令和元年度文部科学省事業報告会

2020-01-09 16:04 | by 井谷(主担) |

令和元年12月21日()に、東京学芸大学構内において、今年度の文部科学省事業報告会が行われました。
(
参加者73名)

「令和元年度文部科学省事業報告会~みんなで使おう! 学校図書館  Vol.11」
日時:令和元年12月21日() 13時~17時
場所:東京学芸大学 西講義棟(W棟)W110教室

なお、この報告会の様子の一部は、2月末まで動画配信を視聴することができます。トップページからお申し込みください。当日配られた資料も、アップできるものは順次アップします。

1.はじめのことば 
東京学芸大学学校図書館運営専門委員会委員長 
古家 眞

 

 お忙しい中、遠くからも来ていただき、ありがとうございます。当委員会は12校園で構成されており、年間を通して活動しています。本日は中学校2校の報告となりますが、小学校や高校でも応用できると思います。また、今年はデータベースたちあげ10周年ということで、のちほどそれについても報告があります。有意義なひと時にしていただきたいです。

2.授業実践報告~学校図書館ガイドラインを踏まえた学校図書館活用 情報活用能力の育成の視点から~

附属小金井中学校
単元「小金井中学校72期生、私の主張発表会」-主体的に情報を活用し、仲間と学び合い、自分の考えを形成する- 司書教諭 数井 千春
 仲間との類似性と自分らしさを求める異質性の間で葛藤している中学生にとって、自分の主張を皆の前で発表するのはむずかしい。そのため12月の発表に向け、4月から様々な単元の中でコミュニケーションや言葉に対する認識への取り組みをしてきた。本単元でも十分な時間を取り、図書館で関連資料を調べたり、お互いに読みあったりして何度も書き直すことで、内容を深めていった。
 その結果、ほぼ全員が真剣な思いで発表することができたと答えている。学習の中で気持ちや行動に変容があった生徒もいた。


附属世田谷中学校
〈図書館力〉をどう生かすか -「で」から「から」の再確認     教諭 渡邉 裕

 今年度は「思考の深まりと学校図書館の充実」を研究実践テーマとして取組んできた。新たな取り組みとしては、教科の学習面での絵本の活用と、「道徳」における図書館の活用可能性を図ることである。また、資料・空間・人材という「図書館力」をどう生かすかという視点で、学校図書館ガイドラインに反照したうえでの提案をしてみたい。
 生徒へのアンケートからは、図書館活用によって「悩む力」が育まれたとの意見もあった。

   731.2.5_20191206_図書館アンケート.pdf


指導・助言   帝京大学教育学部教授  鎌田 和宏氏
 中学生までの読書習慣の形成が不十分といわれているなかで、今回2つの実践報告が中学生だったのはよかった。

<小金井中学校>

 同じであることに同調したい年代の中学生が、異質なものをとりいれたり葛藤したりすることにどのように関わっていくのがよいのか考えさせる実践だった。年間を見通して長いスパンで成長させようとしている指導計画であり、人間形成の一分野を担当している。

 「呼びかければ本を借りるものなんだな」という発言があったが、そもそも中学生に本を読むことを勧めていない教員も多いのではないか。呼びかけていくべきであろう。

 

<世田谷中学校>

 今までとは違ったスタイルで道徳がおこなわれるようになってきている。

 価値観を示していくよさもあれば、リスクもある。リスクを軽減していくように学校図書館を活用していくことも大切なことである。「図書館力」をどう生かすのか。生徒からの感想の分析を今後聞くのが楽しみである。

 「悩む力」を育てる学校図書館、という話があったが、この「悩む力」がキーワードになっていくのではないか。

<最後に>

 学校図書館ガイドライン(7)学校図書館の評価 で、学校全体での実践や評価がどうなっていくのか、というのが今後の課題であろう。


3.
司書部会からの報告
学校司書の研修プログラムの評価指標の検討  

 今年度は学校図書館の現場に必要とされる研修内容だったかを適切にはかることができる「評価指標」について検討した。昨年度までは満足度と適合度の2項目のみであったが、今年度は、「満足度」「適合度」「理解度」「実践度」「難易度」の5項目でアンケートを取った。その結果、参加者の要望と研修内容が一致しているか、より把握しやすくなった。今後はアンケート結果の分析の仕方を学ぶ必要性がある。

録画メッセージでの指導・助言  専修大学文学部教授  野口 武悟氏

 当委員会の研修は学校司書の研修として定着しつつある。一方、5つの評価指標をみると、他に比べて実践度の割合が低い。それは、教職員と協働しなくては、司書ひとりでは実践できないということだろう。そのため、「先生のため」の学校図書館活用研修の実施を今後検討していくと良いのではないか。


 「先生のための授業に役立つ学校図書館活用データベース」の活用 

 データベース10周年ということで、現在の教科別・校種別事例数、10年間の事例数・アクセス数の推移、都道府県別事例・記事提供状況について報告した。また、データベースにかかわりの深い、中山美由紀氏(元附属小金井小学校司書)、今井福司氏(白百合女子大学基礎教育センター 准教授)、橋本健志氏(合資会社 風夢)、ムラタ エイコ氏(デザイン担当)、長谷川 優子氏(埼玉県立久喜図書館)、堀川照代氏(青山学院大学 教授)にデータベース誕生のきっかけや、今後について一言いただいた。

5.これからの学校図書館を考えよう   ファシリテーター  東京学芸大学教授 前田稔氏

 本大学で図書館学が変ってきていることを3点お伝えしたい。
 教員免許の選択科目である「学校図書館入門」の受講者が増えている。
 チーム学校政策に沿った教育支援者の育成の一つとして、前田ゼミでは毎週小金井中学校図書館で活動をしている。
 大学院でも、学校教育と協働するものとして学校司書の働きを学ぶ体制ができつつある。

 その後、前田氏と附属学校教員・司書が中心となって、学校図書館運営専門委員会の始まり、データベースの立ち上げ、事例の充実などの話から、これからの学校図書館について模索したが、少し、時間が足りなかった。

 
 
6.
おわりのことば  東京学芸大学教授  藤井 健志氏

 理想とは、私達がどう進むべきかを示してくれるもの。現実は理想の実現を阻むが、理想自体は阻まない。粘り強く実現に向かって進んでいきましょう。

        (文責 東京学芸大学附属小金井中学校司書 井谷 由紀)


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