研究授業の実施
知的障害特別支援学校高等部を対象に、生物分野および化学分野を中心とした研究授業を実施、その後授業アンケート/インタビュー調査を行いました。
実践(生物分野)
身の回りのものの観察
 生徒が身の回りの植物やものに興味・関心をもち、観察に関する初歩的な技能や理科の見方・考え方を養うことを目的とした実践を行いました。実践では、身近な植物の同定を簡単に行うことができるウェブサイト「野草雑草検索図鑑」(http://chiba-muse.jp/yasou2010/)と操作・観察が容易でかつ安価な「STPCTOU LCDデジタル顕微鏡STAD205B」の2つのツールを用い、全4回の授業を行いました。授業では、多くの生徒が楽しみながら互いに操作や記録の方法を教え合って観察・実験に取り組む様子が見られました。質問紙ならびにインタビュー調査から、軽~中度の障害の生徒において上記2つのツールが、身の回りのものへの興味・関心を高め、「目的に応じた器具の正しい取り扱いや観察結果の記録」といった観察に関する初歩的な技能や、観察物の比較をはじめとする理科の見方・考え方を養うツールとして有用であることが明らかとなりました。一方で、観察物の種類等については、植物の開花時期や生徒の能力・個性を考慮しなければならないといった新たな課題も見つかりました。
手立てと工夫
野草雑草検索図鑑の利用
 葉の長さや幅、草丈の計測が必要となるため、定規の利用や数字等への理解が困難な生徒に向けて補助教具を作成しました。葉の形の項目についても、野草雑草検索図鑑の選択肢の語句や絵だけでは判別が難しいことが予想されたため、代表的な葉の形の写真を具体例として補助教具に掲載しました。また検索する形質を指定し記録するためのワークシートも作成しました。
デジタル顕微鏡
 生徒が操作する部分にカラーシールを貼り、操作部位を色で指示するよう支援策を講じました。また、ピント合わせの習得では、倍率調節ねじを回すとピントを合わせることができるということをまず実感させ、次の段階として倍率調節ねじとピント調節ねじの両方を使った顕微鏡の使い方について説明しました。
人の体のつくりと
はたらき
 本授業では、理科だけではなく栄養教諭とも連携をしながら食育の観点からも学習をすすめました。唾液によって、でんぷんが変化する実験から消化の仕組を考えることができるよう展開しました。本時では、唾液の代用として「ヘルパー粉」を活用し実験を行いました。また、実験を行い結果等をまとめた後は、実際に給食の食材を使ってでんぷんについて学んだり、咀嚼について考えたりする学習を行いました。
実践(化学分野)
実践の概要
 身近な材料や市販の実験セットを用いて、生徒が安全に失敗無く実験ができることを念頭に全3回の授業を行いました。授業では生徒が熱心に実験に取り組む様子が見られ、90分の時間内に終了することができました。生徒からは「楽しかった」との感想や、「(他の材料でも)やってみたい」などの意見があり、「実験が好き」や、「理科が好き」からわかるように、実験を通して理科への興味関心の向上につながったものと考えられます。
もののとけ方
 水溶液に中に砂糖と食塩を溶かして、砂糖のほうが溶けやすいことを確認しました。水に砂糖または食塩を溶かすと、溶かす前と水溶液は変わらず無色透明でしたが、加えた分だけ重さが増えることがわかりました。さらに、溶けた後の水を蒸発させると、溶かしてあった砂糖と食塩が出てきたことと併せて、水に砂糖と食塩を溶かしたとき、見た目は何も変わらないが、水の中に砂糖と食塩が入っていることがわかりました。
くだもの電池
 先ず、乾電池にリード線でモーターをつなぐとプロペラが回り、電気が流れたことが確認できることを復習しました。次に、銅、亜鉛、アルミニウムなどの金属板やレモン汁でも電気が流れることを確認しました。一方、ただの水では電気は流れず、塩を加えると電気が流れるようになることがわかりました。最後に、前述の金属板をレモンに挿して電池になる組み合わせを探し、銅と亜鉛の組み合わせで電池になることがわかりました。レモンの代わりにお酢でも電池になることを見出した生徒もいました。