カーリル発 COVID-19 学校図書館支援プログラム

2020-05-11 14:39 | by 村上 |

   2月末からの小学校・中学校・高等学校・特別支援学校の臨時休業が今も続く地域も多いのではないでしょうか。今後、学校が再開されても、当面は感染防止の対策が取られることと思います。
 学校図書館は、学年を超えて子どもたちが自由に集うことができることと、それぞれの学校担当者が自校の児童生徒のために構築した蔵書から、自分が読みたい本を自由に選ぶことができることが、最大の魅力のように思います。ところが、そもそも学校に登校できなかったり、学校が再開しても以前のような生活にはすぐにはもどれそうもない今、「どうやって、子ども達に本をとどけられるのだろう…?」と悩んでいる学校図書館担当者さんも少なくないことと思います。

   このような状況を知り、救いの手(!)を差し伸べてくれたのが、全国の図書館の蔵書情報と貸し出し状況を簡単に検索できるサービスを展開するカーリルです。4月24日、カーリルのブログに次のような記事が掲載されました。

 
COVID-19 : 学校向け蔵書検索サービスの無償提供について
学校図書館などを対象にインターネットからの蔵書検索と、申し込みを受け付ける簡易的なシステムを無償で提供します。これにより、蔵書検索システムが整備されていない場合で、早急に整備することが難しい場合でも簡易的なウェブサービスを立ち上げることができます。

  詳細はこちらをごらんください。

 蔵書データを外部から検索できるシステムを備えているのは、限られた学校ではないでしょうか?しかし、貸出管理を機械化している学校であれば、蔵書データをダウンロードして送るだけなので、それほど難しいことではなさそうです。
 

 さっそく本校の蔵書データを送り、蔵書検索サービスの構築をお願いしたところ、すぐに対応いただけました。自宅で読みたい本を検索して予約してもらい、本を手渡すだけなら、学校が再開されればできそうです。

 このようなサービスを無償で行ってくださっているカーリルさんに、是非にとお願いして、インタビューをさせていただきました。答えてくださったのは、カーリルのふじたまさえさんです。(なお、回答は5月10日にいただいたものです。)

 Q;なぜこのようなサービスを思い立ったのですか?

 A;昨年から埼玉県高等学校図書館研究会と、学校図書館の総合目録に関する実証実験を進めていました。この取り組みは、オープンな書誌データを活用することにより、低コストに蔵書検索サービスを構築するものです。蔵書検索サービスを外部公開する際に、この技術がそのまま応用可能であったため、急遽無償提供プログラムを整備しました。昨年からのこの取り組みがタイミング良く生きた形になりました。


 Q;そうだったのですね。そのような試みの恩恵を今私たちも受けているのは、とてもありがたいです。埼玉県高等学校図書館研究会といえば、毎年「高校図書館司書が選んだイチオシ本」を決定していますよね。カーリルの本のレシピでも紹介していて、どれも読みたくなる本ばかりです。ところで、いまのところ、どのぐらい問い合わせがきているのですか?

 
 A;この2週間で現在までに50件程度の問い合わせをいただいており、三重県立津高等学校図書館を皮切りに10校程度で運用が開始されています。反響の大きさに驚いています。ただ、郵送貸出については、郵送費などの確保がなかなかうまくいかないという話も複数いただきました。まずは蔵書検索がオンライン化されることで、分散登校時の受け渡しなどいろいろなサービスに広がる可能性があるのではないかと考えていますので、広く活用いただきたいです。


 Q;三重県立津高等学校図書館公式HPは、私も見せていただきました。日頃から素敵な活動をしている学校図書館とお見受けしました。提供いただいた蔵書検索サービスと、GoogleClassroomを活用し、生徒からの「ざっくりとした」リクエストにも応え、郵送で本を送っているんですね。動画「本ススメ」まで作ってしまうあたり、見事なフットワークです!最後にこのサービスに関心をもってくれそうな学校図書館の担当者さん
にひとことお願いします!

A;無料で使えるからといって、うまくいかないような場合でも、あきらめないでほしいです。カーリルでも最大限のサポートを提供します。特に検索結果については厳しい評価をお願いします。例えば、こんな本の検索がうまくいかない、といったことがあれば積極的にフィードバックをいただけると嬉しいです。導入いただいた学校図書館では、サービスの内容などを積極的に外部に共有いただけると、これから取り組む図書館にとっても参考になるのではないかと思います。このようなときだからこそ、将来に向けて従来実現できなかったことも試すきっかけになればと考えています。お気軽にご相談ください。

 お忙しい中、インタビューに応えていただき、ありがとうございました。これまでは、学校内で完結していた学校図書館の活動が、これを機に、もっと繋がっていく予感もしますね。ピンチをチャンスに変えていきたいものです。

               文責 東京学芸大学附属世田谷中学校 村上恭子


 


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