日本史資料探し

2017-06-01 09:41 | by 渡辺(主担) |

 日本史の先生から、中2の図書館活用授業の前に、「目次・索引」についてのおさらいを含めて資料の活用のしかたについて少し話をしてほしい、という依頼がありました。そこで、ブックトークで「平安時代の平城京暮らし」を事例にしながら紹介をおこないました。

1.『ポプラディア情報館 日本の歴史1』(ポプラ社 2009年)
司書「平城京の暮らしを調べるために、さらにテーマを絞りたい。でも漠然としていて何を調べたらよいのかわからないときには、まずは百科事典を。本の資料を使うときには、全体に何が書いてあるのかを把握するためにはどこを見ますか?」と尋ねると、
生徒「目次~!」
 さすがに、中学生は「目次」については知っていることを確認。
司書「平安時代の項目の中に、特集ページ「木簡」を発見しました。「木簡」は、当時のことを知ることのできる、貴重な資料だと書いてあります。多くが井戸の底やごみための跡から発見されているようです。木簡についてもっと調べたら、当時の暮らしが見えてきそうですね。でも、木簡ってそもそもどんなものなのでしょう?」

そこで・・・


2.『歴史ビジュアル 実物大図鑑』(山下裕二監修・ポプラ社2010年)
司書「今度は、調べたいキーワードは「木簡」と定まっています。そういうときは「目次」ではなく、百科事典のどこをみるといいのでしょう?」

生徒「・・・索引~!」
司書「そうですね、皆さんが目次も索引も覚えていて、小学校の司書さんたちはきっと安心しますよ。さて、索引は本の後ろに五十音順に並んでいます。今調べたいのは「木簡」なので、まみむめももも・・・ありました。もっかん50ページ!。実物はこんな感じです。確かに表面に文字が書いてあります。紙の代わりに表面を削って何度も使えたようです。でもどんな人が、どういう時に使っていたのかまでは詳しく書かれていません。では、もっと別の資料にあたってみましょう!」

3.『平城京のごみ図鑑』(奈良文化財研究所 河出書房新社 2016年)
司書「先ほど、ポプラディアの事典で〝木簡は井戸の底やごみためから多く見つかった”と書いてありましたね。この本は「ごみ図鑑」という題名なので、もしかしたらごみに木簡が含まれているのではないか、と想像力を働かせてみます。目次をみてみると・・・第3章に「木簡は奈良時代からの手紙」と書いてあるのを発見!
資料を探すときには、探しているキーワードが必ずしも本の題名には含まれていないことは多々あります。この本の題名にも木簡というキーワードは含まれていませんね。館内の資料検索機で木簡で調べただけでは、この資料には出会えなかったということになります。検索機でゼロとでても、関連書架を見に行くことはとても大事です」

4.『地下から出土した文字』(鐘江宏之 山川出版 2007年)
司書「さらに他の資料も探してみましょう。タイトルに木簡とついている資料はほとんどありませんので、他の資料を眺めてみると・・・この本はどうでしょう?木簡は表面に文字を書いて使われていたので、題名にある”出土した文字”というのは、木簡のことでは?とまた想像力を働かせます。本の資料を活用するときにとても重要なポイントは、その資料が今の時点で活用する価値があるか判断をすることです。あまりに専門的すぎる場合は、もう少しあとで活用するほうがよいでしょう。この資料は今日のところは少々難しいようです。でもこういう資料があることは、参考文献メモシートに記録しておくといいですね」

 このあと、最新の「木簡」の発掘情報を知るために、新聞の過去記事検索の利用についてを紹介し、新聞記事のようにメディアセンターで印刷ができること、さらに本格的に調べたい人は、論文記事を検索し、ネットで公開されていない論文記事は複写サービスを利用して取り寄せられることも伝えました。
この授業に限らず、他の授業や課題研究で資料を探す際にも応用させてほしいものです。
(東京学芸大学附属国際中等教育学校:渡邊 有理子)


次の記事 前の記事 [ 71 72 73 74 75 76 77 78 79 80 ]