お蚕さんについて知る
2025-07-10 21:00 | by 富澤 |
毎年、本校の3年生は、1学期に蚕の幼虫を飼育し、糸を吐いて繭を作り、成虫になるまでを見守ります。桑の葉しか食べない、まさにシルクのようにすべすべした、大人しい蚕の幼虫は、虫が苦手な子でも手に取って可愛がることができる存在として、3年生にとても愛されています。当然、関心も高く、蚕の本をこの時期に紹介すると、とても素直に喜んでくれます。
『うまれたよ!カイコ(よみきかせいきものしゃしんえほん 12)』は、鮮明な写真も、文章の分量も、読み聞かせにぴったりなので、何度か紹介してきました。丁寧に、蚕の成長の様子を伝える内容なので、子どもたちも、自分がお世話をしている蚕の様子を思い浮かべながら、「そうそう」と頷いたり、「へえ、これからそうなるんだ」と気づいたりしながら聞いてくれます。
『うまれたよ!カイコ』新開 孝∥写真/小杉 みのり∥構成・文
岩崎書店、2013
ISBN:978-4-265-02052-2
今年は、ただ蚕を飼育するだけではなく、動物と人間との関わりについて焦点を当てた探究単元の一環として取り上げるということで、そういった視点ももつ写真絵本『お蚕さんから糸と綿と』を読み聞かせしました。
『お蚕さんから糸と綿と』大西 暢夫‖著
アリス館、2020
ISBN:978-4-7520-0925-2
ちょうど、子どもたちがお世話をしている蚕が、もうすぐ繭になろうか、というタイミングだったこともあり、本のなかでは、養蚕農家が大切に育てた蚕が繭になったところで、乾燥させ「命をとめる」という場面で「えっ、殺しちゃうの?」という呟きが聞こえてきました。
その後、クラスで「糸のためとはいえ、殺してしまうのはさすがに人間の勝手すぎるのではないか」と、論争に熱が入った、と、あるクラスの担任の先生から教えていただきました。また、蚕を殺さずに糸をとる方法を調べて、試したクラスもあったようです。
『かいこ (かがくのとも傑作集 17)』も、日本における養蚕業の様子がしっかりと描かれていて、時間が許せば読み聞かせをしたかった一冊です。図書の時間では、一部の紹介となりましたが、やはりすぐに貸出となりました。
『かいこ(かがくのとも傑作集 17)』熊谷 元一∥ぶん・え
福音館書店、1980
ISBN: 978-4834004731
蚕が、人間の手を離れては生きていけない「家畜化」された昆虫であると知ったときの衝撃は、忘れることができません。多くの命と、その命に向き合う誠実な仕事の上に、私たちの生活が成り立っていることを、読み聞かせを通じて、子どもたちとともに改めて振り返ることができました。
(東京学芸大学附属大泉小学校 司書 富澤佳恵子)