タイムトラベラー
2015-10-18 11:05 | by 井谷(主担) |
『バック・トゥ・ザ・フューチャー』という映画を知っていますか?
今から30年ほど前の1985年に大ヒットしたアメリカ映画です。落ちこぼれ高校生のマーティは友人科学者のドクが作ったタイムマシンに乗って、1985年から1955年に行ってしまいます。現代の燃料など無い時代に、どうやって再び未来へ帰ってくるのか、そして両親の出会いを邪魔してしまったマーティは、無事二人を結びつけることができるのか、ハラハラドキドキのSFアクション映画です。
映画の大ヒットで続編が作られることになりますが、そのパート2では、マーティは息子の危機を救うため、未来へ飛んでいきます。それが30年後の2015年10月21日、つまり、今週の水曜日なのです。
当時考えられた未来の道具のうち、薄型テレビやテレビ電話など実現した物もあります。また、ナイキは2015年のマーティが履いていた自動靴ひも締めスニーカーを今年中に発売するとの噂もありますし、別の会社では宙に浮くスケボー ホバーボードの開発も進んでいるようです。
では、マーティのようにタイムトラベルしてしまった高校生の話を他にも見てみましょう。
『はるか遠く、彼方の君へ』安澄加奈 ポプラ社
修学旅行中の夕鷹、華月、遠矢の三人は、京都国立博物館に展示してある青銅の剣を見たとたん源平争いの真只中に飛ばされてしまいます。偶然出会った義経軍に助けられ、行動をともにする3人。義経のおおらかで大胆な人柄と、全力で殿を守ろうとする弁慶達一行と触れ合ううちにたくましく成長していく3人は、必死に元の時代に帰る方法を探っていきます。あの、平家物語一番の名場面である「扇の的」が、思いもかけない形で出てきますので、そこにも注目して下さいね。
続いて、ドイツのベストセラー作家の書いた、タイムトラベルラブコメを紹介しましょう。
『時間旅行者の系譜 全3巻』ケルスティン・ギア 創元社
幽霊が見える以外はごくごく普通(?)の女子高生グウェンドリンは、ある日突然12番目のタイムトラベラーとして任務を果たすことになってしまいます。そもそも、タイムトラベラーの家系に生まれたとはいえ、準備を整えていたのは自分ではなく、いとこのシャーロットだったのに。相棒のギデオンはとびっきりのハンサムだけれど、グウェンドリンを馬鹿にするいやな奴。任務を課す秘密結社「監視団」や、それに背いたグウェンドリンの先祖の目的はなんなのでしょうか。そして、いつしか惹かれていくギデオンとの恋の行方も気になる3部作です。
さて、そもそも時間とは一体何でしょう?そんな疑問に答えてくれるのがこの本。
『時間とは何か』池内了 講談社
時間は形がなくて目には見えないし、勝手に止めたり動かしたりはできませんね。楽しい時には早くすぎるし、退屈な時は長く感じます。最初に一日の時間を決めた人は何を目当てにしていたのか、その後時間をより正確に測るために人間のしてきた工夫はどんな事なのでしょうか。また、宇宙は137億年前、地球は46億年前に生まれたと言われますが、そんな長い時間を一体どうやって測ったのでしょう。 様々な時間に関する疑問をやさしい言葉で分かりやすく解説してくれます。
ではその時間をさかのぼったり、飛び越えたりすることははたして可能なのでしょうか?
『図解雑学タイムマシン』福江純 ナツメ社では、そんな謎を様々な理論から科学的に検証していきます。アインシュタインの相対性理論によれば、止まっているものと動いているものでは時間の進み方が違うのです。光の速さと同じ速度で動く事が出来れば、時間の流れは限りなくゼロに近づき、タイムトラベルも理論上は可能になります。ただし、実際には光の速さで動く事は今のところ不可能ということ。相対性理論や量子力学など、科学の最先端の知識に触れながら、まじめにタイムマシンについて考えてみませんか?
さて、その「タイムマシン」という言葉を初めて使ったのは
『タイムマシン』 光文社新訳文庫を書いたH・G・ウェルズです。
イギリスのロンドンに住む主人公TTは、なんと西暦80万2701年という未来世界にタイムトラベルします。そこは、現在の人間によく似ているけれど弱弱しく好奇心に欠けた地上人と、不気味で凶暴な地底人の住む世界でした。科学が進んで頂点に達した後の人類の姿を想像して描いています。まだ、ようやくガソリンで走る車が発明されたばかりで、飛行機もロケットも無い1890年代に発売されたこのSF小説は大評判となり、ウェルズはその後『透明人間』『宇宙戦争』など次々と奇想天外な傑作を発表しました。
映画『バック・トゥ・ザ・フューチャー』のパート3では、ドクとマーティは西部劇の舞台である100年前の1885年に到着します。そこでドクは同じく科学好きの教師クララに恋をし意気投合します。10年後の1895年に発売された『タイムマシン』もきっと、二人でさっそく読んだに違いありませんね。
二人が愛読したフランスのSF作家ジュール・ヴェルヌのことばに、
「人間が想像できることは、人間が必ず実現できる」というものがあります。月や海底に到達できたように、いつの日かタイムトラベルも実現する日が来るのでしょうか?
東京学芸大学附属小金井中学校 井谷 由紀