日本が誇る版画の世界
2024-11-11 10:57 | by 中村 |
本校の生徒が美術の授業で、葛飾北斎の「富嶽三十六景」をたどり実際に版画制作を行う学習をおこないます。北斎や浮世絵、版画の本を準備する中で、とても美しく、また版画の歴史についてよく分かる本があったので、ご紹介します。
『新版画の世界 —川瀬巴水から吉田博まで
美しく進化する浮世絵スプリット—』
クリス・ウーベンレック著
(パイ インターナショナル) 2023年
スティーブ・ジョブズやダイアナ妃が「新版画」を部屋に置いて鑑賞していたのは有名な話。ジョブズは川瀬巴水の作品を寝室に、ダイアナ妃は執務室に吉田博の作品を飾っていたとか。
江戸時代に隆盛を極めジャポニスムとしてヨーロッパで評価された浮世絵は、明治維新以降も伝統木版の文化として姿を変えて生き残り、「新版画」へと結実します。本書によると、現代アニメーションの世界では、「新版画」の要素を美術背景に採り入れる試みもおこなわれているそうです。
伝統と革新の狭間で生まれた「新版画」は関東大震災・そして第二次世界大戦を経て衰退していきますが、その輝きは今もなお、私たちを魅了し続けています。
こんなにも精緻で陰影の美しい世界が木版で表現できるなんて、と感嘆せずにはいられません。
ちなみに・・・
生徒にはこちら↓も大人気でした♪
『パン どうぞ』
彦坂有紀・もりといずみ作(講談社) 2014年
こちらも版画とは思えない、ふっくらふんわりの
おいしそうなパンがとても魅力的な絵本です。
(東京学芸大学附属竹早中学校 司書 中村誠子)