生徒が選んだ「10代がえらぶ海外文学大賞」
2025-07-02 10:57 | by 岡田 |
東京学芸大学附属高等学校図書館でも「10代がえらぶ海外文学大賞」https://www.10daikaigaibungaku.com/の展示を行なっています。「これなんですか?」との質問に「外国文学をみんなに読んでほしいの」と伝えると「僕はこれがオススメです」と色々な本が集まりました。選考対象外の本もありますが、本校の生徒の「これが好き!!」との気持ちの入った選書です。熱い想いを込めたブックトークとなりました。
『理想の彼女だったなら』メレディス・ルッソ 2024年 書肆侃侃房 ISBN: 978-4-86385-643-1 933ル
生徒曰く「これぞアメリカ!っていう小説です」「普通の生活が描かれていてすごくよかったです」と教えてくれました。文中の大切な箇所が太線で書かれているのが10代の生徒の心に刺さります。「正直でない生は半分しか生きられていない生」この言葉は主人公と同時に読者の心の奥底で響く言葉となって立ち上がってきます。作品中に自分自身の大切な太線にしたい文章を探してみてください。今の自分が少しだけ理解できると思います。可能でしたら隣の人に伝えてみてください。リアルな共感が生まれることでしょう。
『化学の授業をはじめます』ボニー・ガルマス 2024年 ISBN978-4-16-391797-9 文藝春秋 933カ
子育て中の同僚の男性から「料理は化学の実験だから誰でもできるよ」と言われて納得したことがあります。主人公のエリザベスも科学的に料理とは何かを視聴者に伝えます。本校生徒も「就職を考えて理系の大学に進学します」という女子生徒が当たり前になっています。小説というジャンルで理科系女子が働くことの楽しさや工夫を体験できます。理系大学へ進学の前に是非お読みください。
『ソラリス』森泉 岳土マンガ スタニスワフ・レム原作 2025年 早川書房 ISBN978-4-15-210399-4 726.1モ
SFの『ソラリス』をコミック化した作品です。『惑星ソラリス』の名前は皆さんも知っていると思います。作者は現ウクライナで生まれ、国籍はポーランドです。ウクライナ、ポーランドなどの文学は馴染みが薄いので是非手にとってみてください。地球外の惑星の空気感が静謐な線でみごとに表現されています。「有名な本だけれどSFはどうも苦手・・・」という生徒にお勧めしています。
『三体』劉 慈欣 2019年 早川書房 ISBN978-4-15-209870-2 923.7リ
この本は中国のSFです。好きな人は大好きで熱く語る生徒が一定数いる本です。文化大革命で父を亡くした主人公など過去の中国の歴史なども踏まえており、中国SFの代表作となっています。国語授業で「デストピア文学を紹介してほしい」とリクエストがあった際に紹介もしました。作者の国が違えばデストピアの作風も異なります。古典では味わえない、中国の現代文学にも手を伸ばしてみてください。
『若きウェルテルの悩み』ゲーテ 2024年 光文社 ISBN978-4-334-10219-7 943ケ
有名な本ですね。ゲーテです。図書館カウンターで本を返却した生徒から「なんだかピンとこない」と言われました。見ると手に持っているのがすごく古い本。「待っていて、新しい訳の本を買ったから。これを読んでつまらなかったらすぐに返していいからね!」と棚から出して直接手渡した本です。数日後「すごく腑に落ちました。自分のことが書かれていると思いました。」と返却してくれました。格調高い昔の文章もいいのですが、高校生には新しい今の訳本を買い揃えたいと思います。昔読んでピンとこなかった生徒は再トライしてみてください。文豪ゲーテが皆さんの友達になりますよ。
(東京学芸大学附属高等学校 司書 岡田和美)