附属高校 読書会 三島由紀夫「翼」にむけてのブックトーク

2012-02-01 11:15 | by 岡田(主担) |

附属高校では読書会を開いています。今回の題材は三島由紀夫『翼』です。
読書会が、なお一層深まるように司書がブックトークを行いました。


『決定版 三島由紀夫全集 全42巻 』2002年 新潮社
『翼』は18巻に入っています。三島由紀夫らしい豪華な装丁で生徒が「ワァ〜きれい」と感嘆した作りになっています。他の三島由紀夫作品を読みたい生徒は是非この棚をさがして下さい。いろいろな三島由紀夫にあえると思います。




『世界美術大全集19巻』 1993年 小学館
『翼』の中で大きな象徴となる『天使をみたウイリアム•ブレイク』彼は幼少時に木の梢に天使が鈴なりになっているのを見た事で有名です。実際どのような絵を描いていたか見てみましょう。同世代の画家はゴッホです。全く作風が異なる事がよくわかると思います。世界美術大全集のいいところは、同時代の画家が載っているところです。いかにウイリアム•ブレイクが特異な画家であるかがよく比較できます。
それゆえウイリアム•ブレイクは他の芸術家たちに、多くのインスピレーレーションを与えた画家であり、詩人でもあります。大江健三郎も影響を受けた一人です。


『怖い絵』 中野京子著 2008年 朝日出版社
読書会で皆さんは「翼ってどんなイメージか」を話し合いました。「白鳥のような白いふわっとした感じ」が多かったですが、実はウイリアム•ブレイクはこんな「翼」も描いています。『巨大なレッツド•ドラゴンと日をまとう女』での翼は実に不気味です。竜は東洋では吉祥の意味が有りますが、西洋では神に相対する邪悪な物を表現します。そして、そのインスピレーションはトマス•ハリスのサイコ•サスペンス『レッド•ドラゴン』へつながると紹介されています。天使を見たウイリアム•ブレイクは悪魔も見たのかもしれません。三島由紀夫はどのような「翼」を考えていたのでしょうか。


『レッド•ドラゴン』トマス•ハリス著 2002年 早川文庫
『怖い絵』で中野京子さんが紹介している本です。トマス•ハリスは作品数は少ないですが、すべてが映画化されています。『羊たちの沈黙』『ハンニバル』など見たことのある人も多いと思います。ウイリアム•ブレイクは現代のハリウッド映画にも影響をあたえているということになります。附属高校図書館には文庫がこの他複数有ります。見て下さい。


『文章読本』 三島由紀夫著 1973年 中公文庫 
「『翼』の文章の中には三島由紀夫の好きな物やヒントがいっぱい詰まっていると思う」という意見が出ました。そこで、文中にある『泉鏡花の美しい初版本』という文をヒントに三島由紀夫がどのように文学を考えていたかがわかる本を紹介します。とても親切に書かれてある本です。小説ではない三島由紀夫をどうぞ。



『三島由紀夫の家」篠山紀信 1995年 美術出版社
「三島由紀夫の作品は同じモチーフが頻繁にでてくる」という意見をもとに、では何が好きだったかよくわかる本の紹介です。この本はズバリ!三島由紀夫が生前すんでいた家の写真集です。何に囲まれ、何を選び、何を愛したか視覚的に訴えてきます。さぁー皆さんはこの家に住みたいですか?


『ペルソナ』猪瀬直樹著 1995年 文芸春秋
最後に評伝を紹介します。三島由紀夫は人気のある作家なので、この他にも多数の評伝が有ります。あえて、この本を選んだのは、時代から三島由紀夫を分析している点です。作風、言動、思想で書かれている本が多い中で、切り口が斬新で高校生に理解しやすいと思いました。祖父、父、三島由紀夫と父系3代で論じられているところも高校生の皆さんが、家族を考える上での参考になると思います。

 ブックトークを終えて
三島由紀夫は授業でも取り上げられる作家です。ある一定のイメージを持つ作家の概念を崩せればと思い、行ったブックトークでした。読書会では生徒同士が意見を交換し合い、いろいろな考えが出されました。意識化していなかった考えが表面化して自分自身の考えになる。そんな喜びが読書会にはあります。その現場での生徒の生の言葉を紡ぐ形で、今回のブックトークは選書してみました。積極的に参加した読書会、ブックトークを通して、多面的な角度から本を選び、読んでほしいと考えています。

   学芸大学附属高校図書館司書 岡田和美


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