ちょうど100年前には
2014-10-14 15:20 | by 井谷(主担) |
さて、その1914年に東京では、ある大事業が完成していました。
完全保存版! 東京駅
宝島社(2013/04/12)
値段:¥ 1,404
計画案が提出されてから実に20年近くの月日をかけ、日本の中心とも言える東京駅が完成したのです。当時の日本は、日露戦争で大国ロシアを破り、列強と肩を並べようと近代化を急いでいました。後に青森までのびる東北本線の起点上野駅と、東海道線の起点新橋駅を結び、又、皇居の目の前である現在の場所に、国の威信をかけた壮大な駅が作られました。ドイツ人設計士の後を引きついだ辰野金吾博士は、左右に二つのドームを有する、3階建ての赤煉瓦の駅を完成。それは、当時世界でも最大級の大きさでした。関東大震災にも崩れない強固な物でしたが、第2次世界大戦の空襲で焼かれ、戦後は長く2階建てとして使用されていました。しかし、100周年を前に元の形に復元する計画がだされ、2年前の2012年10月に完成。その時にはずいぶん大きく取り上げられましたから、覚えている人も多いでしょう。この本では、美しい駅の姿をたくさんの写真で隅々まで見ることができます。
宝塚(ヅカ)読本 (文春文庫)
中本 千晶
文藝春秋(2009/09/04)
値段:¥ 607
関東で東京駅が完成した頃、関西では、今の宝塚歌劇団の前身である「宝塚少女歌劇養成会」が第1回公演を行っていました。阪急電鉄の経営者が、温泉施設の余興としてなにか人を呼べる物を作りたいと始めた少女歌劇は、やがて、関西ばかりか日本中にファンを持つ一大エンターティンメントに成長していきます。女性だけで構成される400名もの団員は、5つの組(花・月・星・雪・宙)に分かれて、歌や芝居、ダンスいっぱいのミュージカルを一年を通して演じています。トップ男役を頂点としたピラミッド型の組織や、どんな悲劇も最後は必ず楽しい歌と踊りで華やかに終わる宝塚ならではの構成など、この本を読むとよくわかりますよ。
写真が語る第一次世界大戦 (「知」のビジュアル百科 (16))
サイモン・アダムズ, 猪口 邦子
あすなろ書房(2005/04)
値段:¥ 2,700
一方その頃ヨーロッパでは、列強諸国が互いの勢力を伸ばそうと、それぞれ軍事同盟を結び、緊張状態にありました。1914年6月、オーストリア・ハンガリー皇太子夫妻がボスニアで暗殺されたことを発端として、やがて両国の争いはヨーロッパ中を巻き込む第1次世界大戦へと発展していきました。 4年も続いたこの戦いでは、大砲、艦船、そして飛行機というこれまでにない技術の発達により、今までとは比べ物にならないほど多くの犠牲者を出しました。兵士ばかりか一般市民の死者も多く、町や村が地図上から消え、ヨーロッパの経済は破綻し、戦争が終結したあともその影響を残す大変な戦いとなったのです。
皇妃エリザベート―ハプスブルクの美神 (知の再発見双書)
カトリーヌ クレマン
創元社(1997/02)
値段:¥ 1,728
その大戦の発端となったオーストリア・ハンガリー皇太子は、長い間ヨーロッパに君臨したハプスブルク家出身でした。19世紀の終わり、そのオーストリアハプスブルク帝国の皇后として生きた、エリザベートという大変に美しい女性が居ました。もともと姉のお見合い相手だった皇帝に一目惚れされたエリザベートは、その美しさ故、国民から絶大な人気を得ながらも、窮屈な宮廷生活に苦しめられます。愛する息子の自殺、自由を求めるさすらいの旅、そして最後に無政府主義者に暗殺されたエリザベートの悲劇的な生涯は、その後何度も映像化されました。やがて、ウィーンで生まれたミュージカル『エリザベート』は、1996年には日本で初めて宝塚で上演され、その後『ベルサイユのばら』に次ぐ宝塚の人気演目としてたびたび上 演されるようになりました。なんと、ちょうど今も東京宝塚劇場では、花組が『エリザベート』を公演している最中なのです。
落語を聞きによく寄席に出かけたという漱石先生。もし今の東京で暮らしていたら、宝塚も見に行っていたかもしれませんね。
(東京学芸大学附属小金井中学校 司書 井谷 由紀)