色のいろいろ

2026-10-09 14:02 | by 幅 |

 みなさんは「色」がどのように生まれたかを知っていますか? 今日はいっしょに色に関するいろいろを考えてみたいと思います。4冊の本を集めました。対象学年は中学二年生を想定しています。


 1冊目は、『いろいろ色のはじまり』(田中陵二 文・写真 福音館書店 2026年 978-4-8340-8926-4)です。

 この本では、昔の人がどうやって色を作り出したかという工夫から、最新技術との関わりまで、色の歴史を知ることができます。

 絵の具も色鉛筆もない時代、人々はなにから色を生み出したでしょうか。正解は「石」です。石を割り、粉にして、にかわと混ぜて絵の具を作りました。できたのは緑と青です。ほかにも土、花、葉っぱ、イノシシの血など……自然にあるものから色をとっていきました。鮮やかで濃い色は限られた材料から少しの量しか作れません。絵の具も高価で、とても貴重でした。

 おどろくのは、かつては「危険な色」もあったことです。宝石のエメラルドのように美しい緑色、シェーレ・グリーンとパリグリーンには、有毒成分のヒ素が含まれていました。この色で染めたドレスを着ると中毒を起こします。緑色の壁紙も流行りましたが、害のあるガスや粉が出ました。ナポレオンはこの壁紙の影響で命を落としたともいわれているそうです。また、アクキガイという貝からとれる濃い紫色はとてもめずらしく、ローマ帝国ではこの色の服を着た一般人が処刑の対象になりました。昔の人は色を身に着けるのも命がけでした。

 明治時代になると、化学反応によって色の素を作り出せるようになりました。自然にたよらなくていいので、安くたくさん作れます。現代では「機能性色素」の技術が進んでいて、テレビやパソコンなどに利用されています。

 

 次に紹介するのは、『なんで人は青を作ったの?青色の歴史を探る旅』(谷口 陽子、髙橋 香里 新泉社 2025年 978-4-7877-2417-5)です。

 こちらは中学一年生の蒼太郎と律が、化学者のおじいさんの元で青作りに挑むおはなしです。前の本に出てくる「ウルトラマリン」の色も作りますよ。小説家ではなく、研究者の方が書いたストーリー仕立ての本です。実話を元にしたエピソードもあるそうで、まるでいっしょに実験しているような気分になれます。二人の作った青は、やがて『北方ルネサンスの美術展』の一企画として展示されることになるのですが……。

 実は、主人公の蒼太郎は人見知りで、律しか友だちがいません。一方の律は元サッカー部のお調子者。ふたりの関係性がどうなっていくかにも注目です。


3冊目は『仕掛絵本図鑑 動物の見ている世界』(ギヨーム・デュプラ 著 渡辺滋人 訳 創元社 2014年 978-4422-760612)です。

 わたしたちは色のある世界に生きていますが、人間に見えている景色が「当たり前」ではありません。この本では、いろんな生き物の目の部分がめくれるようになっていて、風景の見え方を比べることができます。

 犬やネコは、青と緑は見えますが赤が判別できません。これは人間が3色型色覚、犬・ネコが2色型色覚で、持っているセンサーの数がちがうからです。

 人間には見えないものが見えている生き物もいます。例えばワシは紫外線を感知することができて、獲物の尿を見分けて狩りをします。いくつかの種類のヘビは熱を感じ取るのが得意で、赤外線を見分けます。これによって、暗闇でもネズミの居場所がわかります。ある実験でネズミのかわりに電球を置いたら、エサと勘違いして飛びかかったという例もあるそうですよ。

 

『色を奏でる』(志村ふくみ 著 井上隆雄 写真 筑摩書房 1998年 978-4-480-03432-8)

 最後に紹介するのは、染織家で重要無形文化財保持者(人間国宝)でもある志村ふくみさんのエッセイ集です。

 前半の本で色作りについて紹介しました。実は、色の素はふたつに分類できます。顔料と染料です。顔料は絵の具のことで、水に溶けません。いっぽうで染料は水に溶けるほど粒子が小さく、糸や布に強くくっつきます。志村さんが草木から抽出する色素も「染料」です。

 中学二年生の国語の教科書にのっている大岡信「言葉の力」に、志村さんの話が出てきます。これを受けて志村さんが書いたのが、この本に入っている「藤原の桜」というエッセイです。群馬県の藤原中学からの手紙をきっかけに、志村さんは現地に赴いて中学生たちと桜を染めることになりました。

 桜から色をとるというと、花びらを使うことをイメージするかもしれません。ですが、実際には枝や葉を使います。花びらにあらわれる色素がその植物の全体に巡っているのです。不思議だと思いませんか。

 藤原の雪のなかでとった桜の色はピンクでなく赤味がかった黄色でした。これが自然の命を映した、あるがままの「藤原の桜の色」です。

 後日、お礼として藤原中学校から藤原の野や森で染めた糸が届きました。志村さんはその糸で「藤原の雪」という作品を織りました。さて、この作品は一体どんな色をしているでしょうか。ぜひ本にのっている写真でたしかめてみてほしいと思います。

(東京学芸大学附属小金井中学校 司書 幅観月)

 


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