~生徒会誌の記述より~
◆一日目
私たち一年生は十一月九日から十一月十一日まで、二泊三日で北総常南修学旅行へ行った。小金井中に入学して初めての修学旅行で、事前学習を何か月も前からやっていただけあって、楽しみで仕方がなく、集合場所の新宿には早く着いてしまった。
集合するとすぐバスに乗って車窓観察が始まった。車酔いをしないか心配だったが、社会科の先生の説明がとても面白くて酔うことを忘れてしまった。
一日目は「加曾利貝塚」と「成田山」、そして「伊能忠敬記念館」に行った。この三か所はすべて歴史が関係していて面白かった。
最初の目的地の「加曾利貝塚」はとても大きく、貝塚だと言われなくては分からない広さに驚いた。また広さだけではなく縄文時代の衣食住についてよく分かり、現代との共通点もあり親近感がわいた。次の目的地の「成田山新勝寺」は、お寺の中で参拝者数日本一というように、人が多く歴史的な場所だと感じた。門前町は周りに配慮したコンビニがあり、現代と歴史が融合されていた。そして一日目の最後の見学場所の「伊能忠敬記念館」は、伊能図と現代の地図との比較ができた。
この一日は初めての修学旅行のスタートを切るのにはいい一日だった。新宿の車窓観察から始まり、ホテルに行くまでのバス車内まで充実した一日だった。特に実際に見学できた、「加曾利貝塚」と「成田山新勝寺」と「伊能忠敬記念館」では現代との比較ができた。
◆二日目
北総常南修学旅行も二日目を迎えた。外は寒いが快晴である。そんな中、犬吠埼ホテルの屋上で朝礼が行われた。ラジオ体操をし、犬吠埼付近の地質について、理科の先生がお話をしてくれた。この辺りは太平洋に面しており、波の影響で崖が侵食され、とても入り組んでいる。またいくつかの層が積み重なっており、最初の層に関しては、白亜紀以降にできたらしい。
二日目は、「銚子漁港」と「ヒゲタ醤油工場」、そして「新日鐵住友金属鹿島製鉄所」を見学するコースである。最初は「銚子漁港」だ。ここは、第一漁港から第三漁港まである非常に大きい漁港である。今回は第一漁港で、銚子漁港の概要と鮪等の入札風景を見学させていただいた。銚子漁港の概要は映像として見せてもらった。銚子漁港の歴史や近海で獲れる魚、銚子漁港の地位などが紹介されていた。入札では、仲買人たちが魚をチェックしていた。入札というのは、仲買人や担当の人が水揚げされた魚を選別し、全国各地へ輸送するという重要な作業である。選別時に使うのが、「てかぎ」と呼ばれるもので、切り取られた魚の尾を「てかぎ」で刺して魚の鮮度や身の具合を調べる。魚を決めたら、その魚の情報を紙に書き、紙と魚の尾を持って別の施設へと向かっていった。どこに行ったかは見学できなかったが、すごい場面を見させてもらった。
次は「ヒゲタ醤油工場」である。ここでは、醤油づくりに適した環境である「千葉」を利用して、生産と販売を行っている。今回は、ヒゲタ醤油の概要や使用する原料、製造過程を見学させていただいた。ヒゲタ醤油の概要は、創業当時のヒゲタの様子や社名の変化、苦悩についてお話をしていただいた。使用する原料は主に、大豆・小麦・食塩・ヒゲタ菌(麹菌)を使用しており、これは創業当時から変わらないという。ヒゲタ菌については麹菌と役割は一緒なのだが、ヒゲタ独自でオリジナルの菌をつくったらしい。製作過程は、VR(バーチャルリアリティー)を使って説明してくださった。まず、大豆を蒸し小麦を炒る。次に、ヒゲタ菌を加えて麹を作る。そして、麹に塩水を加えたもろみを六ヵ月間かけ、発酵・熟成させる。それから、もろみを布に包み圧力をゆっくりかけて絞る。最後に加熱をして、殺菌と同時に色や香りを整える。こうして作られた醤油は、検査されて、異常なしの醤油をボトルに詰めて全国へ出荷される。醤油はこうして作られる。
最後は「新日鐵住友金属鹿島製鉄所」である。ここは、鹿島臨海工業地域の敷地内あり、鹿島製鉄所では金属を作っている。ここでは、鹿島製鉄所の概要と鉄の作り方について見学させていただいた。鹿島製鉄所の概要については、社名の変化や新日鐵住友金属鹿島製鉄所の位置についてお話をしていただいた。鹿島臨海工業地域並びに、新日鐵住友金属鹿島製鉄所の敷地面積は、一千万平方メートルでこれは、東京ドームの約二百二十倍、東京ディズニーランドの約十四倍にも及ぶ。鉄の作り方は映像を使って、紹介されていた。まず、船で主にオーストラリアから輸入された、鉄鉱石や石灰石を焼結工業に運ぶ。次に、運ばれた原料を高炉に入れる。入れられてできたものは銑鉄と呼ばれる。銑鉄は出来立ての鉄でもろくて硬いので、トーピードカーに乗せて転炉へと移される。そして転炉では、製鋼され銑鉄が鋼になる。できた鋼は連続鋳造設備に運ばれる。最後に、スラブへ移されて薄板鋼板や厚板鋼板などの製品が作られる。実際に作られている現場では、防護メガネをつけて行動した。大きな音と鉄の熱が五メートル離れている私たちにも感じられた。
もしも誰かに、「二日目を一言でまとめてください。」と言われても確実にまとめられないだろう。なぜなら今回の修学旅行で一番、新しい知識が増え、時間があっという間に過ぎたからである。魚の話の後は醤油の話、その後は金属の話と、沢山のことを学年全体で共有し、自分の脳に植え付ける作業が多かった。でも、それこそがこの修学旅行の醍醐味なのではないかと私は思っている。一日目、二日目の思い出を浮かべながら、私たちは最終日の三日目を迎える。
◆三日目
修学旅行最終日のメインは神栖市波崎地区の「ピーマン農家訪問」だ。しかし、この日はあいにくの雨で農家訪問は叶わなかった。そのため、実際に畑に行って土を触ることはできなかったが、農家の方のお話は「JAしおさい」でうかがえた。
「JAしおさい」ではまず、農協の方からお話をきいた。今回訪れた波崎地区は、地域別では日本一の出荷額と販売額を誇っている。これは正直意外だった。ピーマンの産地といえば、年中温暖な宮崎や高知が有名だからだ。お話によると、波崎地区も年間通して暖かく連作障害も起こらない土地質で、ビニールハウスを活用して季節に関係なく年三回栽培しているそうだ。このような環境条件と農家の方の工夫によって、日本一のピーマンの産地となっているということだ。
その後、クラスごとに農家の方からお話をきいた。そうすると、さらにまた農家の方の工夫・努力が見えてきた。波崎地区はエコファーマーに認定されたそうなのだが、それは農薬の使用量を半減することで認定される。そのため、害虫対策にはお金をかけて天敵昆虫をビニールハウス内に放ち、処理しているのだそうだ。なぜここまでして、農薬の使用量を減らしているのか。その答えは、お話の中で何度も出てきたフレーズにあると考えた。それは、「安心・安全は当たり前」というものだ。私はこの言葉に非常に心を打たれた。安心・安全を当たり前と考えるのも素晴らしいが、その当たり前のことを最重視している姿をみて、日本一という事実に納得できた。
こうして、初めての修学旅行は一流の方々の心意気にふれ幕を閉じた。