学校図書館からの発信 ~工学院附属中学校・高等学校図書館~

2020-04-08 14:09 | by 村上 |

 東京学芸大学附属図書館が発信している、小中高等学校臨時休校に伴う関連情報リンク集 を開くと、学校図書館によるまとめサイトという項目があります。そのひとつが、工学院附属中学校・高等学校が発信する「休校中の学習支援サイトを紹介します」というものです。

     https://www.fab-library.com/

 


    このサイトを作っているのが、工学院附属中学校・高等学校の司書教諭、有山裕美子さんです。(以前「今月の学校図書館」でも取材させていただきました。)そこで、有山さんに、どのような思いでサイトを立ち上げたのか、お聞きしてみました。

Q1:このサイトを作ろうとすぐに思い立ったのですか? また、つくる手間はかかりませんでしたか?とても見やすいサイトになっていますよね?
   
A1:ありがとうございます。生徒たちが無料で使えるサイトがかなり出てきて、紹介したいなと思った時に、一番良い方法はどこかにリンク集を作ってしまうことだと考えました。また、学校が休校になってしまったので、改めて電子図書館をアナウンスしたいということもあり、できるだけ早く公開したい(面倒くさい手順は避けたい)という思いもありました。

 今回のサイトの運用開始は3月2日。毎日新しいものを見つけると追加していきました。最初はただ貼っていたのですが、途中で多くなってきたので、カテゴリ分けをしました。

 学校のサイト内で何か作ることも考えたのですが、自由に更新したかったので、改めてサイトを作ることにしました。fab.libraryというドメインは個人的に取得しました。WixというWeb作成サービスを使ったのですが、誰でも簡単にサイトが作れます。ひと目でなんのサイトかわかるように、画像にリンクを貼る形にしました。


Q2: 何か、教員や生徒からのリアクションはありましたか?

A2:作る際に情報科の教員やICT担当教員に相談しました。完成した後、報告すると、すぐに学校のブログで紹介してくれた上に、学校サイトのHPにリンクを貼ってくれました。こういう連携には本当に感謝です。生徒にはEdmodoという学内で使っているコミュニケーションツールで周知しました。個人メッセージ等で「よく使っています!」というメッセージをくれた生徒もいます。

Q3: すでに電子図書館を導入している工学院附属ですが、生徒の電子図書へのアクセス状況はいかがでしょうか?

A3:増えています。また、4月に入ってから新規の本や、国語の課題等の本も購入したので、その効果もあるかもしれません。また、13日から始まる英語科のオンライン授業では、電子図書館を使うとのことでした。生徒が個別にアクセスできるので、著作権の問題も発生せず、こうした場合は助かります。年末に学校の休講を受けて無償提供いただいた英語を中心とした3941点の電子書籍はマルチアクセスで、授業にも活用が可能です。
 
Q4:今回の自宅待機や、図書館や書店が閉まる事態になり、紙の本を手にしにくい状況になっていますが、こういうときに電子書籍は有効だと感じていますか?

A4:はい、強く感じています。上記3のような理由によります。新規購入も可能ですし、購入すれば1日以内には配架されます。また、新規登録も不要で、生徒に各々が使えるIDとPWを伝えれば済みます。これはかなり有効な手段です。
 
Q5:「COVID-19」の収束の見通しが立たず、オンライン授業や電子書籍の導入が進みそうですが、すでに一歩先を行く有山さんは、今後学校図書館としてどのようなサービスを提供していこうと思っていますか?
 
A5:生徒たちにとって有効な情報を、それぞれの学校の実態に合った、適切な形でアーカイブして提供すること。電子図書館もその一つですし、インターネット上の有効な情報をみやすい形で整理して提供することもあります。学校の授業の日程や教師からの課題、ネット配信した授業などのアーカイブなども含まれると思います。本校の授業で活用している電子書籍作成ツール、Romancerなどを活用した論文指導などがあっても良いかもしれません。データベースの提供の入り口としての機能もありますね。学校図書館が情報のインフラであるべきだと思っていますし、時代に合わせて形を変えて、それを支えていくことが重要だと思っています。どこまでできるかわからないけれど、できることをしていきたいと思います。(まさしく、図書館は成長する有機体ですね!)

 リアルな本もレファレンスも読書指導ももちろん大事。でも、これからはもっとICTを活用した対応が求められてくるのではと思います。学校図書館はもっともっと、校内のICTや教科情報と連携すべき!!!と、心から思っています。学校教育の中で、情報活用能力の育成の場から、こぼれ落ちてしまわないように。

 お忙しい時期、お答えいただき、ありがとうございました!校内のICTや教科情報と連携すべき…という言葉は、本当にその通りだと思います。学びのありかたが、変わらざるを得ない転換期に私たちはいるのだと思います。そのためには、私たち自身の固定観念を崩していく必要もあるかもしれません。

            (文責 東京学芸大学附属世田谷中学校 村上恭子)

次の記事 前の記事