障害とバリアフリーのブックガイド

2022-12-12 11:41 | by 渡辺(主担) |

 私が子どもだった頃、滋賀県にある知的障害のある人たちの施設「止揚学園」の子どもが描いた絵本『こわいことなんかあらへん』(福井達雨、偕成社)と出会いました。この施設の職員を親にもつ生(いくる)君目線で、知的障害のやよいちゃんの日常がつづられているのですが、生君にとってやよいちゃんは友だちの一人に変わりありません。“世の中には背の高い人や低い人、男の子や女の子・・・いろんな人がいるのと同様に、障害をもっている人もいるんだよ”という、社会のなかの多様性にはけして優劣などないのだということを、5歳の子どもの言葉からはっと気づかされた忘れられない絵本です。その後大人になり障害をもつ方と出会うたびにこの絵本の言葉が蘇り、それと同時に子どもの頃にこうした絵本と出会えたことへの感謝の思いにもなりました。

 先月11月に出版された『障害とバリアフリー 子どもブックガイド』障害と本の研究会(かもがわ出版)では、障害をもつ人たちを知り、理解する本だけではなく、社会にあるさまざまな「物理的バリア」「制度的なバリア」「文化・情報のバリア」「心のバリア」といった目に見えないバリアも含め、子どもたちが多様性を認め合う社会を築くうえで出会ってほしい作品が多数紹介されています。本を手渡す仕事をしている私たち司書にとってもぜひ手元に置きたい一冊です。
(東京学芸大学附属国際中等教育:司書 渡邊 有理子)


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