Do you have a dream? (小学校高学年,中学生に)
2012-11-18 01:15 | by 中山(主担) |
あなたは夢を持って いますか?
人はそれぞれ、いろいろな夢を持っていると思いますが、
今日はこんな夢をもっていた人もいたということで本を紹介をしてみます。
アメリカ合衆国には「私には夢がある!」 “I have a dream ! ”という言葉から始まる有名な演説をした人がいます。知っていますか?そうです。キング牧師です。彼は人種差別撤廃を訴え、公民権運動をしてノーベル平和賞を贈られた人です。
“I have a dream ! ”で始まるこの演説の中でいう彼の夢は何だったでしょう…。
彼の生涯を有名な言葉とともにコラージュで絵本にしました。
あの(差別の残る)アラバマでさえ白人の少年少女と黒人の少年少女が1つのテーブルをともにすることが彼の夢だったのです。
キング牧師からさかのぼること約100年前,その時も人種差別と闘った大統領がいました。
リンカーン大統領ですね。
「人民の人民による人民のための政治」という有名な演説をした大統領です。平等な民主主義の社会をつくるという夢の実現のために尽くした大統領として有名です。
当時、アメリカ合衆国は黒人奴隷の解放をめぐって南北戦争の戦いがありました。
綿花の栽培など農業をする南部は奴隷制度を擁護し、工業の盛んな北部は奴隷解放を訴え、戦いました。
その時の黒人と白人の少年兵の話がこの絵本です。
傷ついた白人の少年兵セイを、黒人少年兵のピンクが助け出します。
誰もいなくなった農園主の敷地に残っていたピンクの母モウモウベィの介抱で回復する間に、二人はいろいろな身の上の話をします。
ピンクの願いは…
二人が引き離される場面が、表紙にもなっていますが、この手のシーンです。
憧れのリンカーン大統領と握手したセイの手をにぎるピンクの手です。
当時の国民のリンカーン大統領への憧れは、相当なものだったのですね。
彼のトレードマークは、りっぱな「あごひげ」ですが、そのひげをはやすことになったきっかけはなんだったか知ってますか?
さて、次のうちのどれでしょう? (三択クイズ)
1.あごの傷かくし
2.ひげのそりわすれ
3.ファンレターをもらった
正解は 3.ファンレターでお願いされたからなんです。
手紙を出したのは、グレス・ペデールちゃん 11才。
この出来事で「リンカンの小さな女の子」として有名になった彼女の生涯を描いた本がこれです。
ペデールが書いた手紙はこんな手紙でした。 (読みあげる)
これにリンカンはちゃんと返事をかきました。 (読みあげる)
(ひげのないリンカンとひげを蓄えたリンカンの写真を拡大して見せる。)
今も、熱い大統領選の闘いぶりがよくわかりますね。
そしてリンカンは見事に当選。
就任式に向かう途中、ウェスト・フィールド駅でペデ―ルに会い、キスをしてくれるのです。
少女にとって、夢のような出来事になりました。
ペデ―ルはその後、教師となり、アメリカ合衆国の教育に貢献しました。
その生涯がこの1冊になっています。
リンカンは16代大統領ですが、その2代前、14代大統領はフランクリン・ピアスという人でした。ピアスは、もともとアメリカに住んでいたネイティブ・アメリカン(インディアン)たちの土地を買収し、彼らを荒れた奥地へ強制移住させた大統領です。
先祖代々住んできた土地を離れる時、大酋長シアトルは夢というか、願いをこめて演説したとされています。
絵本ではこの2冊があります。
『ブラザー イーグル シスター スカイ 酋長シアトルからのメッセージ』 スーザン・ジェファーズ著 徳岡久生 中西敏夫訳 JULA書房 1996
ネイティブ・アメリカンは、大地や川や風にも、命があるとする自然への考え方を持っていて、日本人と大変よく似ています。
(語りやすい『父は空 母は大地』の方から少し読む。)
白い人(白人)に、どうか私たちが愛したようにこの大地と自然を愛してほしいと夢を託すのです。
(全文はこちら)
しかし、白い人は彼らの聖地ブラックヒルズの中のラシュモア山に1927年から14年かけて4人の大統領の顔を彫らせました。リンカン大統領がそうと知ったら、どう思われたでしょうね。 (写真を見せる。)
(『ネイティヴ・アメリカン―写真で綴る北アメリカ先住民史』 アーリン・ハッシュフィルダ―著 猿谷要 赤尾秀子・小野田和子訳 BL出版 2002 の 写真もいくつか 見せる。)
ブラックヒルズのあるサウスダコダ州はアメリカ合衆国のほぼ中央、カナダ寄りにありますが、そのまま地図で南下すると『オズの魔法使い』で有名なカンザス州があり、その南にテキサス州があります。
このテキサス州には、今も宇宙に憧れる人たちの夢をかなえる都市があります。宇宙に向かってロケットが発射されるNASA(アメリカ航空宇宙局のヒューストンです。
宇宙飛行士になりたいという夢を持つ人は多いと思いますが、
高校時代に夢中になったロケットづくりの夢が高じて、
NASAの技師になった人がいます。その自伝が『ロケット・ボーイズ』です。
1957年、アメリカの上空をソ連の人工衛星スプ―トニクを通ると言うので、ホーマーの住む炭鉱の町は大騒ぎ。夜空に輝くスプートニクを見て、4人の高校生がぼくらもロケットを作ろうと夢を追いかけ始めます。親に反対されたり、失敗して町中の笑いものなったりしますが、努力を重ねて科学フェアにも参加。次第に傾いていく炭鉱の町で、彼らは「ロケットボーイズ」と呼ばれ、夢と希望を与える人気者になっていくのです。
映画化され「遠い空の向こう」といタイトルになっています。
夢を持っている人を追いかけて本を取り上げてみたら、なんだかアメリカの歴史になっていました。
オリンピックのある年は、4年ごとに行われるアメリカ大統領の選挙がある年でもあります。
『朝日学習年鑑 2004』の学習編には、アメリカの歴史上の主な出来事がこのように図解(拡大して見せる)され、アメリカ特集が組まれています。
アメリカンドリームという言葉もあるように、長い歴史のあるヨーロッパから比べれば、身分や家柄、硬直した社会のシステムにとらわれない、様々な可能性がある「自由と平等の国」と言われています。貧しい家に生まれて大統領になったリンカンや、一代で大財閥となったロック・フェラーもいますが、一方で先住民や黒人の差別、移民の問題など、今もひきずる社会課題や困難を持っていることもまた、事実です。だからこそ、それを克服する夢を持とうとするのかもしれませんね。
それでは 今のあなたはなにか夢を持っていますか?
Do you have a dream?
―2004年秋に作成したものを再現しました。―
(東京学芸大学附属小金井小学校司書 中山美由紀)