知らない音楽を知りたい
2025-11-04 11:34 | by 岡田 |
生徒が「私が知らない音楽ありますか」とカウンターに訪ねて来ました。音楽の授業で各自が今まで知らなかった音楽を生徒間で紹介しあうとのことです。まず先にどんな「知らない」音楽があるかを「知らない」と先に進みません。このような時にこそ、生徒の理解を深めるために現物の資料としての本が目の前にある学校図書館の出番です。そこで音楽の本棚を直接見せることにします。学校図書館は日本十進分類法によって資料が分けられています。この分類は知らないことに対してへの知識を明確にする働きかけがあります。そこで司書の机の上にある日本十進分類法の本を片手に生徒と一緒に本棚を追いかけてみることにしました。

761には和音、メロディーなど音楽学があり、好きな和音やメロディーでイメージをふくらませてみます。762は時代や国によっての音楽です。クラシック音楽と一括りにはできない時代での音楽の編成を意識してもらいました。国による音楽の違いや固有の民族音楽を探すのも面白そうです。763は楽器です。どんな楽器が好きか尋ねますとバイオリンとのことでした。中学生の時に受験でバイオリンはやめてしまったことや今はダンスをしていることなど生徒との会話も弾みます。こんな風に生徒と会話をふくらませていけるのが学校図書館レファレンスサービスの強みだと日頃から思っています。
798は邦楽です。行事で鑑賞した歌舞伎にもお囃子や三味線などの有名な音楽があることを伝えますと生徒の好きなダンス音楽とイメージが重なってきました。「詩にも興味があります」とのことでしたのでボブ・ディランを紹介してみました。2016年に歌手で初めてノーベル文学賞を受賞し映画化されていることも伝えました。ボブ・ディランの本は音楽の棚と文学の棚に配置されていますので両方の資料を見比べます。「ボブ・ディランは名前だけしか知らないので調べてみたいと思います」と音楽と文学とその時代にも興味を持ってくれました。ここまでくれば後はYouTubeやSNSで音楽を多様的に探すことができます。いきなりSNSで検索しますと同じ音楽の羅列になり教員の意図する「知らない音楽に積極的に挑む」が達成されません。実はこの授業内容は教員から事前に相談を受けていました。その方がずっと授業でのレファレンスは充実したものになります。生徒へのレファレンスも教員との日頃の協働から生まれてきます。
(東京学芸大学附属高等学校 岡田和美)