本のなかにでてくる本
2024-10-16 08:22 | by 富澤 |
ようやく過ごしやすくなり、読書の秋本番ということで、本の中に「読書する人」や、実際に存在する本が登場する本と、その本に登場する当のその本(なんだかややこしいですが)を展示して紹介することにしました。
例えば、『きょうはなんのひ?』には『マドレーヌといぬ』が登場しますし、
『きょうはなんのひ?』 『マドレーヌといぬ』
瀬田 貞二∥作/林 明子∥絵、 ルドウィッヒ・ベーメルマンス∥作・画
福音館書店、1979 瀬田 貞二∥訳
ISBN:4-8340-0752-9 福音館書店、1973
ISBN:4-8340-0363-9
『あいぼうはどこへ?―ニューヨークのとしょかんにいる2とうのライオンのおはなし』には、『おさるとぼうしうり』と『ロバのシルベスターとまほうのこいし』が登場します。
『あいぼうはどこへ?』
ジョシュ・ファンク∥ぶん/スティーヴィ・ルイス∥え/金柿 秀幸∥やく
イマジネイション・プラス、2019
ISBN:978-4-909809-12-4
『おさるとぼうしうり』 『ロバのシルベスターとまほうのこいし』
エズフィール・スロボドキーナ∥さく・え ウィリアム・スタイグ∥〔作〕
まつおか きょうこ∥やく せた ていじ∥やく
福音館書店、1970 評論社、1975
ISBN:4-8340-0979-3 ISBN:4-566-00101-6
『マチルダはちいさな大天才』の主人公マチルダや、『ぼくたち負け組クラブ』の主人公アレックは、大変な読書家として描かれていて、本の中に、彼らが読んだ本のリストが出てくるほどです。とても全ては紹介しきれないので、マチルダについては「好きな本は?」と聞かれて、彼女が答えた2冊『秘密の花園』『ライオンと魔女(ナルニア国ものがたり1)』を並べ、
『ロアルド・ダールコレクション 16/マチルダは小さな大天才』
ロアルド・ダール∥著/クェンティン・ブレイク∥絵/宮下 嶺夫∥訳
評論社、2005
ISBN:4-566-01425-8
『秘密の花園(福音館文庫 C-7)』 『ライオンと魔女』
F.H.バーネット∥作/猪熊 葉子∥訳 C.S.ルイス∥作/瀬田 貞二∥訳
堀内 誠一∥画 Pauline Baynes∥〔画〕
福音館書店、2003 岩波書店、2005
ISBN:4-8340-0617-4 ISBN:4-00-116371-3
アレックについては、初登場時に読んでいる『プリデイン物語 5/タラン・新しき王者』と、何度も読み返している「ほっとする本」として特に挙げられている『シャーロットのおくりもの』にしました。
『ぼくたち負け組クラブ』
アンドリュー・クレメンツ‖著/田中 奈津子‖訳
講談社、2017
ISBN:978-4-06-283247-2
『プリデイン物語 5/タラン・新しき王者』 『シャーロットのおくりもの』
ロイド・アリグザンダー∥作 E.B.ホワイト∥作 神宮 輝夫∥訳 ガース・ウイリアムズ∥絵
評論社、1977 さくま ゆみこ∥訳
ISBN:4-566-01019-8 あすなろ書房、2001 ISBN:4-7515-1889-5
さて、「本のなかにでてくる本」の究極は、『はてしない物語』に、『はてしない物語』そのものが登場する、というしかけだろう。ということで、こちらも紹介することに。
『はてしない物語』
ミヒャエル・エンデ∥作
上田 真而子∥訳/佐藤 真理子∥訳
岩波書店、1982
ISBN:4-00-110981-6
ところで、『がんばれヘンリーくん』の主人公ヘンリーは、グッピーの稚魚の飼育方法を求めて、図書館に駆け込みますし、祖父の最期の言葉の謎を解こうと奮闘する『スピニー通りの秘密の絵』のセオドラは、『フラニーとゾーイ』(当該書籍内ではこの標記)を延滞している(しかも、延滞料を払うだけの金銭的余裕がない!)ため、必要なのに、なかなか図書館に行けずにいます。友人と二人、本に夢中になっているうちに、図書館に閉じ込められる経験をするガーネット(『指ぬきの夏』)など、特にアメリカの児童文学作品には、なんと頻繁に公共図書館が登場することでしょう(『マチルダはちいさな大天才』、そして『あいぼうはどこへ?―ニューヨークのとしょかんにいる2とうのライオンのおはなし』にも登場します)!
『 がんばれヘンリーくん』 『スピニー通りの秘密の絵』 『指ぬきの夏』
ベバリイ・クリアリー∥作 フィッツジェラルド∥著 エリザベス・エンライト∥作
松岡 享子∥訳 千葉 茂樹∥訳 谷口 由美子∥訳
ルイス・ダーリング∥絵 あすなろ書房、2016 岩波書店、2009
学研、2007 ISBN:4-7515-2863-1 ISBN:4-00-114160-3 ISBN:4-05-202661-4
『フラニーとゾーイー (新潮文庫)』
J・D・サリンジャー
野崎孝訳
新潮社
1976
ISBN:978-4102057025
これらの本からは、素晴らしい図書館サービスと、利用者から信頼される図書館員の姿も垣間見え、その姿勢から学ぶところも多い、と思うのは司書ならではの視点かもしれません。
この展示を作成する中で、『あいぼうはどこへ?―ニューヨークのとしょかんにいる2とうのライオンのおはなし』には、上記の本の他にもう1冊、特定できそうな形で本が描かれているのですが、一体何なのか、わからずにいました。「それならば、現地の図書館に聞いたら良いのでは?」と思ったところ、なんとぴったりのサービスがありました。米国議会図書館のデジタルレファレンスサービスです。★2012年に、「サービス開始から10年」という記事が、カレントアウェアネス-Rに掲載されていました。
用意されたフォーマットに質問を記入して送信したところ、早速翌日には「アメリア・ベデリアシリーズの一冊ではないでしょうか」と、著者のウェブサイトのリンクが送られてきました。日本語に翻訳されているものはないようですが、Amazonで原書を取り寄せ可能です。「一体、なんという世界に住んでいるのだろう」とICT技術の進歩と、情報のデジタル化の恩恵に感嘆するとともに、いささかの恐ろしさを感じる一方、本についての質問に丁寧に応えてもらえた人間的な温かさにも胸打たれ、結局、本と図書館のすばらしさを改めて実感したという結果につながるのでした。
(東京学芸大学附属大泉小学校 司書 富澤佳恵子)