多様性を知ろう!

2014-09-11 11:22 | by 渡辺(主担) |

    私たちの身の回りにある「違い」や「多様性」。
まず、もっとも身近なことで聞いてみましょう。「あなたは右利きですか?左利きですか?」
クラス全員が右利き、ということはないようですね。
図書委員は20人中、4人が左利きですが、「左利き用のハサミを買ってほしい」と、今頼まれています。
自然界でも、右か?左か?というものがあります。
たとえばカタツムリの殻のうず、つる草の巻き方、豚のしっぽ・・・など、観察の目を向けると興味深い左右の不思議がいっぱい。
こちらの本では、身近にある左右の相違についてさまざまな事例を紹介しています。右利きのように、多数であることで優遇される傾向は生じますが、はたしてそこに優越は生じるのでしょうか?
その詳細については、ぜひこの本を読んでみてください。

▲『右?左?のふしぎ』ヘンリ・ブルンナー 丸善出版 2013年

 
 

 さて、身近に浮かぶ多様性の一つに、「食べ物」があります。世界には、日本人が口にしないような食材がいっぱい!かと思えば、日本人しか好んで口にしない食べ物もあります。
 

この本は、表紙も題名も恐ろしいですが、恐ろしいものほど、のぞいてみたくなるのが、人間の心理。
でも、この本を読むと、人間が地球上でもっとも多様な物を食材として生きていることがよくわかります。
牛の心臓、ネズミ、アヒルの舌、タツノオトシゴ・・・
思わず、魔女が料理する大きな鍋を彷彿させますが、世界の料理と食材の多様性には目をみはるばかりです。
▲『世界で一番恐ろしい食べ物』ニール・セッチフィールド エクスナレッジ 2013年

 
ところで、人類の歴史は戦争の歴史ともいわれますが、現在も世界では紛争が絶えません。
その要因は政治的な問題であったり、民族紛争、宗教の相違、とさまざまです。
書店では、世界の紛争の要因をめぐる、様々な本が出版されていますが、文化の違いを物語の流れとともに、自然と相手を認める心になっていくのが、こちらの本。
主人公のドイツ人の宣教師は、東アフリカの小さな村で、キリスト教の布教のためにやってきました。ところが娘が熱病にかかり、町の病院へ移動するために川を下ります。しかし娘の病状は悪くなる一方。
そんなときに手をさしのべたのは、宣教師が布教の対象としか見なしてこなかった現地の人々。
アフリカの知恵を軽んじ、治療を拒絶してきた宣教師でしたが・・・・
▲『川の上で』ヘルマン・シュルツ 徳間書店 2001

 
 
多様性を理解するために、この国際中等教育学校そのものが一つの多文化社会です。9月からは30名近い帰国生が編入してきました。
一見語学に長けて、日本では経験していないことを多く知っている人に対しては華やかなイメージを持ちますが、一人一人が異文化での差別や無理解、自分のアイデンティティについての悩みなど、多くの困難を乗り越えてきています。
この本で取り上げられている人たちは、現在まざまな分野で活躍していますが、複数の国で生活した経験を持ち、言葉の壁に悩み、親に反発も持ちました。しかし、成長とともに多様な国での経験は、ネガティブなものから、ポジティブな発想へと変化をしていくのです。
▲『私も「移動する子ども」だった』川上郁雄 くろしお出版 2010年

ここでご紹介するのは、一人一人の多様性ではなく、「町」としての多様性にとりくむ事例です。
今、イタリアの小さな町では、「どこに行っても同じ風景」にならないように、均質化と闘う取り組みがなされています。
日本でも、最近は地方へ行っても駅前は全国どこにでもあるチェーン店や見慣れたコンビニがあり、その町独自の風景を保っている個性的な町が減ってきています。イタリアでは、小さな村独自に伝わる産業や、食材、ユニークな地形などを活かし、個性と魅力ある町づくりに取り組んでいます。そのおかげで、今やイタリアの過疎の町々が世界から注目をあびることに!
▲『スローシティ:世界の均質化と闘うイタリアの小さな町』島村菜津著 光文社 2013年

”多様性というのは、さまざまな彩り豊かな可能性を大いに含んでいる” ということを、このイタリアの小さな村人たちの取り組みは物語っていました。
ぜひ、皆さんもまずは身近な多様性を認め合うことから豊かさを感じとってみてください。
(東京学芸大学附属国際中等教育学校:渡辺 有理子)

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