ユダヤ人迫害に関する資料ありますか?

2012-02-12 07:38 | by 村上 |

  1年生の国語の先生が図書館に見えました。『ベンチ』の学習に入ったようです。現在使っている教育出版の教科書には『あの頃はフリードリヒがいた』の一部が教科書の教材となっています。『ユダヤを知る事典』(東京堂出版)と共に何冊か関連図書を手渡しました、先生からリクエストがあった『夜と霧』は所蔵中でしたが、『シンドラーのリスト』は何故か見当たらず…。その時一緒に差し出した本が『ジャック・デロシュの日記;隠されたホロコースト』ジャン・モラ著 岩崎書店 2007 以前読んでちょっと衝撃だった本です。

 今後の予定を伺うと、まだ検討中とのことでしたが、単元が終わる頃、戦争や人権に関連する本をできれば読んでほしいと思っているとのこと。そこで先生が帰られたあと、使えそうな本を棚から抜くことに。まずは自分の記憶だけを頼りに抜いてみるが、まだまだ足りない。そんな時に役立つのがブックリストです。以前町田市立成瀬台中学校の学校司書水越さんが同じくこのベンチの授業のために作られたブックリストをいただいていたことを思い出しました。そしてこのデータベースにもアンネ関連図書のブックリストがありました。

 その他にも役立つのが、二次資料です。特に『きみには関係ないことか;戦争と平和を考えるブックリスト’97~’03』(かもがわ出版 2003)はこんなときにぴったりの本です。これらを参考に、自館の資料を抜き出し一か所に集めてみました。

 その後、最終的に先生はふたつの課題を出しました。1.ベンチが描かれた時代の歴史的背景を調べて書く、 2.実際にあった出来事を下敷きに書かれたフィクション(小説・物語)を1冊読んで紹介文を書く のいずれかを選ぶということに。そこで抜いていた本をふたつに分け、後者の課題本に相当する本を、展示コーナー一面に並べました。この頃、海外のYA小説がなかなか読まれないのですが、こういう切り口で本を探すと、やはり読み応えのある作品はむしろ海外の小説に多い気がします。小学校の司書さんから、とても良かったと教えてもらって蔵書にした『海の島;ステフィとネッリの物語』(アニカ・トール著 新宿書房)も、なかなか読まれなかったのですが、今回の課題で初めて借り手がつきました。日頃から、このように教室での学びを図書館に繋げてくださる先生は、司書にとってはとても嬉しい存在です。
 並べた本の中から、いろいろ手にとって本を借りていく1年生たち。でも中には、「どれがいいか教えてくださいよ」という声も。本当に悩んでいる時は相談にも乗りますが、選ぶのが面倒と思っている生徒には、「選ぶのは自分の仕事でしょ!」と突き放します。というのも、選ぶという行為は、たとえ小さな行為であっても、そこに自己との対話があり、課題に対し主体的に関われるかどうかに繋がる気がするからです。 
 図書館の蔵書も、この機会に最近出た『隠れ家;アンネ・フランクと過ごした少年』(ロシャロン・ドガー著 岩崎書店)を入れ、『きみには関係ないことか’03~’10』を注文し、いつのまにか不明本になっていた『ゼルマの詩集』(岩波ジュニア新書)を補充しました。授業で使われると、蔵書も整備され、生徒の読書意欲も喚起され、まさに一挙両得です。先生、ぜひ学校司書に気軽にレファレンスを頼んでください!
東京学芸大学附属世田谷中学校 村上恭子

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