物語からつながる世界

2017-02-16 08:31 | by 村上 |

 2015年9月に翻訳家の金原瑞人さん、三辺律子さん、イラストレーターのオザワミカさんの3人で発行が開始されたのが、海外小説を紹介するフリー(無料)の小冊子「BOOKMARK」。翻訳家自身が翻訳した本をテーマに沿って選んで紹介するという内容で、ラインナップが素晴らしい。

 ということで、この「BOOKMARK」で紹介されている本で所蔵しているものを集めたコーナーを設置。翻訳家自身が紹介しているだけあって、読みたくなるような本ばかり。小冊子の大きさもCDケースのサイズで、イラストもかわいいので生徒もよく手に取っている。紹介文の中から文章を抜き取ってPOPを作成し、一緒に展示している。

 そうこうするうちに、なるべく年1回開催している講演会で、金原さんと三辺さんをお呼びできることになったので、三辺さんと金原さんの翻訳本コーナーも作って、海外小説を紹介するエリアを拡大した。それにしても金原さんの翻訳本の多いことったら!! おかげで海外小説の棚がスカスカに……。

 ところで「BOOKMARK」第1号で紹介されていた『郊外少年マリク』(マブルーク・ラシュディ著 中島さおり訳 集英社)はフランスでホームグロウン型のテロリストが誕生してしまう社会背景を描き出した作品だ。この社会背景は、一瞬を切り取るニュースからはなかなか理解できない。海外小説を読むことの意味に、改めて気づかされた作品だ。


 海外小説を読むということは、その国の文化に触れ、理解する第一歩になる。今、世界では異文化に対する無理解から、さまざまな問題が引き起こされているように思えてならならない。異文化を理解し、世界とつながってほしいという思いを込めて、コーナーには「物語からつながる世界」とタイトルを付けた。

 何となく海外小説を読む生徒が減っているように感じている今日この頃。「お薦めの本ないですか」ときかれたら、まずは、このコーナーの本から紹介するようにしている。

(玉川聖学院中等部・高等部/鳴川浩子)


 金原瑞人オフィシャルホームページ BOOKMARK

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