『中国のフェアリー・テール』
2025-04-10 19:08 | by 富澤 |
ずっと、出版を待ち望んでいた本がついに形となって手元に届きました。
『中国のフェアリー・テール』
ローレンス・ハウスマン作
松岡享子訳
福音館書店、2024年
ISBN:978-4-8340-8840-5
東京子ども図書館で研修生をしていた十数年前に、私は、松岡先生の語りを通して本書の元となったお話に出会いました。研修生であった1年間は、お話にどっぷりとつかっていられた幸福な時間でもあり、松岡先生が語られる本書のお話を、2度も聞く機会に恵まれました。手にした本を開くと、先生のお声と、「あの時」目の前に広がったお話の絵が鮮やかに蘇ってきました。
絵を描くことを心の底から望む少年ティキ・プーと、彼の思いに応えて教えを授けた師ウイ・ウォニは、芸術への情熱を鍵に思いもよらぬ方法で時空を超えて出会い、強い絆で結ばれます。児童サービスについて学び始めたばかりだった私は、主人公の姿を自らに重ね、お話が心を揺り動かすまま、涙もあふれるままに全身を耳にして聞き入っていました。「どうにかしてこのお話を誰かに届けたい」という思いにも駆られながら。
松岡先生の語りに接して、同じような思いに駆られておられた方々が、どれほどいることでしょうか。その思いを、誰よりも強くお持ちだったのは、他ならぬ松岡先生ご自身であったかもしれません。
このお話が美しい本となって遺されたことで、その思いは存分に果たされることになりました。
※福音館書店のホームページに、この本の出版を松岡先生から引き継がれた、養女の恵美さんのエッセイが載っています。どうぞ、こちらもぜひお読みください。
(東京学芸大学附属大泉小学校 司書 富澤佳恵子)