自分に出来ること (小6へ)
2012-07-08 12:18 | by 中山(主担) |
去年(2011年)に、大きな地震がありました。
その地震は、東北地方でで大津波を起して、大きな被害が出たり
原子力発電所で事故が起きて、その影響もとても大きかったりしました。
その中で あなたたちの生活でも変ったことがあったと思います。
節電しなくちゃいけない、東北の人たちを応援しようとか、
それぞれ 自分に何ができるかなということを
考えるきっかけに なったと思います。
今日は「自分に出来ること」ということで、本を紹介していきます。
最初に紹介するのは、デンマークの島の人のお話です。
そこに住む人たちはもちろん私たちと同じように 電気を使っているのですが、
その電気の使い方について、ちょっと考えた島がありました。
1.『風の島へようこそ くりかえしつかえるエネルギー』 (アラン・ドラモンド作 まつむらゆりこ訳 福音館書店 2012)
「私たちの島へようこそ!…こんな小さな普通の島に今では世界中からたくさんの科学者が島の話を聞きにやってくるようになりました。…帽子を飛ばされないようにね!」 (読み聞かせをしながら紹介する)
海に囲まれた島であるサムス島はいつも強い風が吹いています。ある日,島で使うエネルギーをすべて自分たちで作ってみようという話が持ち上がりました。
子どもたちは、太陽や植物をつかい自分たちに足をつかってエネルギーを生み出すことができる、風ならいくらでもあるじゃないと考えますが、大人たちは乗り気になりません。
ある日、ひどい雨風があって島全体が停電になったとき、風車を持っていた2つの家だけは明かりがついていました。
島を挙げて,夢の実現に向けて動き出します…。
次は,困ったお友達がいた時に、自分たちに出来ることを考えたお話です。
2. 『ピトゥスの動物園』(サバスティア・スリバス著,宇野和美訳,あすなろ書房,2006)
スペインのバルセロナが舞台のお話です。
いつも一緒に遊んでいる仲良し6人組がいます。
しかしこのうち,ピトゥスという少年が重い病気になってしまいます。
病気を治すには遠い国に行かなければなりません。
町内の人が寄付を募って福引をしたり 牧師さんが教会でチャリティーコンサートをしました。しかし足りません。
5人は「ピトゥスのために僕たちに出来ることはないかな?」と考え始めます。
そこで出てきたアイディアが「僕たちで動物園を作ろう!」
やがて町の子どもたちが協力し、それぞれが出来ることで、動物園づくりに乗り出します。
「虎もほしいっていってましたよね…」
さて、いったい、どんな動物が集まってきたのでしょうか。
次は,動物のために自分に出来ることで、一生懸命働いているている野生動物の獣医さんの話です。
3. 『野生動物のお医者さん』(斉藤慶輔著,講談社,2009)
獣医さんといっても、診る動物によってずいぶん違います。
イヌ、ネコ…家で飼っている動物を診る獣医さん
大きな仲間 ウシ・ウマ…家というか家畜で飼っている動物を診る獣医さん
動物園の動物を診る獣医さん
そして 野生の動物を診る獣医さん を入れて獣医さんには大きく4つのタイプがあります。
野生動物のお医者さんが他の獣医さんと大きく違うところがあります。さて、何でしょう?
(聞き手の反応を受けて) そうですね、飼い主がいないのです。ですから、治った後、どうしますか?
野生動物の獣医さんの最終的な使命は傷ついた動物を野生に返すことです。
そして,もうひとつ!
野生動物の獣医さんは病気や怪我をしないように予防することにも力を注いでいます。
なぜ、事故にあったのか、なぜ病気にかかったのかを診察室から外に出て、原因を探ります。
斎藤さんは猛禽類―ハヤブサとかワシといった、たくましい、強い鳥の獣医さんですが、
外に出て、電線のとおっているところや地形をみて原因を追究したり、
鳥の鉛中毒予防のために
猟をする人たちになまりの弾を使わないようにどうしたらわかってもらえるかを考えたりします。
野生動物のために自分ができることを考え実行している方です。
ここまではそれぞれ自分に出来ることを一生懸命やっている人たちの話でしたが,
次に紹介するのは「自分に出来ることなんて何もないわ」と思っている女の子のお話です。
4. 『霧のむこうのふしぎな町』(柏葉幸子著,講談社,2006(新装版))
6年生のリナは、夏休みにお父さんの知り合いのおばあさんのところにたった一人で行くことになりました。
そこで待っていたのはちょっと怖くて冷たいおばあさん。
「お世話になります。」とあいさつすると、「誰が世話するって言ったかね。」と言われてしまいます。
「ここでは自分の食い扶持は自分で働いて稼いでもらうんだよ」
はじめは自分は何も出来ないと思っていたリナでしたが,
おばあさんに言われて、本屋さんに行ったり、おもちゃ屋さんに行ったりします。
やがて少しずつ自分に出来ることを考え,変わり始めます…。
最後に紹介するのは,とても貧しい男の子,モギのお話です。
5. 『モギ ちいさな焼きもの師』(リンダ・スー・パーク著,あすなろ書房,2003)
橋の下でトゥルミおじいさんと暮らしているモギ。 (冒頭を朗読。)
貧しいながらも、気持ちは豊かに暮らしていました。
彼らの住むところは、韓国の磁器、焼き物でとても有名な村でした。
モギは焼き物師ミンの仕事を見るのが好きでした。
ある日、モギはつくりかけの器に魅せられて見ていたところ
「おまえは盗人か」とミンに怒鳴られ、驚いて器を落してしまいます。
出て行けと言われ、
「自分に出来ることは何かありませんか。何でもしますから」といって、
次の日からミンの仕事を手伝うようになります。
モギは薪を燃やしたり、町を集めたり、粘土を洗って濾したりして一所懸命働き、
次第にミンは信頼を持ってくれるようになりました。
ある時、王家に収める器を作る焼物師を探しに来た役人が村に来ました。
ミンは目新しい技術を持つライバルに敗れます。
しかし、役人に次の新しい焼き物ができたら見せてほしいと言われ、
ミンは一生懸命に立派な器をつくって焼きました。
モギはそれを届けに行く役目を引き受けたのです。
壊れないようににワラにくるんで、背負子に入れて行く途中、
おいはぎにあい、焼き物を壊されてしまいます。
モギは、このままではミンに合わせる顔がないと思い、死ぬことも考えましたが、
考え直し、逃げはしませんでした。
自分に出来ることは何かを一所懸命考え、そして行動にうつしたのです。
今日紹介した本は,
自分に出来ること、困った時にそこにいたら何をしたかな?と思いながら読んでみると
また楽しみも増えると思います。
(関東学院小学校 司書教諭 徐 奈美氏)
2012年5月13日、「ブックトークを聞く会」(東京藝術大学)にて、
ブックトークをしていただいた2つのうちの1つです。
(まとめ 大妻女子大学非常勤講師 野口久美子氏
東京学芸大学附属小金井小学校司書 中山美由紀)