探究学習 テーマ理解の自覚

2026-04-08 12:02 | by 岡田 |

 探究学習で、生徒が「昔の日本食をテーマにして高校生が自分で調理できる和食を最終的に紹介したいと思います。」とカウンターに相談にきました。そこで「日本食の定義はどのように把握してますか」と質問しますと、「郷土食とか地方の食材も考えています」と質問と回答がたびたび食い違います。探究学習にありがちな事ですが、テーマを自分で探し出す事が往々にして探したテーマを自分自身で理解できていないことに無自覚になってしまう事があります。その点をはっきりと生徒に伝えるべきか迷いましたが、今回は司書としてしばらく待つことにしてみました。自分で「テーマ理解の甘さ」に気が付いた方が今後の研究活動に役立つと考えたからです。自覚を促すには的確な資料の提示が有効です。生徒の話すキーワードを一緒に盛り上げながら館内を回って、資料の提供を次々にしてみました。「昔の人は食事ってどんな風にしていたのかな」の質問には『日本の食文化1~8』2018年 吉川弘文館を一緒に見ました。

 「日本の食文化1~8』2018年 小川直之 吉川弘文館 ISBN978-4-642-06836-9

 この本の推薦理由は日本食をきちんと定義づけたうえで日本人が食べてきた食物を過去から現代につなげている点です。最後の項目にはファストフードとしてハンバーガーと江戸時代の天ぷらが並びます。探究テーマの「昔と自分たちをつなぎたい」との共通点を生徒と話し合える内容となっています。

『日本の食文化史』2015年 石毛直道 岩波書店 ISBN978-4-00-061088-9

 こちらの本は文化史ですので、旧石器時代の稲作以前から日本の食文化が提示されています。縄文~現代など、時代ごとに食文化が異なることが分かる資料を提示し、どの時代を取り上げたいのか生徒自身が考えられるように促しました。近代の日本食として教科書にも出てくる明治時代の牛鍋や食品産業としてのラーメンなども取り上げられ、日本食の定義を幅広く具体的に示しています。このあたりから生徒の「日本食・和食」の定義が揺らぎ始めます。「和食って江戸時代な感じがする・・」「ラーメンやライスカレーは調べたい内容ではない」とテーマの方向性がぼんやり見えてきたようです。

                                      

『巨大都市江戸が和食をつくった』 『日本料理とは何か』    『江戸時代館』

 何回か探究学習で図書館を活用した後で、ついに「日本食って何だろう?そこが分からないと探究学習が進まない」と本質的な内容に生徒自身が突き当たりました。そこで参考図書の活用となります。辞典には学術的に日本食・和食の定義がわかりやすくしっかりと明記されています。テーマの定義を明確に把握し、自分は何を目的に発表し、探究の範囲をどことするのかを提示することはとても重要です。

『家政学辞典』1990年 朝倉書店 ISBN4-254-60006-2

 最終段階の「江戸時代の料理からどんな献立を選ぼうか」との問いにはブックリストを提供し、生徒自身のリクエストをもとに選書を行いました。今までの資料が専門的なものばかりだったので、レシピが楽しくて高校生が手に取りやすい本の購入となりました。

『お江戸ごはん献立帖』2021年 福田浩 ボビージャパン ISBN8-4-7986-2617-8

 以前なら先ず最初に参考図書を活用し、大きく内容を把握してから学習を始めていました。探究学習でそれを一律に行うとテーマに対して張り切っている生徒のモチベーションが下がってしまうことがあります。せっかく生徒自身が見つけきたテーマに対して大切に扱う配慮が司書として必要になります。1.生徒が授業で継続的に学校図書館を活用すること  2.どんな生徒か司書が理解している点   3.担当教官と相談しながら指導できている事などは、学校図書館のレファレンスの強みだと思います。ここを乗り切ればあとは継続して支援を行えばゴールは見えてきます。生徒には自分でテーマを見つける喜びと探究する楽しみを学校図書館で学んでほしいと思いながら指導しています。

               (東京学芸大学附属高等学校図書館 司書 岡田和美)

 

 


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