多肉とクマと路線図と

2025-12-10 13:47 | by 中村 |

 今回の記事では、ちょっと長くなりますが、3冊のお薦め本をご紹介したいと思います。
 一見バラバラの3冊、そして一般的にはやっぱり全然繋がりがない本たちなのですが、本校図書館では絶妙に関わり合っている(?)3冊です。

 
 2025年の世相を1字で表す「今年の漢字」(日本漢字能力検定協会)は、【熊】でした。予想していた方も多いのではないでしょうか。
 連日、クマの出没が世間を騒がせています。今、クマが生きる場所では何が起きているのか、それは日本の社会の変化とどのように関わりがあるのか。私たちはテレビの報道からは見えない事実を知る必要があります。

『クマはなぜ人里にでてきたのか』永幡嘉之著 (旬報社) 2024年 ISBN:9784845119530
 山の動植物を調査しながら写真に収めている自然写真家である著者が、専門家と共に丁寧な観察と考察をおこないながら、“今、何が起きているのか、そして背景には何があるのか”を、クマの生態とともに分かりやすく説いています。

 まず、読み物としてとても興味深く面白いです。本文にある「この本が手軽に情報を得るためのものにならないようにするためにはどうすればよいか、(中略)クマに関しては私自身が専門家ではないからこそ、観察を重ねる中で思索を重ね、解き明かしてゆく楽しさを書こうと思いました」(本文68ページ)という著者の想いは、充分に読み手に伝わります。
 そして著者が語る「事実と伝説を混同せず、いたずらに恐怖を煽り立てる報道に惑わされない」「自分の眼で物を見ることを意識する」という姿勢は、メディアリテラシーを学ぶ子どもたちにとって大切なことを教えてくれます。
 この本は、第37回読書感想画中央コンクール(中学校・高等学校の部)の指定図書にも選定されています。今年大きく注目されたクマ。同じ世界に生きる人間として、きちんと知ることから始めてみませんか。

 

 ところで、秋田県の《クマダス》をはじめ、日本各地でクマ出没マップが作られ、私たちはクマがいつ、どこに、どのような状況で現れたかを手軽に知ることができるようになりました。地図に他の情報を重ね合わせて受け手に分かりやすく伝えることは、様々な場面で応用ができ、それを活用することで日常生活の利便性が大きく向上します。

 ある日図書館にやってきた生徒が見せてくれたのが、バスと電車の路線図に東京都のクマ出没マップを合体させた、自作の《すごろく》です。敵クマを避けながらアイテムを集めてゴールを目指すのですが、逃げ込むための施設やクマ対策グッズを買うためのコンビニなど、小技の効いたマスが並び、完成度が高くてすごい!と感心しました。
 そんな彼が刺激を受けたという本がこちら↓↓↓ 

『地図とか路線図とか @chizutodesign』地図とかデザインとか(加藤創)作 (山と渓谷社) 2023年 ISBN:9784635825221
 作者がこれまでSNSで発表してきたオモシロマップやアイデア路線図をまとめた作品集。《Googleマップみたいな江戸時代の地図》では見慣れたアイコンとともに「日本橋―成田山 14.8里 半日と1刻」と経路を示してくれたり、《青春18きっぷ到着時刻マップ》では東京駅を始発で出発した場合にどこまでいけるかを可視化したり・・・。《気温路線図》や《湖の立体模型》などは一目で「なるほど~」と直感的に理解できる工夫があり、眺めるだけで楽しい1冊です。
 
 「このデザインにすることで何が伝わりやすくなるか」ということを考える上でのヒントが満載。自分でも、好きなもののデータを収集・整理・可視化して、作品を作ってみたくなります。地理や交通好き以外の人にもお薦めです。


 さて、最後にクマつながりのエピソードとともにこの本を。

 この夏に改装された本校図書館に、何か観葉植物を置きたいと思い、とりあえずズボラな私でも育てられそうな多肉植物を・・・と、第1陣として登場したのが、その名も“熊童子(くまどうじ)”というベンケイソウ科の小さな鉢植え。名前の由来は、葉の形が子グマの手のようだから。愛らしいフォルム、癒しの存在・・・・・・だったのに・・・・・・名前まで付けたのに・・・あっという間に枯らしてしまいました。ごめんなさい、クマコ。 (参考写真:植物図鑑 HanaPrime)

 悲しみの中、今年10~11月に上野の国立科学博物館で開催された「学習マンガのひみつ」展で出会ったコミックに目が釘付けになりました。

『タニクちゃん』➀~➆巻 よねまる著 (祥伝社) 2016年 ISBN:9784396791056
 母親の経営する多肉植物専門店の留守を任された34歳の青年。知識も経験もなく、頼りない彼に不安を覚えた店内の多肉植物たちは・・・。さえない店主と物言うタニクたちの、くすっと笑えて育成知識も身に付く、タニク愛あふれるコミック。

 あぁ、もっと早く出会いたかったよタニクちゃん。多肉植物の魅力、奥深さ、正しい育成知識を、これからしっかりこの本で勉強します。
 クマコ、また迎えに行くから待っててね!


(東京学芸大学附属竹早中学校 司書 中村誠子)


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