「お弁当」始めてみませんか
2025-03-17 15:06 | by 中村 |
春です。新しい生活、そしてお弁当作りが始まるという家庭も多いのではないでしょうか。本校は給食や学食がないので、生徒は毎日お弁当を持参したり、パンを購入したりして思い思いの昼食時間を過ごしています。中にはレシピ本を借りに来て自分でお弁当を作っているという男子生徒や、スープジャーに麺類のつけ汁やアイス系デザートを入れて楽しんでいるというこだわりの生徒もいます。
中学生になると調理の幅も広がって、自分でお弁当作りに挑戦しようという人もチラホラ出てきます。今回はそんな「お弁当」にまつわる本をブックトークでご案内します。
まずはおいしそうなお弁当の写真を見てみましょう。
盛り付けにも器にもこだわりを感じる素敵なお弁当の本、忙しい朝にパッと詰めるだけの簡単レシピや作り置きの本・・・世の中には眺めるだけで楽しいお弁当の本がいっぱい。
左から
『簡単わっぱ弁当』宗田悦子著/エディットレシピ編集(講談社)2023年
『朝は詰めるだけ!かなさんの10分弁当』かな著(コスミック出版)2023年
『「かわいい♡」が止まらない おにぎり&サンドイッチ弁当』mana著(主婦と生活社)2023年
『今日も嫌がらせ弁当』kaori(ttkk)著(三才ブックス)2015年
とは言っても・・・
いきなり「これを明日から自分一人で」は、ハードルが高いですよね。そこで肩の力を抜くために、こちらの本をどうぞ。
『お弁当デイズ』たかぎなおこ著(文藝春秋)2023年
幼稚園の娘や旦那さんのための、ゆる~く、それでいてなぜかしらおいしそうなお弁当作りの日々。気張らなくていいんだ、と思える楽しいコミックエッセイです。子どもの頃のお弁当の思い出やお気に入りの駅弁、手抜きの中のこだわりなど、ほっこりあったかエピソード満載です。
ここまで来て、「ちょっと自分でも作ってみようかな・・・」と思い始めた人へ。とあるきっかけから自分でお弁当を作り始めた中学1年生の男の子を主人公に、過保護な母親からの自立を描いたYA小説をご紹介します『あした、弁当を作る。』ひこ・田中著(講談社)2023年
ある日を境に、母親に触られることや母の手作り弁当に対し「ゾクッ」と悪寒を感じてしまうようになった中学生の龍樹。クラスメイトにコツを尋ねながら、試行錯誤を繰り返して自分なりの弁当作りを始めた龍樹を、母は悲しみ父はたしなめる。思春期、反抗期、成長期・・・いろいろな言い方で括られるこの時期ならではの若者の踏み出す一歩、読んでいて応援したくなります。
おいしいお弁当が登場する小説をもう1冊。
『ちどり亭にようこそ 京都の小さなお弁当屋さん』十三湊著(メディアワークス文庫)2013年
こちらに描かれるお弁当は、時間と手間をかけて丁寧に作られる仕出し弁当。お見合いがライフワークという良家のお嬢様が営む京都のお弁当屋さんを舞台に、季節の移ろいと誰かのための気持ちを料理に込めて、人情味あふれる物語が展開していくシリーズものです。料理の描写がとても素敵で目に浮かぶよう。時にはこんな風に何かを思いお弁当を作れたらいいですね。
最後は「おおっ」と感嘆の声が上がりそうなこの本を。『食文化・郷土料理がわかる 世界の国旗弁当
—世界220カ国・地域 料理の作り方や食材を通してお国柄を知る—』
青木ゆり子著(誠文堂新光社)2021年
眺めて楽しい、そして世界の国々を知るきっかけにもなりそうな1冊。見た目は「国旗のキャラ弁」ですが、その地域特有の食材を使ったり、各国に伝わる郷土料理が入っていたりと、見た目だけではなく中身にもこだわったお弁当がずらり。もちろんレシピや国旗の由来もちゃんと載っています。友達と「どの国のお弁当がいいか」と選びながら一緒に読むのも楽しいし、食文化から世界を学ぶのにもお薦めです。
忙しい毎日の中でも、ちょっと元気と時間が余っている日に、自分や家族のためにお弁当を作ってみてはいかがでしょうか。何かが変わる春になるかもしれません。
(東京学芸大学附属竹早中学校 司書 中村誠子)