漫画で知る女性の権利と人権

2020-07-08 13:33 | by 渡辺(主担) |

 こちらの本『ウーマン・イン・バトル』マルタ・ブレーン文、イェニー・ヨルダン絵 2020年 合同出版 では、19 世紀から現代に至るまで、女性の権利と人権のために闘った13人の女性を、ノルウェー人の作家と画家による漫画でわかりやすく紹介しています。
 その一人目に紹介されているのは、アメリカ人のエリザベス・キャディー・スタントン。彼女が生まれたのは19世紀です。現在21世紀ということを考えると、女性の権利が認められるようになったのは、わずか数百年のことだということがわかります。
 ではそれまで女性とは、どのような存在だったのでしょうか。当然参政権もなく、結婚の決定権は親にありました。結婚してからも夫に従うのは当然。女性は成人とは見なされず、子どもや奴隷と同様の扱いだったのです。
 そうしたなか、アメリカで、フランスで、イランで、世界のあちらこちらで自分たちの権利を求め、女性たちが立ち上がりました。その中の一人ドイツのローザ・ルクセンブルクは「行動しない自分が鎖につながれていることにすら気づかない」と、自分の身に危険が迫ることも恐れず、女性として闘う道を選びます。
 おそらくこの本で紹介されいている13人の女性のなかで、多くの生徒が知っているのは2014年にノーベル平和賞を受賞したマララ・ユスフザイさんだけではないかと思います。しかし、今私たちが当然のように行使している女性の権利は、自らの命をかえりみずに闘った多くの女性たちの犠牲があることを、心に留めさせてくれる一冊です。
 
 そしてもう一冊、漫画で女性の人権について考えさせられるのは  『戦争は女の顔をしていない』ソヴェトラーナ・アレクシエーヴィチ原作 速水螺旋人監修 2020年 KADOKAWA。
 ジャーナリストとしては初めてノーベル文学賞を受賞した、ロシア人のアレクシエーヴィチ。彼女は、500人にのぼる第二次世界大戦に従軍した女性たちの証言をまとめました。その作品を漫画化したのがこの本です。
 戦場というと、男性の戦う場だと思いがちですが、ロシアでは狙撃兵としてもいかに多くの女性たちが戦地におくられていたのかを知りました。戦場に行けば男女性の垣根なく戦うことになる、そのことが本の題名に凝縮されています。
 漫画という切り口だからこそ、生徒たちには手にとりやすいと思います。ぜひこの本をきっかけに、原作の世界にも関心を寄せてもらえたら幸いです。

 ちなみに原作の『戦争は女の顔をしていない』は2016年に岩波書店の岩波学術文庫より発行されています。
(東京学芸大学附属国際中等教育学校:渡邊有理子)

次の記事 前の記事