事業委員によるエッセイ②(白百合女子大学准教授 今井福司)
2021-11-15 08:38 | by 村上 |
前回の専修大学教授 野口武悟先生に続き、今回は白百合女子大学准教授の今井福司先生から、ご寄稿いただきました。学校司書にもいまやICTスキルが必須となってきました。ICTの長所は、作業の効率化でしょう。今回ご紹介いただいたサイトは、どれも優れものです。このような情報を無償で提供してくださっていることもありがたいです。ぜひ必要なところから、活用してみてください。
身近なところから情報技術活用を始めよう
白百合女子大学准教授 今井福司
コロナ禍の状況で生じた臨時休校措置と、それに応じて急ピッチで進められたオンライン授業の流れの中で、学校教育における情報活用が急速に進んでいます。学校図書館においても、情報技術の活用は求められている状況下ですが、情報技術の活用といっても何をしたらよいのかわからない、チャレンジしてみようと思っても踏み出せない方もいらっしゃるかもしれません。
本格的な活用までは至らなくても、何ができるのかそのきっかけだけでもつかめればと考え、大学の授業で紹介しているノウハウをご紹介いたします。
1)国立国会図書館の書誌データ活用
図書館の蔵書やコレクションを記録、管理するために書誌情報を記載することは欠かせません。学校図書館の場合は、業者さんからのデータをコピーして使ったりする学校もありますが、手入力というところもまだまだ多いかと思います。手入力の場合、近隣の公共図書館などのWeb OPACを検索して表示された情報を記載していく方もいらっしゃるでしょう。 同志社大学の原田隆史先生のWebページ研究室では、国立国会図書館が提供している国立国会図書館サーチを活用し、書誌データをダウンロードして表示するエクセルファイルを提供しています。Windows版のExcelかつ、インターネットに接続できる環境が必要ですが、ISBNを入力するだけで既存の図書の書誌情報を一括して確認することができます。バーコードリーダーなどを組み合わせると、入力の手間をかなり省いた形でブックリストを作ることができますので、皆さん1度お試し下さい。
2)基本件名標目表トピックマップ
学校図書館の調べ学習などの用途には、資料ごとに適切な件名を付与しておくことが欠かせません。しかしその根拠となる、基本件名標目表は冊子体で提供されているだけで、コンピュータからの検索はなかなかできないのが欠点です。
日本図書館協会公式のツールではありませんが、京都大学のH-GIS研究会を通じて、内藤求氏が提供している基本件名標目表トピックマップは、基本件名標目表の第4版のデータを使いながら、情報の組織化の一形式であるトピックマップの形式で表したものです。基本件名標目表トピックマップのWebページからは、「件名標目一覧」で件名の一覧を確認することができますし、階層構造を確認することもできます。もちろん業務で使用する際には冊子体も合わせて確認する必要がありますが、手軽に件名の候補を探しておきたいと言うときには活用できるツールだと思われます。
3)バーコード印刷
図書館の蔵書管理に欠かせないのが、表紙の地のノド付近に貼り付けるバーコードです。また利用者カードの作成にもバーコードがあると管理が便利です。図書館システムによっては標準でバーコードの印刷機能を備えたものがありますが、図書館システムをインストールしていないパソコンからバーコードを印刷しようと思うと、簡単には印刷できないというケースも多いかと思います。
図書館間の横断検索でお馴染みのカーリルが提供しているカーリルToolBox:バーコード連番印刷は、ウェブ画面上で印刷する用紙を選び、必要な情報を設定するとバーコードを印刷できる状態まで設定してくれるツールです。図書館システムにバーコード印刷機能がない場合だけでなく、普段の管理用PCではないPCからバーコードを印刷することができない場合にご活用頂けると思います。
カーリルToolBox : バーコード連番印刷
4)QRコードの作成
児童生徒もスマートフォンを当たり前のように使用し、学校内ではタブレット端末が普及してくる中で、盛んに活用されているのがQRコードです。QRコードはお店での決済にも使用されるほどメジャーな規格になっていますが、QRコードは無料で作成できるだけでなく、色々な情報を盛り込むことができます。
ウェブ上に様々なQRコードの作成サイトがありますが、私は以下のウェブサイトを活用しています。児童生徒へウェブサイトのURLを示すときなどに活用できます。また任意の文字列を表示させることもできますので、図書館だよりなどにQRコードを載せて、秘密のお知らせを載せるためにも活用できるかも知れません。
5)引用・参考文献のテンプレート
調べ学習などでレポートの参考文献を記載する際には、様々なルールを伝える必要があります。しかしながら、実際にレポート作成を進めていく中で、教えてもらったルールを忘れてしまったり、混乱してしまったりする場合があります。
藤田節子先生が作成した「引用・参考文献の書き方」作成テンプレートは、ウェブ画面上に必要情報を記載していくだけで、科学技術振興機構の制定した科学技術情報流通技術基準(SIST02)準拠での、参考文献データが得られます。各学校や先生ごとに書式が異なる場合は注意が必要ですが、特に引用や参考文献のルールを決めていない場合には活用できるツールだと思われます。
今回ご紹介したツールはどれも会員登録や費用の負担がなく、手軽に使用できるものばかりです。使えるものから活用していくことで、少しでも皆さんの情報技術に対するハードルが下がってくれれば良いなと考えています。皆さんからもこんなツールがあるよというご紹介があれば、ぜひお寄せ下さい。