映画の原作本を探してほしい
2025-09-11 12:31 | by 長友 |
図書館に訪れる生徒たちが求めるレファレンスは、書名がわかっていることもあれば、読みたい本が見つからないから何でもいいからおすすめ本を教えてほしい、などかなり大雑把なものもあります。その中で個人的に印象的だったのが、映画の原作を探したいというものでした。二件紹介します。
一つ目のレファレンスは雑談から始まりました。内容を要約すると友達に勧められたものを探していて、最近映画になったと言っていたけれど、原作は本だと聞いたので本で読みたい、というものでした。さすがに範囲が広すぎて絞り込みが困難だったので、覚えている限りでもう少し情報が欲しいなと思いさらに聞いてみたら、「中学生の女の子が戦時中にタイムスリップしちゃって、その時代の人を好きになっちゃった、みたいな話らしいです」というお返事が。その時期にはよくある問い合わせだったので、この時点でほぼ確信はしていたのですが、「主人公が好きになった相手は特攻隊員でしたか?」と尋ねてみるとそう言っていた気がする、と返ってきたのでそこから無事に書名が判明しました。
『あの花が咲く丘で、君とまた出会えたら。』(汐見夏衛,スターツ出版,2016)
映画の公開前後に特に大人気だった本です。この本は書名を間違えて検索してしまう人も多く、うろ覚え本としての質問もとても多かったです。「あの丘で君と会いたい」とか、「あの花が、……みたいなタイトルの本を探しています」など。本校図書館では正式名称を間違えずに言える生徒の方が珍しい本です。あの花、と略されることもあるそうですがその名称で検索すると別の本も出てきたり、作者名での探し方がわからず棚で迷っていたりと、普段図書館をあまり利用しない生徒たちも興味を持ってくれた思い出のある本です。
二つ目は『ショーシャンクの空に』の原作が読みたい、というものでした。てっきりこのタイトルで本があると思い込んでいた私たちは、探してみてないなあ、というような話をしていました。その生徒は作者名も覚えていたので、そこを見て他の本はあるけど……というような会話をして、その場はいったん解散になりました。この時、恥ずかしながら私が司書駆け出しのころで、一つの可能性を見落としていました。洋画と原作書籍のタイトルは全く違うものがある、ということです。棚からカウンターに戻ってきたあと、個人的に本の外見を知りたくなり、館内の検索機ではなくGoogleで検索してみたところ発覚しました。
『ゴールデンボーイ─恐怖の四季 春夏編─』(スティーヴン・キング,新潮社,1988)
目からうろこの瞬間でした。厳密にはこの本の中の『刑務所のリタ・ヘイワース』が原作にあたります。慌ててカウンターに呼び戻してもう一度探しなおしたことを今でも覚えています。生徒が恐怖の四季ってなんだよ、とぼやいていたことも何となく面白くて、印象に残っています。
また、表題作『ゴールデンボーイ』、また秋冬編である『スタンド・バイ・ミー─恐怖の四季 秋冬編─』(スティーヴン・キング,新潮社,1987)も同様に映画化しています。
その生徒は映画好きで私よりも洋画に詳しかったのですが、そんな生徒にとっても結構な衝撃となったようでした。この件がきっかけになったのかは不明ですが、ほかの洋画の原作にも興味を持ったようで、時折図書館にやってきて話をしてくれるようになりました。
『ショーシャンクの空に』と『ゴールデンボーイ─恐怖の四季 春夏編─』が今回のレファレンスでしたが、ほかにも映画『ブレードランナー』と『アンドロイドは電気羊の夢を見るか?』(フィリップ・K・ディック,早川書房,1977)など、映画と原作書籍のタイトルが異なる外国の映画の問い合わせは今もたまにあります。要求される知識の高さを感じました。
日々こうしたレファレンスが自分の知識になり、頭の体操になり、生徒たちとのコミュニケーションにもなっています。
(東京学芸大学附属小金井中学校 司書 長友春陽)