音楽会✖︎展覧会✖︎古典授業

2025-10-03 13:36 | by 岡田 |

 東京学芸大学附属高等学校の図書館展示の特徴は、教員からの授業関連での依頼が多い点です。本校では、教科横断授業以外にも、生徒の知識を広げるために外部の博物館、美術館の活用も視野に入れた授業展開を行っています。以前から図書館活用授業で古典授業は行なってきました。その際に教員から「カリキュラムが古典と現国とで分かれているので、生徒は全く別々のものだと思っている。古典と今が繋がっている事を授業の土台としたい」との考えを聞きました。それ以降、司書として国語科の図書館支援を行うたびにその点を心に命じてきました。その事を踏まえて、今回は教員から依頼された授業とのコラボ展示の一つ「音楽会✖️展覧会✖️古典」を紹介します。

展示資料を見ると音楽や美術の展示のようですが、古典の授業使用資料として依頼を受けました。「音楽会や展覧会で古典に関するものを見つけ鑑賞し、古典を文学以外の多面的な側面から深めてみよう」というのがテーマです。古典と関連しての芸術鑑賞は高校生にとって敷居が高いところがあります。そのハードルを図書館では少しでも低くすることを意識して展示を行いました。

マンガでわかる雅楽  』遠藤 徹 2024年 誠文堂新光社 ISBN: 978-4-416-72332-6 768.2カ

有名な作品をイラスト付きで紹介しており、馴染みの薄い雅楽への公演鑑賞の一歩とします。もちろん、公開研究授業で習った源氏物語の中で光源氏と頭中将が見目麗しく舞った『青海波』の注釈もあります。豪華な装束に平安時代の視覚的な美意識も理解できます。

もっと知りたいやきもの 』柏木 麻里 2020年 東京美術 ISBN: 978-4-8087-1180-1 781.1カ

「きよしとみゆるものとかわらけと」して夕霧と雲居雁との結婚の場面が掲載され、粗末に見える素焼きの食器が究極の贅沢であり、今の婚姻の形にも通じる点など、平安時代と高校生をつなぐ、共通の価値観に気がつく資料となっています。

『邦楽ディスク・ガイド』 星川 京児 2000年 音楽之友社 ISBN: 4-276-23819-6 768ホ 

琴でのヴィヴァルディや武満徹の作品に影響をうけた琵琶の語りなど意外な邦楽に出会える本として紹介しました。お気に入りの邦楽を見つけて、気軽にYouTubeで探してみてください。邦楽を好きになる一歩になります。

 本校の図書館展示は、授業やフィールドワークで生徒が興味を引くような内容を担当教員から求められます。教員の学びの意図や生徒の読む力のバランスを考えての展示は大変難しい反面、学校図書館司書としてやりがいがあります。資料の選書の話し合いも教員に学校図書館を理解してもらう大切な要因の一つになっています。ここぞとばかりに教員を棚に連れて行って、生徒の読解力や授業との協働などの相談や、あわよくば?!学校図書館活用への理解が深めてもらえたらいいなと思っています。先日は学芸大学の教育実習生が展示のコーナーから「この本を授業で紹介したいです!」と本を数冊借りて行きました。実習生が本校の図書館を通して、将来学校図書館を活用できる人材になってほしいとも思っています。教員が必要とする資料と生徒が読みたい本のバランスを常に考えていくことが大切だと展示を依頼されるたびに試行錯誤しています。

                  (東京学芸大学附属高等学校 司書 岡田和美)

 

 


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