『子どもの読書を考える事典』(汐﨑順子編 朝倉書店 2023)

2023-09-09 09:37 | by 村上 |


 5月に出版されたこの本は、これまでにない読書の事典をつくりたいという、責任編集者の汐﨑順子さんと、本作りsolaの代表檀上聖子さんの思いから2019年に立ち上がった企画です。「つくる」
「読む」「つなぐ」という3つの立場から立体的にの子どもの読書を見ていけたら…と研究者・児童書専門店主・公共図書員・学校図書館員6人が、あしかけ4年かけて編集作業をしてきました。

 第1部はこの事典の「つくる」「読む」「つなぐ」という3つの柱をどのように捉えるかを、それぞれのチームで考え、さらに編集チーム全体で共有し文章化したものです。事典の項目の執筆者には、1部を短くしたものをつけて、原稿を依頼しました。



 第2部の事典の項目は、全部で156。編集チーム6名+106名のそれぞれの分野で仕事をされている方々に執筆をお願いしました。学校図書館に関わる方々にも多数執筆をしていただいています。第2部の最後には子どもの読書に関して、主につなぐ視点からの年表も入っています。第3部は項目別文献一覧、書名索引、キーワード検索など、子どもの読書を考えるうえで役立つ構成になっています。

  こちらから内容の一部を読むことができます。

 
 これだけの時間と人が関わっている事典は、どうしても価格設定が厳しくなり、当初目指した一人職種として頑張っている学校司書が、自前で買える、あるいは学校の蔵書として気軽に購入できる金額には設定できなかったのですが、子どもの読書に関わる大人には長く使える事典です。自校での購入が難しときは、ぜひ近隣の公共図書館に、購入リクエストをかけてみてください。(事典のためか、館内閲覧に限定している公共図書館も多いようですが、貸出可能な資料として登録をしてほしいです。)

 微力ながら、学校司書の立場で”つなぐ”部分に関わった私が実感したのは、いろいろな立場で子どもの読書を大切に思う人たちがこんなにもいるということです。執筆をしてくださった方の後ろには、同じ仕事をされているたくさんの方がいます。子どもと本をつなぐことを仕事にしている私たち学校司書ですが、ひとりで頑張るのではなく、子どもの読書を大切に考える人たちと緩やかにつながり、次の世代にも「読む」文化を伝えていきたいと、この本の編集に関わって感じました。ぜひ手に取って気になるページをめくっていただけたらと思います。
東京学芸大学附属世田谷中学校 村上恭子


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