教育と図書館の未来―レファレンス協同データベース事業フォーラム

2014-02-21 09:21 | by 中山(主担) |

 2014年2月17日 国立国会図書館関西館にて、第10回レファレンス協同データベース事業フォーラム が、開催されました。  「パネルディスカッション:教育と図書館の未来」のコディネ―タであった 青山学院大学教授の小田光宏先生から、フォーラムで話題になった点と今後の学校図書館への期待について、ご寄稿頂きました。  (レファレンス協同データーベースとは?

「あやかしの声」が…

青山学院大学教育人間学部 教授 小田光宏




 上の図をご覧ください。なかなか上手に描かれているこの図は,2月17日に開催された「レファレンス協同データベース事業フォーラム」のパネルディスカッションの概要を示したものです。テーマは,「教育と図書館の関係をいっそう良いものにするために,レファ協はどのような貢献ができるのか?」ですが,趣旨を砕いて説明すると,次のようになります。

 

   レファ協に,学校図書館が参加館として正式に加わることとなった。学校図書館の活動の成果として得られたレファレンス事例データや調べ方マニュアルデータが,データとして蓄積されることになる。このことは,データの量や参加館の数といった意味でのレファ協の進展につながるのはもちろんであるが,登録されるデータの質の点での展開がなされ,様々な新たな可能性が開けるものと,大いに期待される。一方,参加館においては,公共,大学,専門,国立国会図書館だけではなく,学校図書館を意識したデータ登録を行うことにもなる。しかし,こうした動きは,今年度始まったばかりであり,レファ協の関係者の間でも,認識が十分になされているわけではない。そこで,このパネルディスカッションでは,標記のテーマのもと情報共有を行い,討議を通して共通理解を深めることを目指す。具体的な検討項目は,①学校教育(学校図書館)へのレファ協の貢献,②学校教育(学校図書館)における他館種のレファ協データの意義,③学校教育(学校図書館)の環境形成(政策含む)へのレファ協の役割である。

 

 そうです。学校図書館におけるレファレンスサービスの成果を,このデータベースに蓄積し,教育に携わる方々に活用していただくための営みが始まったのです。パネルディスカッションでは,図に示されている五つの問いかけに基づいて,パネリストから数々の知見が示されました。最も印象に残った指摘は,「もはやレファ協は,図書館界のインフラストラクチャである」でしょうか。公共,大学,専門,国立の4館種に加えて,学校図書館がレファ協に参加できるようになったことは,このインフラをさらに強固なものにすることにつながります。当日は,ソチオリンピックの真っ最中でしたが,図書館界の五つの環を思い浮かべたのは,私だけではなかったと思います。しかも,図書館の内側だけのネットワークの充実が期待されるのではなく,教育界への貢献を目指していることは,特筆すべきことであると思います。

 
 レファレンスサービスと言うと,質問回答サービスがクローズアップされることが少なくありません。レファ協で言えば,レファレンス事例データが関係します。しかし,パネルディスカッションで異口同音に強調されたのは,調べ方マニュアルデータでした。特定の課題を設定し,関連する資料や情報を的確に調べて入手し,それをもとに考えて,成果として発表するというプロセスは,「探求型」の学習の基本形と考えられています。そうした学習に資する調べ方マニュアルデータの登録と公開は,レファレンス事例データとともに,学校図書館に大きな期待が寄せられています。

 おりしも,文部科学省の「学校図書館職員の役割及びその資質の向上に資する調査研究協力者会議」による最終報告書が,近々示されます。その最終(案)では,学校図書館職員の職務の一つにレファレンスサービスが位置付けられ,しかも,「対応記録の蓄積と活用」が明確に謳われています。学校図書館がレファレンスサービスに関係する成果を蓄積して活用できるようにすることは,理想や目標ではなく,日常のことであり,必須のことになりつつあるのです。

 もちろん,レファ協に参加する学校図書館(学校図書館関係団体)の数は,わずか9(2014217日現在)にとどまります。全国の学校図書館がこれに参加するようになるのは,まだまだ遠い将来でしょう。しかし,国立大学の附属校や私立学校の図書館が,これまで以上に学校図書館を先導する役割を果たすならば,教育界と図書館界の新たなパートナーシップの形成につながるものと予測しています。


 この日のフォーラムでは,作家であり,山梨県立図書館長を務める阿刀田高氏による基調講演がありました。拝聴するうちに,氏の著された数々の作品の中から,「あやかしの声」が頭に浮かびました。学校図書館には,たくさんのレファレンス事例や調べ方マニュアルの記録があるのだろう。紙のシートに記され,ファイルに綴じ込まれている状態で。そんな記録たちが,ぶつぶつと呼びかけているのではないでしょうか。「俺を登録して,公開してほしい!」「いろいろな人に読んでもらって,役に経ちたい!」と。


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 学校図書館からは、神奈川県立横浜南陵高等学校司書 田子環さんが、「神奈川県学校図書館員研究会」の団体参加について発表されました。
 続いて行われた「パネルディスカッション:教育と図書館の未来」において、私どもの「先生のための授業に役立つ学校図書館活用データベース」(主催である学校図書館運営専門委員会は、9月より参加館として登録)も、教員レファレンス、授業実践を特長として話題になり、取り上げられました。
 現在、学外の40校の事例も含め、約180の授業事例と日常レファレンスが33事例あり、レファ協に転載をしていこうとしています。 レファ協に参加したくても組織的に難しい、でも実践や事例があるという学校はぜひ、「先生のための授業に役立つ学校図書館活用データベース」に事例をお寄せ下さい。レファ協に間接的に参加することができるのです。

 みなさんの 実践事例を お持ちしています。

東京学芸大学附属小金井小学校司書 中山美由紀

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