鉄は魔法つかい
2012-01-15 13:54 | by 井谷(主担) |
鉄は魔法つかい 命と地球をはぐくむ「鉄」物語
畠山 重篤 著 小学館
「森は海の恋人」をキャッチフレーズに、
1989年からカキの養殖のために山に木を植え続けている、
宮城県気仙沼の漁師、畠山重篤さんの最新刊です。
山に木を植えると、なぜ海が豊かになるのか。
どうもそこに「鉄」が関係するらしいと気づいた著者は、
水産学部や生物科学の教授、製鉄会社の社員など様々な分野の人と交流し、
「鉄」が魔法使いのように多くの働きをしていることを知ります。
地球の質量の30%をしめる鉄は、
人間の血液中で酸素を運んだり、植物の光合成にも関係します。
また、窒素やリンなどの栄養は豊富なのに魚の少ない海に鉄をまいたら、
劇的に植物プランクトンが増え、その結果、魚の捕れる豊かな海になったなど、
まさに、「鉄」は命に関わる物質なのです。
オーストラリアの三十五億年前の大地を見たり、
山口県の水産高校の取り組みを訪ねたり、著者の行動は幅広く、
話題は宮沢賢治から宇宙飛行士の野口さんまで、豊かで楽しいです。
この本の出版直前に三陸海岸は大津波におそわれ、著者の養殖場も大変な被害を受けましたが、
森と海のつながりがしっかりしていれば、必ず復興できるという著者の声を聞き、
勇気をもらえるような本です。
また、同じ著者の本でさらに豊富な写真を使い、森と川と海のつながりを語ったものに
『守ってのこそう! いのちつながる日本の自然⑤ 森・川・海 つながるいのち』
(畠山 重篤・著 童心社 2011年)
もあります。
【参照事例】 A0083 小学校社会 三陸の水産業の復興 http://p.tl/3MC9
(東京学芸大学附属小金井中学校 井谷 由紀)