使える資料を見つけるには・・・

2015-11-18 05:26 | by 村上 |

 本校では、図書館でなんらかの調べる作業が入った授業があるときは、たいていそのための本を別置します。40人の生徒が、しかも4クラス使うので、資料が足りなくて調べられない…ということがないよう、自校の資料はもちろん、公共図書館や同じ附属学校からも借りて対応します。しかし、多ければ生徒が調べられるかといえば、こんどはたくさんの資料の中から、どれが使えるのかを判断しなくてはなりません。

 11月に入り、中3国語で、「奥の細道」の単元に入りました。(このうちの1時間が、本校の研究会で公開授業となりました。) この単元では、図書館を使うことが多いので、ある程度本もそろってきましたが、課題はいつも同じではありません。今年は「『奥の細道』はなぜ読み継がれるのか?」という大きなテーマがあるなかで、そもそも『奥の細道』とはどういう作品かということを、章段からキーワードを抜きだし、再構成していくというのをグループで行っています。資料を読み解きながら、自分なりの考えを導き出す…ことが要求されているのですが、いったいどの本を手にとったらいいか、立ち尽くしている生徒も。そんな時は、中学生向けに平易に書かれている本からまず紹介してみます。

 そもそも、何を調べたらいいのかがわからない…という場面によく遭遇します。どの課題でもこれは同じで、自分の問いを解決するために、どんな情報が必要なのかが見えてこないと、必要な資料にも気づけないのです。
 もう一つの難点は、本から情報を見つけ出すのが面倒臭い…と思ってしまうことでしょう。インターネットにキーワードを入れれば、何かしら使えそうな情報が出てくることに慣れているので、目次や索引を見て必要な箇所を探し出すのは、時間や手間がかかし、適切に読み取ったり要約する能力も求められます。
 今回は、3年生最後の課題レポートということで、自分の論を補強するため、あるいは反論するために、資料の一部から文章を引用する場合のルールを、先生が丁寧に説明をしています。3年間、図書館の資料を使いながら様々な授業をやってきたことの集大成と言えるかもしれません。

 「奥の細道」について書かれた複数の本を読むことは、違う考えを持った複数の専門家と対話することでもあります。一冊一冊味わいの違う本を手にし、ななめ読みであってもページに目を走らせることは、インターネットでキーワードを入れて出てくる情報とは違う感覚が味わえます。
 
 調べていく中で、「『山家集』はありますか?」とか「『後拾遺和歌集』はありますか?」と古典に造詣が深いわけではない司書には、「ちょっと待ってね」 と調べないと回答できない質問から、「平泉の歴史が書いてある本はありますか?」「江戸時代の人たちはどんな旅をしていたのですか?」といったすぐに資料を提供できる質問も出てきます。また、歌枕について調べる生徒がいて、新たに『歌枕辞典』(廣木一人編 東京堂出版)を購入しました。このような授業が図書館で行われると、どのように資料を活用していけばいいのかを実感できるので、探究学習の基礎が学べるのではないかと思います。そして、図書館の蔵書も充実してくるのだと感じます。

附属世田谷中学校 村上恭子

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