2020Zoomによる緊急学習会「学校図書館と著作権」開催報告

2020-09-28 05:09 | by 村上 |

 9月27日(日)、13:30より、「2020Zoomによる緊急学習会「学校図書館と著作権」を開催しました。急に立ち上げた学習会にもかかわらず、多くの皆様の協力を得て、大変充実した学習会となりました。「参加者100名 キャンセル待ち 153名(録画配信希望者含む。録画配信は少々お待ちいただいています。)」
  
「学校図書館と著作権」プログラム.pdf
著作権と学校図書館-参考資料.pdf
 当日の記録(簡易版 附属学校司書部会 中村・宮崎 協力 都立高校学校司書会 杉山)は、下記をクリックしてください。↓ 詳細な記録は、後日「司書研修の報告」にアップ予定です。

    2020Zoomによる緊急学習会「学校図書館と著作権」記録.pdf

  第二部 発表資料
    宮澤優子氏    「緊急学習会「学校図書館と著作権」.pdf
    渡邉光輝氏    中学校現場と著作権
    原口 直氏    20200927学校図書館発表 原口.pdf
    千田つばさ氏     著作権学習会.pdf 

    著作権第31条に、どうして学校図書館が含まれなかったのか?というのは、附属司書部会の共通した疑問でした。それに対し、国会図書館職員の南亮一氏が、貴重な資料を全国SLAの了解を得て公開してくださいました。当日は、一参加者として学習会にいらしていた南さんに、補足していただき、その経緯を知ることができました。

学校図書館速報版(昭和50年2月25日) 
追加資料→31条と35条との違い南.pdf 
学校図書館速報版(昭和44年5月5日「著作権法案、公開に上程」) 
学校図書館における資料の複製について要請南.pdf 
学習会中に公開された資料→文化庁の著作権法案逐条解説書の現施行令1条の3関係箇所

 

 50年前、全国SLAは、この問題に粘り強く取り組んでいた様子が、その資料からは読み取れます。結果的に、要望は聞き届けられませんでしたが、当時の文化庁著作権審議会第4小委員会の報告書には、今後研究する課題であると明記されています。
 
 ここからは私の個人的な考えですが、50年後の今、世の中は大きく変わりました。ますます不確定な未来を生きる子どもたちには、確かな知識とともに、彼らの知的好奇心を育む環境は必須です。文科省のGIGAスクール構想によって、一人一台のタブレットが使える時代がすぐそこまで来ています。(鎌田和宏先生からは、図書館に容易にたどり着けない地方ではインターネットはより重要だが、はたしてそれだけで情報活用能力を育てられるのか?そこにしっかりと整備された学校図書館が必要とご発言いただきました。)今回の著作権改正に向けた検討が文化庁文化審議会で行われていくなかで、公衆送信に絡んだ著作権者への補償や図書館の権利制限規定の在り方をどうするかがというテーブルに学校図書館は加わらなくていいのかという疑問がこの学習会の発端でした。


 教育現場は、著作権第35条でこれだけ優遇されているのに、さらに第31条までも行使したいというのは欲張りすぎでは?…そう取られかねない危険性についての貴重なアドバイスもこの日いただきました。教育的な利用であれば、複製は可能。さらに、今回公衆送信も補償金制度が整えられ、授業と認められる範囲も以前よりも広くなっています。

 それらを踏まえたうえで、改めて第31条の図書館に学校図書館が入ることの意味を考えてみました。それは、学校図書館が、「著作権」について考える生きた「場」になることです。学校生活において、子どもたちは主体的に活動する中で、第35条の教育的利用で許される複製と、図書館が個人の調査研究のために許される複製の違いを理解していけるのではないかと考えます。なにより、学校図書館が第31条の図書館に入ることで、学校図書館に関わる私たち自身の著作権への理解が確実に進むのではという、手ごたえを感じています。

 すべての児童・生徒が必ず出会う学校図書館が、自分の知的好奇心に寄り添ってくれる存在であることは、学びの質をより豊かにすることにつながらないでしょうか?高校や中高一貫校の図書館なら、国会図書館によるデジタル化送信サ-ビスへの要望も高いはずです。

 とは言うものの、学校にタブレットやスマホの持ち込みが認められるようになれば、資料は簡単にデジタル化ができてしまいます。公衆送信の問題も含め、まだまだ考えるべきことは多そうです。今回、いろいろな立場からのご意見・アドバイスをいただきました。このようなオンラインでの学習会を定期的に開催する必要性も感じました。皆様の意見を広くお聞きする意味でも、学習会に参加された方は、ぜひアンケートフォームにご意見を送っていただけたらと思います。

文責 附属世田谷中学校司書 村上恭子

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