戦争と女性の権利

2025-06-10 12:15 | by 渡辺 |

 高2の生徒が課題研究のためのレファレンスに訪れました。
生徒第一次世界大戦期の世界の女性参政権について調べています。この授業時間中、ここで見られる資料は何かありませんか?」

とのこと。戦争により男性が兵役につき、女性が戦時労働者として社会参加をすることを研究テーマとする生徒は過去にも何人かいたため、ある程度戦中のジェンダー問題についての蔵書は収集するようにしてきました。

司書「まずはこの本はどうでしょう?『レクチャー第一次世界大戦を考える-戦う女、戦えない女』(林田敏子 人文書院 2013年)。第一次世界大戦期をジェンダー視点からとらえていて、女性参政権についてもふれていますよ。」

生徒「ネットで調べると、この本は真っ先にでてくるので持っています。これを読むと女性参政権運動は戦争の勃発により、むしろ休止することになったとありました。そのことをもっと知りたいと思って。新書で何かないでしょうか?」

そこで生徒と3類のジェンダー関係の新書棚へ移動。まず、岩波新書『ジェンダー史10講』(姫岡とし子 2009年)を確認しますが、日本の事例しか書かれてはいません。

少し煮詰まってきたので、「女性参政権」、「第一次世界大戦」というキーワードに固執せず、広く書架を眺めてみることにしました。すると目についたのが岩波新書の『女性のいない民主主義』(前田健太郎 2019年)です。目次をみると「女性参政権」という言葉は全く使っていませんが、タイトルと同じ「女性のいない民主主義」のページを開くと、まさに女性参政権について書かれています。

司書「この本だと、女性参政権を導入した国と導入年の一覧はもちろん、参政権導入後の女性議員の割合のグラフも掲載されているようですよ。」

生徒「これいいですね!どうして参政権が与えられたのに、女性の活躍が伸び悩んだのか知りたかったので。各国のデータも掲載されているし、今日メディアセンターに来て良かった~。」

と嬉しそうに握手を求めてきました。レファレンスで訪れた生徒と、生徒が求めている資料とを出会わせることができたとき、実に司書冥利につきます。
             (東京学芸大学附属国際中等教育学校 司書 渡邊 有理子)


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