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2022/11/01

子どもに体のことを伝えるNPO法人「からだフシギ」の活動について

Tweet ThisSend to Facebook | by 村上
 夏に本校の卒業生である瀬戸山陽子さんと、何十年かぶりでお会いした折に、5.、6歳の子どもたちにむけて「からだ」について楽しく学ぶ活動をされていることをお聞きしました。さらには、NPOのメンバーが単発で行うよりも、子どもたちの身近にいる保育士や幼稚園教諭、図書館司書の方々が日常的に働きかけていくことをめざし、「からだ先生」の人材育成にも取り組んでいるとのこと。小学校入学前の子どもたちが対象ではありますが、小学校低学年でもこのような視点を持つことはとても重要だと思います。そこで、瀬戸山さんにお願いして、どのような活動を行っているのかを執筆いただきました。もしかしたら、今後学校司書向けの研修もおねがいできるかもしれません!
(東京学芸大学附属世田谷中学校司書 村上)


子どもに体のことを伝えるNPO法人「からだフシギ」の活動について
NPO法人からだフシギ 瀬戸山陽子(東京医科大学)
1.活動の趣旨:

 もともと子どもに体のことを伝える活動は、2003年頃に聖路加看護大学(現・聖路加国際大学)の研究活動の一つとして始まりました。ちょうどその頃は、医療の中で「患者中心医療」「患者主体」といった言葉が聞かれるようになった時期です。しかし実際、人が何か異変を感じて医療機関にかかっても、自分の体のどこにどんな臓器があり、どのような機能を持っているのかを知らない状態では、とてもではないけれど本人が医療の主体になる「患者主体」の医療は実現できないのではないか・・・。この活動は、そんな問題意識が原点でした。そこで研究会のメンバーは、「体の知識を、(医療者のものではなく)みんなのものへ」というスローガンのもと、市民に体のことを伝える活動を始めることにしました。

 特定の言葉を使うとすると、「ヘルスリテラシーの向上」を目指した活動とも言えます。しかし、活動メンバーには、健康医療情報の活用能力向上よりも手前の段階で、日常的にいつも当たり前に“共にいる”体の面白さや巧みさを、誰もが知る社会になったら…という思いが根底にありました。

 当初は、大学を拠点にした研究会という形をとっていましたが、どうしても大学という場所は一般の方からすると敷居が高い。そこで市民の方々と一緒になって共に活動を行うために、2014年にNPO法人を設立して活動を続けてきました。

2.なぜ、5,6歳児なのか?:

 「体の知識をみんなのものに」をスローガンにしたものの、「みんな」と言っても幅が広すぎて、それでは方法も定められません。そこでターゲットを決める必要があり、まだ医療機関にかかることが比較的少ない子どもがいいのでは?という案から、様々な調査をしました(※6)。養護教諭の方々からのヒアリングでは、5,6歳は、体の見えるところについて多くの名称を知っていて、十分理解力があること、また、5,6歳児は体に興味津々であることも分かりました。ここから、ターゲットを5,6歳児に定めて、体を伝えるためのプログラムを作成して活動を展開していきました(※7)。

3.具体的な活動:

 具体的な活動は、教材作成、お話会の実施、体のことを伝える人材育成の3本柱です。まず子どもに体のことを伝えるために教材が必要だということで、「消化器系」「循環器系」「筋骨格系」「神経系」「泌尿器系」「生殖器系」「呼吸器系」の7系統(のちに「肝臓と膵臓」を追加して、全部で8系統)の絵本を作りました。絵本は、5歳児が一人で読めるように12ページに収めて、イラストや言い回しの表現は、子どもの教育に携わる様々な人から意見を頂いて推敲を重ねています(※3)。大人が子どもに話をする時に、絵本よりもちょっと詳しく体のことが分かるように、解説本も付けました。(写真左下)。大事にしたのは、ごまかしたり嘘をついたりせず、(必ずしも覚えてもらう必要はないのですが、)正確な名称を使っていることです。また保育園などで子どもの集団に読み聞かせをするために、絵本とほぼ同じ内容で紙芝居も作成しました。さらに、目には見えない内臓を子どもがイメージしやすいように、臓器を模した「からだTシャツ」も作成しました(写真右下)(※1)。
 

















 
   2つ目の活動は、お話会の実施です。NPOのメンバーが保育園や幼稚園、図書館等に出向いていって、子どもや親子対象に「体のお話会」を展開しました(写真下)。今は残念ながらコロナでこちらが出向いていくのが難しい状況で、また、活動をしているメンバーの数も限られているということもあって、次第に、現場の保育士や幼稚園の先生、図書館司書の方々に、体の話をしてもらったらよいのではないかというアイディアが持ち上がりました。

 そこで始まったのが、3つ目の活動である、体のことを伝える人材育成です。具体的には、「からだ先生研修会」を開催し、看護師や保育士、図書館司書の方々に参加してもらって、その後、それぞれの場で皆さんが体のお話を展開するという形です。これは2016年から始めたのですが、2020年以降はオンラインで続けており、2022年9月現在、延べ180名以上の「からだ先生」が全国に誕生しています。からだ先生になられた方は、保育士や幼稚園教諭、図書館司書、保育園・幼稚園の看護師、助産師、また学生さんなどです。中には研修会後に定期的に、自分の保育園や図書館で子ども向けに体のお話会を行っている方々もおられて、確実に体の話が広がっていることを感じます。またこれは後から気づいたことですが、体のお話会は、私たちNPOメンバーが出向いて単発で行うより、子どもたちのことをよく知っている現場の方が日常的に行うほうが、子どもにとっては、いつでも体の話をすることにつながります。私たちが出向くより現場の方にやって頂く方が、体のことが日常的に話題になる環境づくりには適していたというのは、私たちとしても大きな発見でした。

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