ゆうやけの絵本
2026-09-08 11:34 | by 幅 |
夏休み明け、校舎のあちこちから、生徒たちのにぎやかな声がきこえてきます。その明るさに、まだまだ夏は続くのかな? と思うものの、窓から入ってくる風の色は静かに変わってきているようです。
秋は晴れの日が多く、空気も澄んで、ゆうやけがひときわ美しくみえますね。そんな季節におすすめの一冊を紹介します。

『ゆうやけにとけていく』(ザ・キャビンカンパニー 小学館 2023年 ISBN:978-4097252290)
夕方から日が落ちるまでの短いひとときを、さまざまな人物の視点から描いています。手をつないで帰路につく親子、怪我した膝を湯船につける女の子、太陽をこえていく鳥たち……。中盤から後半にかけてリフレインする、「ゆうやけにとけていく」というフレーズも、印象的に響きます。
同じザ・キャビンカンパニーの『だいおういかのいかたろう』(鈴木出版 2014年 ISBN:9784790252757)などに比べると、文も短めで、すこし落ち着いたトーンの絵本かもしれません。一方で、鳥の群れの表情や、ユニークな看板文字など、くすっと笑えるポイントも多数。
この夏、「ようこそ! ザ・キャビンカンパニー新収蔵作品展-がっこうにまにあわない・ゆうやけにとけていく-」(安曇野ちひろ美術館にて。会期は2026年9月6日で終了)で、この絵本の原画を全点、鑑賞することができました。もともと本でじっくりと見ていたつもりでしたが、原画からあふれる生命力は圧倒的で、思わず目を奪われました。
中学校では、読み聞かせをする機会はほとんどないのですが、小学校で勤務していたときに、「読み聞かせにでてきた本を借りたい」と子どもから声をかけられることがありました。「ぜひぜひ、どうぞ」と本を手渡し、ひとり読みの様子をうかがってみます。すると、気に入った場面を音読したり、特定のページを見返したりする姿がみられます。いま思い返しても、司書として、とても嬉しい時間でした。
中学生たちもまた、多忙な日々を送るなかで、まったく異なる世界にひたれるような本に癒しをもとめているようです。本校の学校図書館では、カウンターまわりに本をおいてみると、ゆるやかに会話が生まれることがあります。生徒たちの温かな時間を想って、ゆうやけの絵本もそっと手渡してみたいです。
(東京学芸大学附属小金井中学校 司書 幅観月)