色の不思議はおもしろい

2022-08-10 19:03 | by 中村(主担) |

『手術をする外科医はなぜ白衣を着ないのか?
  —色の不思議を科学する—』
   入倉隆著 日本経済新聞出版 2022年


 シロクマは皮膚も毛も白くないのに、なぜ白く見えるのか。赤いユニフォームは青よりも勝率がいいのか。白ワインを赤く着色すると赤ワインの香りがするのは本当か。緑色の哺乳類がいないのはどうしてか。
 この本は、色彩工学の専門家が身近な例を挙げながら、最新の実証研究に基づいて色の不思議を分かり易く教えてくれる雑学本です。目次を眺めるだけでも楽しいし、はじめから読み進めずに興味のあるページだけを選んで拾い読みや読み聞かせすることもできます。もちろん探究学習の資料としても充分活用できる内容です。

 生命が、進化の過程で色や形を判別する目を獲得したり、生存をかけて自身の色を変化させたりしていったこと。とりわけ人類だけが色を楽しみ、色に新たな価値を見出し「映え」を競っていること。実際にモノの表面に色が付いているわけではなく、反射の仕方の違う波長の光を色として目と脳が捉えているということ。「色」というものを様々な角度から分析し、私たちにその奥深さや面白さを伝えてくれる1冊です。
 読むほどに「へぇ、そうなんだ!」と驚かされる事実がいっぱい。夏休みの自由研究に用いてもいいかもしれません。

 (東京学芸大学附属竹早中学校 司書 中村誠子)

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