家族で囲む 『きょうのごはん』 (偕成社)

2012-08-31 16:01 | by 中山(主担) |



 表紙のさんまがおいしそう!
皮の焦げ目や微妙な色合いがまるで本物のようで、
今にもこうばしい香りがしてきそうです。

 他の食べ物も、
絵本のあたたかさの中に写真以上に伝わるリアルさがあり、
どの食べ物も「おいしそう!」と目を奪われてしまいます。

 また、登場する子どもたちの姿にも心をひかれます。
どの家でも子どもたちが食事作りのお手伝いをしていて、
その姿がいきいきとしているように見えます。

 遊びから帰ってきた子どもたちがお手伝いをする、
そんな古き良き時代を感じます。

 一方で、お父さんが食事作り、お母さんが仕事から帰ってくる家も出てきます。
もはや「料理をする人=お母さん」の時代ではないというメッセージを、
さりげなく伝えてくれているように思いました。

 手作りのあたたかさを感じさせるお話ですが、出前のお寿司も登場。
日本には昔から「ハレの日」の食事があるということも、
飽食の時代に生まれた子どもたちに知ってほしい内容です。

 そして一番注目したポイントは、どの家も家族がそろって食事をしているということ。
「共食」は食育において大切なポイントです。
「おいしいね!」
ぼくがつくったコロッケだよ!」
ふざけないでお行儀良く食べなさい!」なんて声が聞こえてきそう。
おいしさ、楽しさを共有できる人がいて、
食べ物の大切さやマナーを教えてくれる人がいることが、
子どもたちには必要なのです。
(にぎやかな家族とは対照的に、屋台のお兄さんが少し寂しそう…。)

 親子で一緒にこの本を読んで、
一緒に食事を作って、
一緒に食べて、
その良さに気づく。  そんな家庭が少しでも増えてくれればと思います。

                                         (東京学芸大学附属小金井小学校 栄養教諭 安部景奈)

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