高学年に古典を読む

2025-04-02 14:05 | by 宮崎 |

 本校では、全学年毎週図書の時間があり、司書がよみきかせなどを行っています。高学年の選書には悩みも多いのですが、最近は古典文学作品を伝えることも大切に考えるようになりました。長く伝えられてきたものには、言葉の力強さ、かっこよさがありよく聞いてくれますし、難しい言葉があっても、それなりに子どもたちに届いているように感じています。ブックトークなどで紹介することもありますが、よみきかせには、丸ごと受け取ってもらえるよさがあるように思います。

『春はあけぼの』清少納言 ほるぷ出版 2005

  4-593-56050-0

 枕草子の季節の段がそのまま絵本になっています。季節ごとに原文を読んでから、巻末の口語訳を読みますが、すてきな絵の力もあり、原文でもニュアンスは伝わる感じがします。

これだけでは短いので、この後、ほかの枕草子の本から、いくつかおもしろそうな段を選んで、口語で紹介しています。

 

 秋のお月見のシーズンには、

『かぐや姫』織田観潮/画 講談社 2001  4-06-148251-3

を読みます。最初に『竹取物語』の冒頭を原文で読みます。子どもたちがはて? となったところで、絵本を最初から読みます。なんとなく知っている物語でも、細部までは知らない子が多いので、とてもよく聞いてくれます。

 

 

 節分のシーズンには、鬼が出てくる古典作品を読みます。

『酒呑童子』川村たかし ポプラ社 2003 4-591-07841-8や、

『鬼ぞろぞろ』舟崎 克彦∥文/赤羽 末吉∥絵 偕成社 1979 

4-03-963040-8など。

いずれも、『御伽草子』や『今昔物語集』から絵本化したもので、鬼が出てくる迫力のある物語で、聞き手をひきつけます。この本の後、『きつねの橋』久保田香里 偕成社 2019 9784-03-540560-3 など平安時代を舞台にした物語を紹介しています。

 日本の古典ばかりではなく、三国志も面白いです。

『三国志絵本 十万本の矢』唐 亜明/文 于 大武/絵

岩波書店 1997 9784001106367

 三国志の有名なエピソードを絵本化したこのシリーズは、3冊あります。どれも面白いのですが、よみきかせには、この話が分かりやすくてよかったです。最近は、三国志の英雄をパロディー化したマンガや映画などもあり、話題になったタイミングで、「原作を知っておくとパロディーももっと楽しめるんだよ」と紹介すると、他の三国志本にも手がのびたりするようです。本校では、横山光輝のマンガ『三国志』(潮出版)も置いてあり、わずかですが、熱心なファンもいて、「このエピソードは、●●巻に載ってます!」と教えてくれた人もいました。

 古典には、確かに子どもをひきつける力がある、と読むたびに感じます。その時にはよくわからなくても、いつか何かにつながる教養となって、子どもたちの心の中に根付いてくれるといいなと思いながら、よみきかせをしています。

(東京学芸大学附属竹早小学校司書 宮崎伊豆美)

 

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