毎日めくって世界を広げる! 年始は干支で「としょかんミッケ!」

2024-12-10 13:38 | by 金澤 |

 今月は、杉並区立久我山小学校の司書の滝島奏未さんに日頃の学校図書館での展示の様子をお知らせ頂きました。たくさんの実践を紹介していただいたので、特別に今月と来月の2回に分けて紹介させていただきます。 (編集部)

★毎日めくって世界を広げる!新聞て、面白い!~子どもとの会話が広がる、新聞と本の展示~

 本校はここ数年、校舎の長寿命化工事の関係で、図書館前の教室を使う学年が、年度ごとに変わります。今年度は5・6年生が図書館前の教室になり、新聞を使った高学年向けの展示が出来ないかと考えました。新聞記事の切り抜きをしてコメントや見出しをつける等、色々考えましたがピンとくる方法がなく、なかなか展示につながりませんでした。そんなとき、子どもたちとの会話から、とても良い方法が見つかりました。

 本校で購読している新聞は、朝日小学生新聞。館内が狭く新聞スペースを十分に確保できないため、届いた新聞は、教室用の児童机の上に折った状態で積み重ねているだけでした。大人と同じサイズの新聞は、子どもたちが広げて読むのは、ちょっと大変です。それもあってか、あまり読まれない毎日でした。
 一方、図書館の廊下壁面には、大きな掲示板があり、その一部を新聞の展示に活かしたいと考えました。まずは、新聞の1面が見えるよう画鋲で四隅を止めてみました。「1面以外、がびょうで読めませ~ん!」と、ごもっともな意見が続出し、次の案を考える約束をしました。
 試したのは、新聞を片側だけ画鋲で留める方法。画鋲留めしていない面が広がってしまい、廊下を歩く児童の妨げになるばかりか、新聞の一部が裂けて破れる有様です。

 悩むこと数日。掲示板に、新聞を貼ったりはがしたりを繰り返す司書を見て、「なにしてるの~」と入れ代わり立ち代わり児童が話しかけてくれます。事情を話すと、「割りばしを使っておさえたら?」「最終面を画鋲で留めたら?」「掲示板に切り目入れて差し込んだら?」と、様々なアイディアを出してくれます。そしてある児童の「ひもは?」のアイディアを聞いた瞬間、お互いに「あっ!ゴム!!」とひらめきました。
 新聞片側2ケ所を画鋲で留め、反対側はゴムの両端を画鋲で留めて縦に渡してみると、立ちながら気軽に読めるように!ゴムを少しずらすだけで、読みたい記事が読める手軽さに「これいいよ~!」と児童からも好評です。

 さっそく、新聞1面の記事に合わせた本を展示しました。本は1~2冊程度と決め、小さな展示にしました。テーマ展示は、1年間に同じテーマを何度も展示する事は殆どありませんが、新聞記事に合わせた展示は、同じようなテーマが何度も登場します。似たようなテーマでも、新聞の記事と本が変わることで、新たな視点が加わります。防災、リサイクル、ゴミや環境問題などの、身近で聞きなれた事が深まるだけでなく、太陽フレア、アンコンシャスバイアス、各地の災害やその復興についてなど、毎日多様な時事ニュース・未知な事柄に出会う機会を増やせたのではないかと思っています。

 とくに印象的だったのは2024年5月28日(火)の、人種などを理由に職務質問を受ける「レイシャル・プロファイリング」の記事に沿えた『ママたちが言った』の本。その日1日、展示している本はいつも少しずれていて、何人もの児童が手に取ったのだと感じました。感想や感じたことを司書に伝えに来る児童はほとんどいませんでしたが、今すぐ理解できなくても、子どもたちの世界が少し広がった瞬間に立ち会えた印象を受けました。

『ママたちが言った』アリシア・D・ウイリアムズ クレヨンハウス

 

 

 

 

 最近では、うっかり朝の新聞交換を忘れると「今日の新聞まだですか。」と、何人も声をかけてくれます。
 大谷選手の活躍のような普段から人気のある話題に加え、アメリカの大統領選や日本の衆議院選の時期は「誰になると思う?」等の会話も聞かれ、子どもたちの視野の広がりを感じました。
 司書にも良い点がありました。資料が少ない分野や更新が必要な本に気づき、選書につなげることが出来ました。時代に合わせた確かな情報の収集・発信の重要性を改めて感じました。
子どもたちが毎日いる学校図書館。子どもたちが多様な価値観と出会い、子どもたちの世界が広がるきっかけとなるような展示を、今後も模索していきたいと思っています。

★年始は干支で「としょかんミッケ!」 ~ドラゴンハンター編~
 毎年「干支」に合わせて行う企画展示です。「としょかんミッケ」とうたい、その年の干支にまつわる本を、本棚から見つけてきてもらう取り組みです。

 2024年は「辰年」だったので、辰とドラゴンが出てくる本を対象にして行いました。ポイントは、説明とルール設定です。児童への説明は本の紹介を交えて、0~9類から1冊ずつ紹介します。ルールはシンプルにして、遊び心を少し加えます。例えば、「見つけられる本は1人1冊です」と伝えるのではなく、「1日ひとり1匹まで。一気に捕まえると絶滅のそれがあります」など、子供たちのワクワク感を誘います。スタンプ台などを作って、見つけた子にスタンプを押した年もありました。辰とドラゴンの違いはポスターで事前に知らせました。準備が簡単で毎年使えて児童が参加できる取り組みです。

(杉並区立久我山小学校 司書 滝島奏未)

 


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