お金についてのブックトーク

2024-12-01 13:29 | by 岡田 |

 東京学芸大学附属高校では図書館活用授業で1学期・2学期と連続して金融教育を行いました。「18歳成人における金融教育」では専門用語の理解や自分の将来を見据えての授業とし、「小学生へ金融教育を計画してみよう!!」では小学生へ教える事を通して金融を学びました。横断授業としては社会科(公共)で図書館を使用して「日銀は金利を上げるべきか否か」をディベートしました。今回は経済・金融以外の本を通してお金について視野を広げるブックトークとします。テーマは堅苦しくなく自分ごとにする金融教育です。

『ミリオンズ』 フランク・コットレル・ボイス 2005年 新潮社

大金が空から降ってきて、2〜3週間以内に使い切らなければ価値がなくなってしまうとしたら皆さんならどうしますか。「買いたいものリストを作る」「パニックを起こす」など色々な意見が聞かれます。神様の御心に従いたい弟と、金融資金として価値を増やしたい兄とがお金を間にどう行動したのかを自分ごととして読んでみてください。

『ホンモノの偽物』リディア・パイン 2020 亜紀書房

「ホンモノ」と「偽物」の違いって何でしょう?価格の違いは妥当でしょうか?そもそも何で偽物は世の中に出回るのでしょう・・・ホンモノの価値が本当にわかるのならば、偽物は世の中から無くなるのではありませんか?では、価値って何によって決まるのでしょうか・・・とどんどん本題から遠ざかり、気がつくと自分の中の金銭感覚が揺らいできます。自分でも実例をあげて考えてみてください。例えば「亡くなった歌手がAIで蘇って、素晴らしいヒット曲を発表したらこの感動は嘘でしょうか?曲は単なるデータの集積としますか?」この揺らぎが実はホンモノかもしれないとまた本質に近づく本です。自分の価値観に揺さぶりをかけてください。

『ヴェニスの商人』 シェイクスピア 2002 筑摩書房

今も昔も借金の取り立ては様々な物語を生んでいます。シェイクスピアの戯曲の中でも有名な作品です。昔の児童書では無慈悲な高利貸しが最後に罰をくだされ、めでたしめでたしとなっていました。この本では、松岡和子の新訳を通してシャイロックの名セリフの言い回しを味わってください。そして機会があれば是非劇場でお芝居としてのシェクスピアを楽しんでください。

『これは経費では落ちません!』青木裕子 2024 集英社

地味で(?)裏方の経理が主役の物語です。きっちり+ちんまりと生きたい主人公がお金を通して成長していきます。華々しくはありません。でも経理のない組織もありません。人とお金をとり持つ経理という場所は、高校生のみなさんにも身近に感じる事ができるかもしれません。

 

                  (東京学芸大学附属高等学校 司書 岡田和美)


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