JSL研修報告

令和2年度 JSL研修報告

令和2年度外国人児童生徒等教育研修

外国人児童生徒教育研修(JSL研修会)は、外国人児童生徒の指導にあたる教員、支援者の情報提供や実践の共有することを目的とした研修である。2007年に本センターで外国人児童生徒等教育研修が初めて実施され、今年度で13年目となった。今年度は、これまで担当でいらした菅原先生が愛知教育大学へ転出され、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の感染拡大もあり、様々な点で例年通りとはいかない1年となった。

研修が始まってからの10数年の間、JSLカリキュラムや外国人児童生徒のための対話型アセスメンDLAの開発、「特別の教育課程」による取り出しの日本語指導の実施など制度面での整備は図られてきた。一方で、実際の現場では、急遽外国人児童生徒教育の担当となり、戸惑いつつ模索を重ねる教員が多くないという。本研修は、そういった教員に後方支援する場として機能してきた。

しかし、緊急事態宣言下にあって、本学を含め全国的に休校となり、本センターの活動も強力な制約を受けた。これまでの経緯を思うと苦渋の決断ではあったが、実施形態を、本学での対面形式からZoomを活用した遠隔会議方式に替えた。これに伴い、「初任者」のみを対象とし、定員を50名に限定して実施することとなった。加えて、年3回の実施は5月を中止し、2回のみとすることとなった。

研修会は、概ね、2回とも共通した流れで実施した。本センター教員や外部講師が作成した動画をYouTube上に掲載し、参加者には事前に視聴した上で質問や感想の提出を求めた。当日は、前半に、事前のコメントに対する応答や具体的な実践例について外部講師に紹介していただき、後半はブレイクアウトルームを活用して、小グループでの活動を実施するという流れであった。第1回は、コロナ禍にあっても日本語指導の要点は変わらないという考えを念頭に、外国人児童生徒等教育の概論について扱った。また、第2回では、前半にJSLカリキュラムの実践例紹介、後半にミニワークショップを実施した。

各教育委員会が実施する研修会も軒並み延期・中止となる中で、担当教員に学ぶ機会を提供でき、参加者のアンケートからは好評を得た。また、確かに、対面で実施できないもどかしさは、講師、参加者ともに抱いたものであったが、次のような利点も見えてきた。まず、遠方からも容易に参加できるようになり、研修の機会が広がったことである。さらに、1日で完結していた研修が、「動画視聴」・「事例紹介」・「ワーク」に細分化されたことで、重層的で螺旋的な学びとなり理解が深まったという意見も寄せられた。今年度の経験を活かして、引き続き教員・支援者への研修を実施していく予定である。例年との変更点や初の試み尽くしの実施ともあって、至らぬ点が多々あり参加者の皆様や、外部講師の皆様、事務や協力者の方々には過大なご負担とご迷惑をおかけした。多くの方のご協力があって今年度も開催に漕ぎつけられたこと、心よりお礼申し上げる。

令和2年度東京学芸大学国際教育センター第1JSL研修会

プログラム

【事前基礎講座】(東京学芸大学国際教育センターHP上に掲載)

・吉谷武志

「外国人児童生徒教育・はじめの一歩―多文化の子ども理解と担当教員の役割」

・見世千賀子

「外国人児童生徒教育・はじめの一歩―年少者への日本語教育」

【6月27日オンライン開催】Zoom12:30~受付開始

13:00~14:30全体会

総合司会:吉谷武志(国際教育センター)

開会挨拶竹鼻ゆかり(東京学芸大学国際教育センター長)

はじめに見世千賀子(東京学芸大学国際教育センター)

事前基礎講座への質疑応答吉谷武志(東京学芸大学国際教育センター)

ミニ講義外国人児童生徒等への指導のポイント

【日本語教室の運営について】横溝亮(横浜市立並木第一小学校)

【日本語教室での指導について】今澤悌(甲府市立大國小学校)

14:40~16:10分科会

小学校①              

   伊藤敦子(小牧市立大城小学校)    

   竹鼻ゆかり(国際教育センター長)   

小学校②

   市川昭彦(大泉町立北小学校)

   今澤悌(甲府市立大國小学校)

   榊原知美(国際教育センター)

小学校③

   濱村久美(江戸川区立葛西小学校)

   横溝亮(横浜市立並木第一小学校)

   松井智子(国際教育センター)

中高生

   小川郁子(都立高校非常勤講師)

   見世千賀子(国際教育センター)

管理職

   吉谷武志(国際教育センター)

16:20~16:50全体会

講師所感

閉会挨拶

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事前視聴動画―YouTubeより視聴


令和2年度東京学芸大学国際教育センター第2JSL研修会

<プログラム>

【事前基礎講座】(東京学芸大学国際教育センターHP上に掲載)

①「日本語で学ぶ力を高める指導―JSLカリキュラム入門」

            見世千賀子(東京学芸大学国際教育センター)

②「JSLカリキュラムの授業づくりの視点と指導計画」

            今澤 悌 (甲府市立大国小学校)

【10月10日オンライン(Zoom)開催】 

13:00~13:30 全体会

総合司会:吉谷 武志(国際教育センター)

13:00  開会挨拶          竹鼻 ゆかり(国際教育センター長)

13:05  はじめに(趣旨説明)    見世 千賀子(国際教育センター)

13:10  事前基礎講座への質疑応答  吉谷 武志 (国際教育センター)

13:40~14:40(1時間) JSLカリキュラム実践例の紹介

1)小学校「国語科」1年「すきなものなあに」

             横溝 亮 (横浜市立並木第一小学校)

2)中学校「理科」 1年 身の回りの物質「水溶液の性質」 

             小川 郁子(都立高校 非常勤講師)

14:50~16:20 ミニワークショップ

JSL(小学校①)トピック型「これは,何でしょうか」 

  市川 昭彦(大泉町立大泉北小学校)

  吉谷 武志(国際教育センター)

JSL(小学校②)理科4年「電流のはたらき」

  今澤 悌(甲府市立大国小学校)

  榊原 知美(国際教育センター)

JSL(小学校③)

算数2年「長方形と正方形」

  横溝 亮(横浜市立並木第一小学校)

  松井 智子(国際教育センター)

JSL(中学校)社会(地理)世界のさまざまな地域「面積の大きい国と小さい国」

  小川 郁子(都立高校)

  見世 千賀子(国際教育センター)

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配布資料