♪今月の学校図書館♪
2013年12月23日(月)に開催された、平成25年度文科省事業報告会の模様をお伝えします。
当サイトを運営している東京学芸大学学校図書館運営専門委員会では、平成25年度、「確かな学力の育成に係る実践的調査研究②学校図書館担当職員の効果的な活用法策と求められる資質・能力に関する調査研究」を受託しました。
9月から11月にかけて、附属世田谷小学校、附属大泉小学校、附属世田谷中学校の3校で、司書教諭が学校司書と協働で行った授業を公開し、協議を重ねてきました。
この日の報告会は、3校の教員による授業実践、3校の司書による求められる司書の資質・能力についての現時点での見解、当サイトのこれまでを報告しました。最後に事業委員の先生方から今回の発表に関して、ご講評いただきました。
(写真右は会場となった附属図書館に併設されたミニ学校図書館です。写真奥には、附属世田谷中学校の生徒が作った幼児のおもちゃも展示されています。)
実践報告1 「秋の天気の変化―台風の動きとその影響―」 この実践は、
データベース事例No.A0169 に掲載、当日の授業の模様は、
「今月の学校図書館」 (2013年10月)で紹介しています。
【実践の成果と課題】
司書が授業に関わることで、学びの連続性・発展性が生まれることや、最初に図書資料を用いることは、子どもたちの目的意識を高めるうえで効果的であること等が報告されました。現時点での問題点・課題として、時間割・運用面での制約があることや、附属学校の場合学級担任による裁量があるため、学級によって利用状況に差異が生まれやすいことがあげられました。
実践報告2 「神話の世界にようこそ」 この実践は、
データベース事例No.A0166に掲載、当日の授業の模様は、
「今月の学校図書館」 (2013年11月)で紹介しています。
【実践の成果と課題】
図書館で授業をすることで、神話の本を児童自らが探すという行為が見られたことや、図書館を学習の場として利用することの利点として、本がすぐ近くにある、集団で集まりやすい、作業がしやすいなどがあげられました。また司書が常勤でいることの多くの利点に気付かされた授業でした。今後は、学校図書館を活用して、どのような児童生徒を育てたいのかを明らかにしていくことが必要と締めくくりました。
実践報告3 「私の成長・幼児の生活と遊び」
この実践は、データベース事例No.A0168に掲載、当日の授業の模様は「今月の学校図書館」 (2013年12月)で紹介しています。
【実践の成果と課題】
図書館を活用することで、授業数の不足を補う学びにつながったこと、また授業時間の関係で、残りの発表を家庭科室で行ったところ、広さのせいか発表が散漫になっている班が見受けられました。調べる・発表するといったことでも図書館は「場」としてふさわしいのではとのことでした。今後は21世紀型の教育として「育てたい子ども像」つまり何を育てたいのかが本校の研究テーマ。このことも視野に入れ各教科での学校図書館の活用につなげたいとのことでした。
司書会からの報告
上記3つの実践について司書側から補足をしたうえで、学校図書館担当職員の資質・専門性について報告を行った。右は当日使用した後半のパワーポイントのPDFファイル。司書部会からの報告.pdf
また、「先生のための授業に役立つ学校図書館活用データベース」からは、5年間の経過報告と今後の方針として学校現場のみならず養成課程の学生の利用促進と事例収集、卒業生の活躍の紹介、国立国会図書館のレファレンス協同データベースと連携した活動を考えていくことを発表した。 第5回 みんなで使おう!学校図書館DB報告.pdf
最後に、今年度プロジェクトの事業委員をお願いしている先生方から講評をいただきました。
野口武悟専修大学准教授...学校図書館を使うことの有効性について明確な形で誰もが理解できるように示していくにはどうしたらいいかを、今後も実践を通して、さらに深めてほしい。そのための校内での組織づくりも重要である。今後、図書館が電子教科書・電子書籍とどう向き合うかも課題。また特別な支援を必要とする子どもたちには、「場としての図書館」が有効だという研究結果がある。評価を伴わない職員がいる本のある空間としての意味を問い直す必要もあるのではないか。
鎌田和宏 帝京大学教授... (3校の事例について丁寧な講評をいただきました。詳しくはPDFファイルをご覧下さい。附属学校として、今後学校図書館活用を教育課程の中でどう位置づけていくかを、少し長いスパンで研究をして欲しいとのお言葉でした。)20131223学大事業委員会発表会講評_最終.pdf
高鷲忠美八洲学園教授...このような研究を附属学校が発信することで全国に波及していくのではないかと期待している。学校図書館もメディアである。今後はデジタル教材もまとめて学校図書館でやっていくことが必要だ。横浜市が学校司書を4年間で全校配置しようとしていて、全国の目が注がれている。今京都の小学校に関わっているが、この学校では、どう授業を組み立てて評価をしていったらいいかを考えている。私自身、小学校時代、文部省のモデル校で過ごしたことが現在の仕事につながっているように、子ども時代の経験とは大きな影響を及ぼすものだといえる。
尚、この報告会の詳細は、年度末に報告集にまとめられる予定です。
文責 東京学芸大学附属世田谷中学校 村上恭子
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