探究の根」を伸ばそう
2020-06-23 11:17 | by 村上 |
『「自分だけの答え」が見つかる
13歳からのアート思考』
末永幸歩著 ダイヤモンド社 (2020年)
さて、まずはタンポポの花をイメージしてみてください。
筆者は“ア―ト”をタンポポのような植物に例えて【アート思考】のイメージを伝えています。
私たちが“アート”と思っている“作品”はタンポポでいうと、一部・一瞬を切り取った地表に見えている花の部分に過ぎず、むしろ“アート”の本質は地表に顔を出さない根の部分、作品が生み出されるまでの過程のほうにあるといいます。すべてのはじまりである「興味のタネ」を放置せず、そこから広がる「探究の根」をじっくり伸ばしていくと、その一つの結果として「表現の花」が咲くのだと説いています。
この本は20世紀に生まれた6つのアート作品を通じて、6つの“授業”を体験しながら【アート思考】を深めていく形式で進みます。
美術に限らず、変化し続け先の見通せない世界を生き抜くために必要な力、【アート思考】。著者はそれを「自分の内側にある興味をもとに自分のものの見方で世界をとらえ、自分なりの探究をし続けること」と定義し、常識や正解にとらわれない考え方を教えてくれます。「正解を見つける力」から「答えをつくる力」へ。その道筋はまさに“調べ学習”から“探究学習”へと学びを深めていく子どもたちの思考の過程そのものです。
「探究の根」は好奇心の赴くまま好き勝手に伸びていくが、あるときどこかで1つにつながっていく…筆者の語るそんな様子を経験したことは、子どもに限らず誰しもあるのではないでしょうか。
平易な文体でスラスラ読めるのですが、“やってみよう”や“問いかけ”のページも読み飛ばさずに、ぜひ立ち止まって取り組んだり考えたりしてみると、より深い理解へとつながります。
「探究の根」を四方へ広げる若い人たちだけでなく、彼らの探究を傍で支える大人にも読んでほしい1冊です。
(東京学芸大学附属竹早中学校 司書 中村誠子)