まずはリーディングトラッカーを置こう!

2016-03-29 10:39 | by 中山(主担) |

 リーディングトラッカーとは、右下の写真のように、読みたい行に集中して読めるように、両隣の行の文字を隠して読み進める読書補助具です。
栞を読んでいる行にあてて読んだりしていたりすることは日常でもよくありますね。でもその単なる延長という以上に、効果のある場合があるのです。

 背景からお話ししましょう。

 そもそも、図書館における障害者サービースとは
  図書館サービスを受ける上で障害のある利用者に対するサービスをいいます。誰もが図書館のサービスを受けることが出来るようにすることを目指しています。それは、読むことの保障でもあります。誰もが読めるという環境をつくり出していくことです。
 その原則を 学校図書館も実施してくべく努力していきましょう。

 さらに、2016年4月より、障害者差別解消法が施行されました。
  以下の3つのポイントがあります。

  1つめ 障害を理由とする不当な差別的取り扱いの禁止 (すべての機関・団体・事業者が対象で、義務)
  2つめ 合理的配慮の提供 (国公立は義務、民間・私立は努力義務 追記:2021年改正で民間も義務になった
  3つめ 基礎的環境の整備 (努力義務) 

  すべての図書館員(学校図書館員も含む)に向けて、日本図書館協会では、「図書館における障害を理由とする差別の解消の推進に関するガイドライン」を作成、2016年3月に公開しました。
 

 (このガイドライン作成に当たっては、日本図書館協会の障害者サービス委員会が行い、学校図書館からの参考人として私、中山も参加させていただきました。)

 まずは、読むことが苦手な子、集中しづらい子のために、カウンターにリーディングトラッカーや、薄い色のクリアファイル、黒定規、拡大鏡などを置き、必要とする時はいつでも使える状況をつくるなどしてみましょう。館内掲示を大きくしたり、手順をわかりやすく表示したり、ピクトグラムやイラストも添えて文字だけに頼らない工夫をすることもしましょう。色の使い方にも注意が必要です。人によって区別しにくい場合があります。さまざまなメディアの提供とともに、ヘッドホンを使って読書するということも出てくるでしょう。
 図書館員としては、勉強すべきことがたくさんあります。

 参照:学校図書館における合理的配慮 2014年9月(専修大学 野口武悟教授)
 
  
 読書補助具であるリディングトラッカーは、タイポスコープ、スリットと呼ばれ、以下のような製品があります。
 キハラ株式会社 「リーディングトラッカー」
 「リーディングトラッカー」の紹介 - YouTube
 魔法の定規
 タイポスコープ
 
 人によって、見えやすい色、読みやすい幅は違うというので、手作りするのもよいでしょう。枠の色も好きな色で。
  タイポスコープの作り方
 
リーディングトラッカーにケースを付けて本と同じように貸出している例(恩納村文化情報センター)があります。

 大きな文字の青い鳥文庫 も 公共図書館では普通に書架に入れているところもあります。

 拡大文字の教科書 や マルチメディアデイジーの教科書 が あることは
学校図書館員としては知っておきたい情報です。

 なぜ、行を隠したり、文字を拡大すると読みやすくなるのかは調布デイジーのホームページから、神山忠先生のご講演のはじめをご視聴ください。大変わかりやすく説明してくださっています。

 学校図書館は、これを機に学習障害への対応をふくめ、図書館の障害者サービス(通常の図書館サービスでは困難のある方へのサービス)の勉強もしつつ、少数派への対応も、今後は考えてまいりましょう。

 以下、参照
 
 調布市立図書館 利用支援サービス 
   
 鳥取県立図書館 は~とふるサービス  
   
 学図研東京支部の2015年2~4月 拡大支部会

 大活字文化普及協会

 以下追記
    「りんごの棚」物語 2010年8月13日
    第100回全国図書館大会第13分科会「学校図書館の合理的配慮に向けて」 2014年11月1日

    教科用特定図書等 文部科学省
    
    視覚障害者等の読書環境の整備の推進に関する法律(読書バリアフリー法) 2019年6月28日施行

    学校図書館における特別なサービスと資料の提供に関する基本方針ー図書館利用に困難のある児童生徒のために― (日本図書館協会 学校図書館部会 2022年6月修正版)

    国際子ども図書館の学校図書館セット貸出しに「バリアフリー」もあります。


    
 東京学芸大学附属小金井小学校司書 中山美由紀

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