『学校図書館をハックする:学びのハブになるための10の方法』

2021-05-04 09:16 | by 村上 |

 2月に主催した『読めるのに読まないイマドキの若者たち』について考える学習会では、講師のお一人、自由の森学園司書、大江輝行さんと事前に打ち合わせをした際に、私が、「いろいろな働きかけをしたにもかかわらず読まない若者たちについて考えたい」と発言すると、「いろいろな働きかけとはどんなことですか?」と質問された。それはずっと私の心に引っかかっていた。自分なりに何かしらの働きかけはしているつもりではあったが、それが「いろいろな働きかけをした」にもかかわらず、とはたして言い切れるのだろうか?そんなモヤモヤを抱えた時にちょうど発売されたのが、この本『学校図書館をハックする』クリスティーナ・A.ホルズワイス、ストーニー・エヴァンス共著 松田ユリ子・桑田てるみ・吉田新一郎訳 だった。

 ハックする…とはちょっと聞きなれない言葉。ハック=テクニックやコツ、小ワザを指す名詞とある。つまりはそれらを総動員してあの手この手でやってみる…ということらしい。早速読んでみると、学校図書館でできそうなことがこれでもか、というぐらいあげられている。なので、これはすでにやっている、これならできそう、これはやってみたいけれどハードル高そう、これはやる気がしないなぁ…と勝手にツッコミをいれながら読むことができる。

 
 そして、気がつくのは、まだまだやれることがたくさんあることと、一人で頑張らなくてもいいということ。ちょっと仕事がマンネリ化していたり、なかなか利用が伸びないことに悩んでいたら、この本を手にとってみてほしい。

 翻訳をされた神奈川県立高校司書の松田ユリ子さんが学校図書館問題研究会発行の機関紙で、この本で読書会をススメていた。確かに、一人で読むより、みんなで読むと、さらにアイデアが浮かびそう!

 同じく一緒に翻訳された国士館大学教授の桑田てるみさんにもひとことコメントをお願いしたところ、以下のようなお返事をいただいた。
「学校図書館の秘めた可能性が明らかになった書だと思うので、どんどんまねして実践してほしいです。悩んでいることは先進的と思われているアメリカでも同じですよね。」

 たとえば、ハック8は、「学校図書館の重要性を主張しよう」です。利用者にとっての価値をきちんと言葉で伝えられるか…が問われるわけです。ハック9は「グローバルなつながりをつくる」、ハック10は、「いつでもどこでも読むことを称える」。「本を読まない子や本が嫌いな子が存在するとは思っていません。まだ読むことにつながっていない子が存在するだけです。」という著者の熱い思いが伝わり、まずは自分にも楽しくできそうなことからやってみたくなる本です。

 


 (東京学芸大学附属世田谷中学校 村上恭子)

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