読書バリアフリーを進めよう!

2023-10-05 14:43 | by 宮崎(主担) |

 7月に発表された芥川賞で、難病当事者である市川沙央さんの小説『ハンチバック』(文藝春秋)が受賞したのを機に、読書バリアフリーへの関心が高まっています。難病で紙の本を持つことが難しい市川さんは「読書バリアフリーが進むことを望んでいる」と話していましたね。
 2019年に「読書バリアフリー法」が施行されてから、図書館では、大活字本やLLブックを備えるなど、障害のある人への合理的配慮が少しずつ進んでいますが、まだまだ一般には知られていない読書のバリアフリー。今回は、ちょうど時期を同じくして出版された、読書バリアフリーの本を2冊紹介します。


『読書バリアフリー 
  見つけよう! 自分にあった読書のカタチ
(読書工房/編著 国土社 2023.7 978-4-337-28950-5)
 この本は、はじめにそもそもの「読みやすさ」「わかりやすさ」とはどういうことか、とても分かりやすく説明しています。自分は困っていないと思っていた人にとっても、自分にとっての読みやすさとはと考えるヒントとなるでしょう。そのうえで、読みやすくするための道具や、点字絵本、LLブック、オーディオブック、電子書籍など、様々な種類の「バリアフリー図書」を紹介しています。障害当事者の読書コラムも理解を深めるのに役立ちます。
 全体に、大きな字で、カラー写真やイラストも多くて読みやすく、障害当事者や子どもたちにも理解しやすい作りとなっています。


『読書バリアフリーの世界
 大活字本と電子書籍の普及と活用
(野口武悟/著 三和書籍 2023.7 978-4-86251-509-4)
 こちらは、どちらかといえば、読書のバリアフリー環境を整える側のための本です。「読書バリアフリー法」制定の経緯から、点字図書やLLブックといったさまざまな「バリアフリー資料」の紹介、さらに「バリアフリー資料」が当事者に届くための方法も紹介されます。とくに「大活字本」の現状と電子書籍の普及に向けての展望が詳しく具体的に述べられています。
 この本の序章では、本を読みたいのに読むことができないことを「本の飢餓」と表し、読書のバリアフリーの必要性は誰にとっても他人ごとではないことがよくわかります。巻末の参考図書リストも役立ちます。

 誰もが読書をあきらめなくてもいい社会の実現に向けて、学校図書館にも果たすべき大きな役割があるといえるでしょう。
(東京学芸大学附属竹早小学校・特別支援学校司書 宮﨑伊豆美)

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