「なんでもない石から広がる」 (卒業間近の小6へ)

2014-03-07 22:36 | by 中山(主担) |

 日本子どもの本研究会 西條 明子

 

 この石は道端に落ちていた小石ですが色と形が気に入って、私の机の中で長い間眠っていました。
他人にはつまらない石でも自分にとって大切な石があります。

1.『ときめきのへや』 セルジオ・ルッツイア著 福本由美子訳 講談社 2013

 「ピウス・ペローシはモリネズミでした。モリネズミはものを集めるのがすきでした。もりのなかをくまなくあるいてピウスがみつけたものは、ねじれたねっこにおもしろいかたちのこえだ、はっぱやとりのはねでした。」

 そうやって持ち帰ったものを部屋に飾り、棚は、一番広い部屋にずらっと並んでいました。
 この素晴らしい宝物をみせてもらおうと、あちこちからいろんなひとがやってきました。 ピウスは聞かれるままにあれやこれやをどうやって見つけたのかを話してやりました。
 でも、ひとつだけ誰もが首をかしげるものが立派なガラスケースに入った『石ころ』だったのです。

 ピウスはその石ころを捨ててしまうのですが、それを捨ててしまうと、集めていたすべてがつまらないものに思えて集めていたもの全てを捨ててしまいます。
 ところが、ピウスは帰りには何も拾いたいものがなくなります。
 まる三日間家にこもっていたピウスに元気を取り戻させたのは?

*2014.10.9の朝日新聞で「僕の宝物、実は青銅鏡」という記事を見つけ、気になってとってありました。公園で拾ってしまっておいた模様入りの金属片が重要文化財の青銅鏡の一部では、と社会科の授業で気づいて調べたら本物だったという話です。私は小学生のころ化石集めに凝っていて、いろいろ石の小さなかけらを拾ってきては家で洗って楽しんでいたことがあったのです。

 次の本は、学校嫌いで一人で海辺を歩いて石を拾うのが好きだったメアリーの話です。

2.『海辺の宝もの』 ヘレン・ブッシュ著 鳥見真生訳 あすなろ書房 2012年

 

 「変わり石」とは、元の形がよくわかるヒトデや貝、何本もの枝に花をつけたウミユリ、とぐろを巻いた蛇みたいなアンモナイトの石です。
 「こういうものは全部、もともとは生きていて海にすんでいたんだ。どれくらい昔か誰にもわからない。それなのに今では魔法にかけられたようにみんな、石に変わっているんだよ。」おとうさんは教えてくれます。
 お母さんは大反対ですが、お父さんは、メアリーとお兄さんを連れて海岸へ「変わり石」を取りに行き、それを売るとお金になることを教えてくれます。体が悪かったお父さんは、メアリーたちに「変わり石あつめ」を引き継げるよう教えていたらしいのです。
 石を洗うメアリーを見て近所の子どもたちは「石っこ、石っこ、石娘」などとはやし立てますが、メアリーは平気です。
 学校へ行って裁縫や、編み物ばかり教えられるより、新しい変わり石を見つけて、ここに閉じ込められた生き物はいつごろどうやって生きていたんだろう、どうやって石になったのだろうなどと考えるほうが面白かったのです。
 変わり石を取りに行って、それを洗いピカピカに磨いて家の前のテーブルにきれいに並べておくと、避暑に来たお金持ちの人たちが買っていってくれます。

(ここに私のアンモナイトの化石があります。半分に切って断面を見せたほうが美しく、高く売れると兄弟で一生懸命切る場面があるのですが、断面の美しさには心を奪われます。回すので見てください。)


 ある時、ロンドンの大英博物館の科学者がメアリーのお店に来て、中にあるたくさんの化石にびっくりして「変わり石」は『化石』とよぶこと、メアリーの集めた化石が科学者のお手伝いになることを教えてくれます。

 ますます化石探しに熱中したメアリーは、ワニの背骨といわれていたものの体全体のわかる化石を発見して連絡します。

 大英博物館の先生は、「この動物には新しい名前を付けるつもりだ。すごいはっけんだよ。1811年、12歳の少女によって発見されたと発表するつもりだ。」と連絡してきます。
それは「イクチオサウルス」。知っている人も多いでしょう。
 日本が江戸時代のころのイギリスに実際にいた人物の子どものころのお話です。

 化石も石ですが、石と一口に言ってもいろいろあります。この本を見ると、その世界の美しさに見とれてしまいます。

 

3.『鉱物・岩石の世界 地球からのメッセージ』青木正博 誠文堂新光社

 

 「はじめに」のところで、「地球ができたのは約46億年前。人間の歴史を書物で紐解くといってもせいぜい4000年。鉱物・岩石を作る元素は、はるかに大きな時間の流れの中で地表から地下へ、固体から液体へ、液体から固体やガスへと姿を変えながら循環を続けています。その途中で、様々な石の姿で私たちの前に現れるのです。」と言っています。結晶の美しさは宝石として人々に愛されています。(誕生石)
 宝石や飾り物にするだけでなく、石は私たちの生活の色々な役に立っています。パソコンや携帯に「レアアース」と呼ばれる貴重な石たちが使われていることもよく知られていますね。
 この本を書いた青木さんは、小学生のころ鉱物の魅力にはまってずっと研究している人だそうです。
 採集のための土具や装備についても触れて、ぜひ本物を見てほしいと言っています。

 

 鉱物の中でも水晶は皆さんよく知っているでしょう。水晶のことを「氷石」ともいうんだそうです。

4.『氷石』 久保田香里著    くもん出版 2008年

 時は天平9年、奈良時代天然痘が平城京で大流行し人々が次々と死に、対策の取りようもない状況でした。天然痘の病は、帰国した遣唐使たちが感染して日本に入ったといわれています。

 父親が遣唐使として中国にわたり帰ってこない間に母を流行り病で亡くした千広(ちひろ)は、父親が学問を大切にし、自分たち親子を見捨てたと思い学問の道を拒み、大学寮で学ぶ八尋や叔父の援助も断り、河原からきれいそうな小石を拾って磨いては『霊験あらたかな石』といつわって売り暮らしの足しにしていました。
 ところが、インチキとわかっていながら石を買い、『氷石』といって大切にして千広にたびたび会いにくる女の子、宿奈(すくな)に出会います。
彼女のお父さんは遣唐船の船乗りをさせられ、流行り病でなくなっていたのです。
石の代わりに「まじないのお札」を売ろうと思いついた千広に宿奈は施薬院の入り口にかかっている呪詛木札を見に行かせ、
千広は、木簡に墨で門にかけてある漢文を写して売ることにします。
慕っていたいとこの八尋が流行り病でなくなり、宿奈もかかってしまいます。

二人の行く末と千広の学問への拒絶がどう変わっていくかは読んでみてください。

 

 マッチ箱に残した黒い小さな石が語るお話です。

 

5.『マッチ箱日記』 ポール・フライシュマン/文 バグラム・イバトゥーリン/絵 BL出版 2013年

 

 ひいおじいさんが孫にマッチ箱を開けさせ、その思い出を語ってお話が展開します。
 マッチ箱には字が書けなかったひいおじいさんの思い出が詰まっているのです。
 おなかがすいたときにお母さんからもらったオリーブの種。
 アメリカに出稼ぎに行ったお父さんを忘れないように送ってきたお父さんの写真。
 日照りで小麦が作れずマカロニも食べられなかったときお父さんが送ってくれたアメリカ行きの切符。
 お父さんを追ってイタリアからアメリカに来たけれど、アメリカでの暮らしも厳しいものでした。
 黒い小さい石のかけらが入ったマッチ箱は、おじいさんが8歳のころ石炭のかけらでみよう見真似で字を書いていたもの。
 母さんが「この子を学校へ行かせるべきだ」とお父さんに言ってくれ、何週間も言い争った末、学校へ行かせてもらえることになった思い出の石です。
 ひいおじいさんは学校へ行き文字を習い、印刷工になります。
 そして、さらに、おじいさんは、何の仕事を始めるでしょう。

 

6.『ぼくたちはなぜ、学校へ行くのかーマララ・ユスフザイさんの国連演説から考える』石井光太 ポプラ社 2013年

 学校へ行くということは日本では当たり前のことです。
けれども、学校へ行きたい、教育を受ける権利があると主張したために、銃で撃たれ、奇跡的に助かったマララさんという少女がいます。

 昔ではありません。2012109日のことです。
 マララさんの国、パキスタンでは、女子の教育を禁止したのです。

 教師の家に育ったマララさんは、11歳のころから匿名でブログを使って世界に『すべての子どもたちに教育を受ける権利がある』と発信していました。
 それを潰そうとした人たちがマララさんの頭を銃で何発も撃ったのです。

 でも、マララさんは手術によって奇跡的に助かり、
2013年、16歳の誕生日にニューヨークの国連総会会議場で演説しました。
 石井光太さんはマララさんの演説を聞き、
 日本の君たちに『なぜ学校に行くのかを考えてもらいたいと書いた本です。

 一緒に読んでみましょう。



 このブックトークは、2014年2月6日東京都品川区立台場小学校にて、
また3月1日 の本子どもの本研究会主催 こどもの本の学校多摩校にて
、披露されたブックトークです。


 リストは以下の添付ファイルをご覧ください。児童に配布したものです。
 アンケートになっており、ブックトーク終了後5分ほどで書いてもらい、集計して、
すぐに担任教諭に渡し、本人に戻します。

 児童サービスとは違い、教育課程の中のブックトークですので、

 1).児童にもブックトークをふりかえってもらいたい。
 2).教員には子どもの反応を知ってほしい。
   読もうと思って読めなかった子の反応などに気をつけてほしい。

 と、いう願いから台場小学校では、事後のふりかえりが定着しています。

 
2014年2月6年生へのブックトーク.docx

日本子どもの本研究会 西條 明子

 ―編集より 関連図書の案内―
 
絵本 『化石をみつけた少女 メアリー・アニング物語』 キャサリン・ブライトン著 せなあいこ訳 評論社 2001年 
 『武器より一冊の本をください 少女マララ・ユスフザイの祈り』 ヴィヴィアナ・マッツツァ著 横山千里訳 金の星社 2013年 

 

 

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