JSL研修報告

H28年度 JSL研修報告

第1回JSL研修プログラム

日本語教室の役割・担当者の役-子どもと現場の状況を把握する-

                 日時:平成28年5月28日(土)10:00~16:30

10:00   開会挨拶     馬場 哲生(東京学芸大学国際教育センター長)

10:05   はじめに     菅原 雅枝(東京学芸大学国際教育センター)

10:15   講義1  外国人児童生徒教育の現状と課題  見世 千賀子(東京学芸大学国際教育センター)

10:50   講義2  文化の中の子どもの学び   榊原 知美(東京学芸大学国際教育センター)

11:25   情報提供 「学校における日本語指導」を巡って  菅原 雅枝(東京学芸大学国際教育センター)

11:50   分科会講師紹介・事務連絡

13:00   分科会

    コーディネータ-:市川 昭彦(大泉町立 西小学校)

            伊藤 敦子(小牧市立 大城小学校)

            今澤 悌 (甲府市立 大国小学校)

            小川 郁子(都立高校非常勤講師/前・北区立稲付中学校) 

            濱村 久美(大田区立 蒲田小学校)

16:00 全体会 

16:30 閉会

第2回JSL研修プログラム

JSLカリキュラムを活かした授業づくり①

                日時:平成28年6月25日(土)10:00~16:30

全体進行: 見世 千賀子(東京学芸大学国際教育センター)

10:00   開会挨拶         馬場 哲生(東京学芸大学国際教育センター長)

10:05   「日本語での学習」を支えるために   菅原 雅枝(東京学芸大学国際教育センター)

11:00   分科会

    コーディネータ-:今澤 悌 (甲府市立 大国小学校)

             大菅 佐妃子(京都市教育委員会)

             小川 郁子(都立高校非常勤講師/前・北区立稲付中学校) 

             濱村 久美(大田区立 蒲田小学校)

             宮廻 祐子(出雲市立 塩冶小学校)

15:30 全体会 

16:30 閉会

第3回JSL研修プログラム

JSLカリキュラムを活かした授業づくり②

             日時 :2016年10月1日(土)10:00~16:30

進行:榊原 知美(東京学芸大学国際教育センター)

10:00 開会                 

10:00~10:10  開会挨拶          馬場 哲生(東京学芸大学国際教育センター長)

10:10~10:45  趣旨説明 授業づくりの前に 菅原 雅枝(東京学芸大学国際教育センター)

10:45~11:50  報告とコメント 

       ① 実践報告           市川 昭彦(大泉町立西小学校)

       ② コメント           大菅 佐妃子(京都市教育委員会)

11:50~12:00  分科会講師紹介

13:00~15:50 分科会       

            講師:市川 昭彦 (大泉町立西小学校)

            伊藤 敦子(小牧市立大城小学校)

            大菅 佐妃子(京都市教育委員会)

            小川 郁子(都立高校JSL講師・前東京都公立中学校日本語学級教員)

            濵村 久美(大田区立蒲田小学校)

16:00~16:30  全体会 

16:30 閉会

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全体会

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 馬場センター長挨拶 

   

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 趣旨説明  菅原准教授

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第1回 見世准教授 講義1

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榊原准教授 講義2

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分科会の様子   今澤先生

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分科会の様子   小川先生

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分科会の様子   伊藤先生

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分科会の様子    大菅先生

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全体会  講師からの分科会報告 JSL②  濱村先生

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 JSL③  実践報告  市川先生

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 JSL③  報告へのコメント  大菅先生

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ご参加ありがとうございました。

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JSL3報告

JSL3では、小牧市立大城小学校の伊藤敦子先生に、学校や地域のJSL児童支援体制と、その中で行われたJSLカリキュラムに基づく国語の授業実践をご紹介いただきました。

そして、甲府市立新田小学校の今澤悌先生に、伊藤先生の授業へのコメントをお願いしました。

両先生のご厚意により、当日のパワーポイント資料をpdfにて掲載いたします。

わかる!楽しい!授業をめざして(伊藤先生).pdf

伊藤先生実践へのコメント(今澤先生).pdf

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平成27年度 第2回JSL研修の分科会報告(伊藤先生)

伊藤先生:

 私たちのグループはDLAについて、当校でどんなふうに取り組んで、それをどんなふうに授業に生かしているかということをパワーポイントで説明させていただきました。そして、実際に私がDLAをやったのをみていただいてから、DLAの強みと弱みをどのように授業に生かしていくかということをふまえて、2年生の「タンポポのちえ」の単元構成を考えていただきました。二つグループに分かれてそれぞれ考えていただきました。どちらのグループも子供の強みと弱みをよく理解していただいて、弱みを補うような工夫を一生懸命考えて、単元構成を作ることができました。「かおりさんだったらこれはわからないよね」「ここは絶対わからないからあれを使わなきゃ」という声が聞こえるぐらい、みなさんが熱心に取り組んでくれました。ありがとうございました。

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平成27年度 第2回JSL研修の分科会報告(市川先生)

市川先生:

 本分科会では、菅原先生の全体講義を受け、JSL授業の組み立て方について、「トピック型と教科志向型」「体験探求発信型の有効性」「AUとその活用方法」等々、JSLエッセンスのプレゼンから入りました。

 午後は授業活動案作りです。

 参加メンバーは小学校教諭3名、高等学校教諭2名でしたので、自ずと授業内容は異なってきます。そこで本分科会としての共通事項を以下のように定め、授業作りにとりかかりました。

共通事項

① 本授業を受ける児童生徒のイメージを具体化する。(出身国・母語・日本語習得状況)
② 授業のテーマに即した体験活動を取り入れる
③ 授業内容を獲得するためのAUを決め、探究・発信場面で繰り返し活用できるように組み立てる。
④ 本研修会で獲得したいスキルをそれぞれが明確にした上で授業案作りを進める。

 小学校グループは4年算数で「分数」のところを選びました。選んだ理由としては、分数は難解な学習用語が出てくるとともに、ここでの学びが高学年の学習に大きく影響してくると考え選びました。

 高校の現代社会グループは、「選挙権」を選びました。つい最近、選挙権が18歳以下に引き下げられるというニュースが駆け巡り選挙がより身近になったこと。さらに外国人の選挙権制度についても考えられる「今、まさに」という旬のテーマを選びました。

 それぞれのグループで上記の共通事項をもとにしながら、「体験活動とAUをどのように組み合わせていくか。」ということにも前向き取り組んでいただきました。

 JSL授業の可能性が、また一つ広がった研修会になれたと思っております。

報告

① 小学校算数「分数」

 小学校4年生の算数の分数の単元を選んで、指導案の作成をしました。

 想定した子供は3人です。ペルー人、インドネシア人、バングラディッシュ人でそれぞれ3年から5年間の来日で、日常会話はできるけれども、学習の習得が低いということです。

「帯分数の意味の種類、帯分数は整数と真分数で表すことができる」ということを授業の目標としました。

 授業の流れは、既習事項として真分数と仮分数を学習しているので、復習を取り入れながら進めていく授業です。

 本時は、「ドラえもんとジャイアンに祭りに着ていく浴衣の帯を作ろう」という場面設定で児童たちに興味を抱かせながら意欲的に学習に参加できるようにと考えました。

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導入場面

ドラえもんと ジャイアンが 夏祭りに いくことになりました。
そこで、着ていく浴衣(ゆかた)の帯(おび)を プレゼントすることになりました。

 用意する半具体物(テープ)  5/3m

 実際にテープでドラえもん用の帯を作っておく。

 テープを一周すると1メートルになるように作り、黒板にも数直線を作っておき、操作活動を進めていけるようにする。

 実際に児童が操作活動をしながら、3分の3が1、残りの3分の2なので、「3分の5」は「1と3分の2」、というように視覚でとらえて理解ができるように支援していく。

 AUのとしては、「C-6 帯の長さをくらべてみましょう」さらに「C-9 ~と~をくらべて おなじところはどこですか」また「J-2  仮分数と帯分数はどんな関係がありますか」が、考えられます。

 そして、本時の中心AUは、「F-6 新しい方でいうと、帯分数は整数と真分数で表すことができます」いうことを言わせるようにしました。

 本日の研修で勉強になったことは、児童が興味を持って楽しく学習しながら新しいことを学べる課題設定と操作活動を考えたことです。

 それから、AUをどの場面でどのように使ったらいいのかが練習できたことがとても勉強になる一日でした。

おすすめポイント(市川)

 帯という具体物をもちいて、1mと2/3mを表すことにより、仮分数と帯分数を視覚でつなげて印象深く覚えていくことができるように工夫したところです。また、帯(おび)」という言葉を巧みに取り入れているところも実践の価値があります。

② 現代社会 高校

 現代社会の授業案は「皆さんは、選挙にいきますか!?」というタイトルです。

 想定する生徒は中国出身生徒とフィリピン出身生徒、それぞれ2名ずついるといったような取り出しのクラスを想定しました。

 単元は民主制度のところです。

 まず導入で、この間行われたスコットランド住民投票の雑誌を見せて、AU「A-1 これは何でしょうか」と聞きます。生徒から話が出てくると思いますので、それを拾いながら「そうだね、→選挙の話→投票の話」と導き出していきます。

 その次に、日本の年代別の投票率グラフを見せて、「A-1 縦軸は何ですか、横軸は何ですか」と発問を重ねながら「年代別の投票率の変化と差」について考えさせます。

 さらに、そのグラフを読みとらせた結果、誰に向けた選挙活動になりそうかということも考えさせます。しかしながら、若者向けの選挙活動になっていないという意識も考えられますので、「日本はこれから18歳の選挙権になっていく」ということ、「スコットランドは16歳からになった」ということ。しかし、外国人には現在日本では選挙権がないということを伝えます。

 このことにより、生徒たちに動揺が生じると思います。そこで、ほかの国の選挙権はどうなっているのか、母国の選挙権はどうなっているのか、というのを調べさせたり、発表させたりします。

 さらに、「選挙権がないと、どういうことが困りそうなのか」ということを考えて、発表してもらいます。

 このことをうけて、「H-5 選挙権を持っている人は、持っていない人のために何ができるでしょうか。」ということを考えていくことができると思います。

 そのうえで、これまで、選挙権を獲得してきた歴史を紹介し、もしかしたら、選挙権を持っていない生徒たちにもこれからできることがあるかもしれないということで、次の授業につなげていくことができると考えました。

 この授業の面白さは、「取り出し」で現代社会を教えていくうえで、生徒同士には共通語はないが、言語化された情報ではなく、本時で習ったようにAUや画像(動画含む)を積み重ねていくことで、生徒の中に、「知っている」「自分の国のことを説明できる」という自信を持って説明いくという自信へとつなげていく可能性を感じたことです。

 さらに、様々な国の生徒が一つのクラスに集まっているということは、それぞれの国の状況が分かり、「自然と多文化共生に対する意識が生徒に芽生えるじゃないか」という希望を抱きながら、この授業案を作りました。

この授業のおすすめポイント(市川)

 選挙権が18歳以下に引き下げられ選挙がより身近になったこの時期「今、まさに」という旬のテーマを選び、母国の選挙制度と比較したり、選挙権について考えたりしながら現代社会というCALPの高い言語活動を要する教科をより身近にしてきているところです。

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平成27年度 第2回JSL研修の分科会報告(小川先生)

小川先生:

 中学高校グループは、高校進学を見据えた指導ということで、自分の自治体の高校入試の制度と過去問を分析して、どんな問題が出ているのか調べてきてくださいという宿題を出しました。ともかく敵を知らなければそれを突破できませんから。

 まず高校へ行くことの重要性を皆で話しました。高校は3年間なり、4年間ありますから、その時間があれば生徒たちは、日本語も教科学習もできるようになり、年齢相応にいろいろなことを考える力がつきます。それから社会に出てほしいということで、とにかく高校へ行こう、と確認しました。

 入試で教科の点数がとれなければ、高校への道は開けないわけです。そのためには入試から逆算して中学校の学習計画を作る必要があります。中3では、教科は在籍の教室で受けられるようになって、進学に向けた指導の部分をこちらで補充する。そこまで持っていくためには、2年生の時には、理科・社会・国語の授業をなんとか分かるようになるところまでもっていこう。したがって、1年生の段階で英語と数学はすぐに教科に取り組んで、教室の授業についていけるようにしておこう。日本語はゆっくりやり直す時間は作れないから、しっかり一発で理解を確実にして進めていこうということになります。日本に来た日から、入試の日まで見通した計画を立てなければならないのだという話をしました。

 さて、入試で点数を取ることを考えたら、英語と数学は最初から勉強をはじめなければなりません。英語については、英単語を覚えるなら、その日本語訳も一緒に覚える、というように、英語の教科書を日本語学習にも活用するというところから指導案を考えました。

 数学はどこの県の入試でも欠かせません。計算は大丈夫でも、「証明」は実は易しい問題なのに、在籍学級で「証明」をやっただけでちゃんと理解できる生徒はほとんどいません。それは「証明」の単元に入った途端に日本語の説明が増えるからです。ある程度日本語はできるはずなのに、授業で先生が言っていることはわけがわからないということで、みんなここで沈没しちゃうのです。これを一回JSL数学として取り上げておくと結構クリアできて、入試の証明問題も解ける生徒も多くなります。大きな関門なので具体的にどうするか、今日は「証明」で指導案を考えていただきました。では報告をお願いします。

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報告

 みなさんも日本語のテキストをいろいろご存知だと思いますが、小学生向けと大人向けはいろいろあるのですが、中学生向きというのがなかなかないのです。それで目をつけたのが英語の教科書です。英語の教科書の特徴は、人権・環境・文化など、たいへん知的な内容をシンプルな英語で表してあるというところが特徴なので、じゃあそれを日本語にして、日本語の練習に使ってみることはできないのだろうか考えてみました。

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 英語の教科書というのは大きく分けて会話文と説明文からできています、会話文の特徴というのは省略が多いのと、文章がとてもシンプルで短いことです。これを使って、理解を確認するために、例えば省略した文章を完全な文にしたり、その中でQ&Aで内容を読み取ったりということに使えるのではないかと思いました。

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 次は説明文で、ここに提示しているのはガーナの紹介文です。「ガーナはアフリカの西部に位置しています」「ガーナの首都はアクラです。公用語は英語です」とか、「チョコレートはカカオ豆で作られています」みたいなお馴染みの文章です。

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 この日本語訳を読解教材として扱い、次にこれをモデル文として自分の国を紹介する作文を作ることを考えました。中国籍の子でしたら、「私の国中国はユーラシア大陸の東部に位置しています」とか「中国の首都は北京です」などです。自己表現とか、多文化理解、異文化理解につなげることができるのではないかと思いました。英語の授業で扱う前に日本語の学習で予習的にやっていくと、十分に内容を日本語で味わっているので英語で出て来たときによく分かるようになるでしょう。

【小川補足】英語の教材の中から、「マザーテレサ」についての文章を既習レベルの日本語に訳した文章で、日本語の読解教材として活用した例を紹介しました。また、英語で「受け身文」を学習する単元に入る前に日本語の受け身を勉強しておく必要があることをお話ししました。そうすれば、英語の受け身文を日本語に翻訳することは、そのまま日本語の受け身文の勉強にもなります。

 英語の教科書は、中学生の関心・興味に合わせて作られているので、中学生の日本語学習に生かせる「材料」はいろいろありますが、英語の教科書を日本語に直訳すれば日本語の教科書になるわけではないということを確認しておきたいと思います。

 次は数学です。中学校2年生の「証明」の問題について考えました。証明する内容は、角の二等分線の作図法は、どうしてそのやり方で角が二等分できたことになるのかを、三角形の合同条件を使って、証明します。

 そこで考えた内容を(0)~(3)にまとめましたが、話し合いをしてみて気づいたことを発表します。

(0)、数学は積み重ねの教科なので、生徒たちは日本語は初期でも学習参加をしたほうがいいと改めて確認をしました。実際に「証明」の問題をどうやって教えていくかと考えたときに、

(1)そもそも「証明」とは何ぞやということで、概念の理解を、数学とは離れた日常場面から生徒たちに理解してもらうところからスタートすることにしました。特に非漢字圏の生徒は、「証明」という漢字を見ても、何の勉強をしているのか、わかりません。

(2)「教科書を読解教材として使う」と結論を書きました。

 実際には、言葉の理解は難しいところもあるので、「角の二等分線を~」とまず始まった時に、「角」は何か、「二等分線」は何か、二・等・分・線の漢字ひとつずつから漢字の意味を理解するところから始めます。また、二等分線の作図の方法は一年生の学習内容ですが、そこに立ち返って生徒たちに実際に作図させることも必要だと気付きました。

 教科書の文章を読んでみると、学習用語でかなり難しいところがあり、その理解の手立てを知りました。日常会話で使う「同じ」「だから」「で」という言葉は、数学の証明で使われるときには、「等しい」「したがって」「何々において」などと表現が変わります。意味を確かめて、生徒たちは実際にこの言葉を使って文章を作ってみます。じゃあそれは教科書の方ではどんなふうに使っているか、教科書を見て証明文の読解に入ります。

読解というと国語のイメージが私自身はあったのですけれど、理論的な読み取りをすることとか、思考の過程を書かせるということが有効だということがわかりました。最後の段階では、自分で証明を書き、それを自分の言葉でみんなに説明をするといった練習もしっかりやって、説明の場面で実際に使える日本語力をつけることが大切です。

 理科の教科書も読解教材として有効だということも教えていただきました。

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