんですね。これはいい!」と手にとって眺めています。「江戸の学習の導入に、江戸の町を描いた絵や、写真などを見せて、気づきを促す授業をする時があるんですが、この絵本はすごくいいですね」と先生。

 そうなんです! 勉強という意識ではなく、とても楽しめる一冊なのですが、学習にも役立ちます。学校図書館の蔵書にぜひ入れてほしいです。
 この絵本、江戸の風景と、そこに暮らす人々の姿が綿密に描かれています。案内役は、東京に1000年前から住んでいる妖怪小僧。まずは江戸でいちばんの遊び場、両国からご案内。妖怪小僧は、どのページでも、江戸の人たちのなかに紛れていて、探すのも楽しい。江戸の様々な町の様子が描かれ、巻末には、それぞれのページの説明もあり、子どもだけでなく、大人も楽しめる江戸の絵本となっています。

 作者の太田大輔さんは、もともとはアメリカを題材にグラフィック・デザインのお仕事を手がけてきました。ところが、ふとしたきっかけで落語「火炎太鼓」に魅了され、そこから古典落語と江戸の暮らしにどっぷりはまってしまったそうです。太田さんの言葉を借りれば、「江戸の町は今の東京と比べると狭いエリアだが、今はない面白い商売、職人、その人間関係やしきたり、生活があり、物語を作る題材の宝庫と言っても過言ではないだろう。」 その思いが、江戸を描き続ける今につながっているのですね。

 2010年には、『カラクリ江戸あんない』(福音館)を出しています。こちらは、発明家のおじいちゃんが作ったカラクリ機械を覗くと、江戸の長屋に住む船頭さんの喜助の暮らしが見えてくるというしかけです。
    
 2014年に出した『江戸の象吉』(講談社)は、享保14年(1729年)にベトナムから象が江戸にきた史実にもとづいて書かれたお話です。なんと登場人物はぜ〜んぶ動物。大飯食らいの象吉は、倒れそうなほど腹ペコなところを江戸の魚屋「魚犬」の主人に助けられ、「魚犬」で働くことになるのです。気立てが良くって、働き者の象吉はたちまちみんなの人気者に。ところが、この江戸の町では次々と事件が起きます。難事件を解決したり、火消しとなって活躍するのが、象吉です。こんな物語に小学生の時に出会ったら、きっと江戸が好きになるのではないかしら。

 附属世田谷中学校司書 村上恭子

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