共通言語を持つこと、背景を知ること
2025-12-10 21:44 | by 富澤 |
2022年8月に、国際バカロレア(IB)認定校となった本校。2018年から勤務している司書は、認定に至る後半数年からの変化を見てきたことになります。「IB校になる前と後で、何が一体変わったのか?」と言えば、普段の仕事に大きな変化があった、という実感はあまりなかったのですが、つい先日「探究」単元の調べ物に来ていた6年生との会話の中で「そう言えば、これは変化だな」と思うことがありました。
その6年生の子は、「宝くじに関する本はありますか?」と来館したのですが、当然のことながら、なぜ「宝くじ」に注目して調べようとしたのかを捉える必要があります。「探究」での調べ学習だと確認できた場合、認定以来、司書が繰り出す定番の質問は、「今やってる探究の“セントラルアイディア”は何か教えてくれる?」です。
「セントラルアイディア(中心的アイディア)」というのは、IBの資料の言葉を借りれば、「中立的な声(voice)で書かれた幅広く全体的な概念的文言のことで、探究を促し、「教科の枠をこえたテーマ」を反映している」と難しくなりますが、探究単元に枠組みをもたらすとともに、探究単元を方向づける表明文のことで、二つ以上の概念の間の関係性の説明となっています。
例えば、今回質問に来た6年生が取り組む単元のセントラルアイディア(以下CI)は「科学的な分析と検証は、可能性を高める」だと確認できました。この文言と本人の説明から、その6年生が求めている情報が、「宝くじの歴史」でも「宝くじの種類」でも「ギャンブルがもたらす影響」でもなく、「宝くじ」の仕組みを知って、それを科学的に捉えなおすことで、どうしたら、宝くじで得をする可能性が高められるか、ということだと分かりました。
「宝くじ」というものを捉えるために、一先ずポプラディアの記述を確認して、いくつか現在日本で販売されている「宝くじ」には種類があることが分かっていましたので、季節柄もあり「年末ジャンボ宝くじ」に的を絞ることに話はきまりました。「それならば、その仕組みを一番きちんと押さえられるのは、公式サイトだね」ということで、2人で公式サイトの情報を確認し、その子は「これが分かったから、先に進めそう」と教室に帰っていきました。

改めて振り返ってみると、CIという共通言語を通して、より単刀直入に得たい情報の確信に迫ることができた手ごたえがありました。また、こういった、概念的な枠組みのある探究的な学びが、IBのカリキュラムの特徴の一つであり、CIをはじめとした重要な用語は、1年生から6年生まで、校内の全員が共通して、ある特定の文脈で日々使用する、という特殊な環境ができあがっていることも、感じさせられたできごとでした。
校内研究に司書が参加することが当たり前になり、各学年の探究単元づくりの話し合いに司書が参加することも歓迎される雰囲気になったおかげで、各探究単元の背景も先生方と共有しやすくなり、子どもたちとのやり取りにも、それは自ずと反映されるようになってきています。まだまだ、それらを活かした独自のアプローチはおろか、支援そのものも十二分にできているとは言い難いのですが、枠組みがはっきりとあり、それをお互いが理解しているという信頼感がもたらす効果について、もう少し言語化できるように意識を向けていこうと思います。
(東京学芸大学附属大泉小学校 司書 富澤佳恵子)