青春の1ページ 部活動

2024-05-28 16:30 | by 長友 |

 今年度は図書委員が委員会活動に積極的なようで、自主的に図書新聞を制作してくれました。その記念すべき第一号に掲載された作品が『桐島、部活やめるってよ』でした。折角なので今回は「部活」がテーマの本を取り上げてみました。

 

『桐島、部活やめるってよ』朝井リョウ,2010,集英社

 バレー部の主将、桐島が突然部活をやめた。本のタイトルにもなり、さながら物語の主人公を思わせる「桐島」は実はこの物語にはほとんど登場しません。桐島と同じ高校に通う5人の物語がオムニバス形式で描かれています。

太陽のようなまばゆさには、必ず影があるものです。青春時代のあの独特で複雑な人間関係が脳裏をよぎります。今まさに学生の子どもたちから見たら共感できる部分もあるのかもしれません。情景描写からまるで自分もその高校で一緒に生きているような気さえしてきます。

 

『ブロードキャスト』(湊かなえ,2018,KADOKAWA)

 夢を諦めざるをえない時、自分はちゃんと前を向いて進むことができるのか。中学時代、陸上部で活動していた主人公は目標としていた駅伝の全国大会出場を逃してしまいます。高校も陸上部の名門に入学し、そのまままた夢を追いかける……ことがある理由でかなわなくなり、誘われた放送部に入部します。陸上部への未練と放送部への熱意の間で揺れる主人公がふたたび違う形で全国を目指す物語です。

 大人になるにつれ、夢を追いかけること、そもそも夢を抱くことに対してどこか諦めている自分がいます。周囲もどこかそういう雰囲気があったりします。現実は非情とはいいますが、徐々にその諦念が子どもたちの間でも広がりつつあるような気がしてなりません。夢を持たないことも人生の選択肢の一つではありますが、どんなものでも夢を持つことに対して前向きでいてほしい、そんな思いで紹介しました。

 

『コロヨシ!』(三崎亜記,2011,角川書店)

 この本の主人公が所属するのは「掃除部」。もし「掃除部?放課後に掃除を行うボランティアみたいなもの?」と思ったのであれば、それは大きな間違いです。「掃除」とは、スポーツなのです。それも芸術・技術を競う国家的な。主人公・藤代樹は幼いころに「掃除」を始め、大会で優勝するほどの腕前を持つ選手。しかしながら目標が見いだせず、淡々と続けるだけの日々。そんな中、転機が訪れて……。勉強面でも部活でも、樹のように何かの目標を見出せなかったり見失ってしまったり、やる気が出なかったり、ちょっとマイナスになってしまうときもありますよね。いつも、いつでもプラスの気分でいられるわけではないと思います。この本はそんなときにちょっとだけ背中を押してくれます。それと、ひょっとしたら掃除がしたくなるかもしれません。

そろそろ新入生たちも授業や部活、定期テストなどを経験し、少しずつ、あるいは既に学校にも慣れてきたころなのではないでしょうか。勉強も部活も遊びもうまく両立させて、放課後の一瞬も残さないくらい学校生活を楽しんでほしいなと思う日々です。

(東京学芸大学附属小金井中学校 司書 長友春陽)


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