数学の難問・未解決問題を知りたい

2026-10-02 11:08 | by 中村 |

 時々お薦めの本を尋ねてくる生徒がいます。先日『永遠についての証明』(岩井圭也著 KADOKAWA 2018年 ISBN:978-4-04-107219-6)を手渡したところ、面白く読んでくれたそうで、次いでこんな質問がありました。

 「数学の未解決問題について書かれた本を読みたい。」

 『永遠についての証明』は、孤独な若き天才数学者が遺した研究ノートが登場します。そこに未解決問題《コラッツ予想》の証明と思われる記述を発見したかつての仲間が、その証明を辿ることで亡き友の心と向き合っていく物語で、昨年ドラマ化もされました。
 先述の生徒は「数学が得意というわけではないが嫌いでもない」とのことで、難問・未解決問題の内容まで深く理解したい訳ではないと言います。ただ、全く知らない世界の一端に触れて心が動き、現代でも解決されていない数学上の問題にはどのようなものがあるのか、それが解決されるとどんなことが起こりうるのか、その問題に挑んできた数学者たちはどんな人生を歩んだのか・・・そんなことを知りたいと思ったそうです。

 今回は、数学の難問・未解決問題について概要をざっくり知るための本をはじめ、数学の世界を興味深い視点から深掘りしてその魅力を伝える本、難問に挑んだ数学者の数奇な人生を描いた本や映像資料、そして数学がテーマの中高生でも読みやすい読み物の本を案内しました。

『笑わない数学』NHK「笑わない数学」制作班 KADOKAWA 2023年 ISBN:9784046064301
 数学とは無縁の某お笑い芸人がMCとなり、難解な数学の世界を大真面目に解説する異色の知的エンターテイメント番組として、数学ファンのみならず、幅広い年齢や立場の人々に受け入れられたNHKの人気番組「笑わない数学」。それを再構成し、番組では触れられなかった内容も盛り込んで、全ページフルカラーで紙面を見やすく構成し、番組視聴者から好評を博した番組オリジナルCGを多数収録して書籍化した1冊。専門に学ぶ人以外ではたぶん触れる機会もないであろう、数学の深淵を垣間見せてくれます。

『素数って偏ってるの?—ABC予想、コラッツ予想、深リーマン予想—』
 小山 信也 (著) 長原 佑愛 (イラスト) 矢吹 ゆい(構成協力) 技術評論社 2023年 ISBN:9784297137618
 前述の人気番組『笑わない数学』を監修した小山氏が書いた本で、『永遠についての証明』に登場するコラッツ予想についても記述があります。内容は結構本格的で、中学生が理解するのは難しいかもしれませんが、先生と生徒との対話形式で書かれ、スラスラ読み進められます。

 ランダムなはずなのに偏りがある素数、それが私たちの日常とどう関わってくるのか。奥深い素数の世界を堪能できる1冊です。


『フェルマーの最終定理』サイモン・シン(著) 青木薫 (訳) 新潮社 2006年 ISBN:9784102159712
 17世紀、ひとりの数学者が残した謎に満ちた書き込み――「私はこの命題の真に驚くべき証明をもっているが、余白が狭すぎるのでここに記すことはできない」。以降、3世紀以上誰にも解けなかった数学界の超難問「フェルマーの最終定理」は、1995年、アンドリュー・ワイルズによって完全に証明されました。
 古代ギリシアから長い時間をかけて受け継がれてきた数学者たちの知識と情熱・苦悩のドラマは、一つの真理を追究する人間の尊さを私たちに教えてくれます。


『ポアンカレ予想・100年の格闘—数学者はキノコ狩りの夢を見る―』NHK(制作・著作) NHKエンタープライズ(発行・販売) 2010年
 こちらは映像資料です。2007年10月1日 NHK BS-hiにて放送された番組で、この映像資料(DVD)のほか、NHKオンデマンド等でも視聴することができます。
 宇宙の形の解明につながるといわれる数学の難問「ポアンカレ予想」が、近年、ロシアの天才数学者グリゴリ・ペレルマン博士によって証明されました。しかし、博士は数学のノーベル賞と言われるフィールズ賞の受賞を辞退し、姿を消したのです。なぜペレルマン博士は表舞台から消えたのか、ポアンカレ予想とはいったいどんな難問なのか。世紀の難問にとりつかれた数学者たちの100年にわたる闘いを辿ります。
 このポアンカレ予想は、アメリカのクレイ数学研究所によって100万ドルの懸賞金がかけられている7つの《ミレニアム懸賞問題》のうち、唯一解決済みのものです。AIが数学の難問・未解決問題を次々と解き明かし始めたこの時代、ポアンカレ予想に続く新たな難問の解決も、遠いことではないかもしれません。


 最後に、数学をテーマとした物語のなかから中学生でも読みやすいものを紹介しました。


『ナビエ・ストークス方程式と僕らの最終定理』 コ・ジョンウク(作) 岡崎暢子(訳) 講談社 2025年 ISBN:9784065401521
 父親が事業に失敗し、ソウルから地方の緑山(ノクサン)市に引っ越すことになった中学生のジュンピョ。お金もなく、勉強もできず、夢中になるものもない彼は、転校先で数学オタクのジョンシクと出会います。二人は豪雨による土石流で失われたという寺の仏像を、数学の力で見つけだし、懸賞金を手にしようとしますが・・・。
 うまくいかない毎日、中学生にはどうにもできない困難に、友情とくじけない心で立ち向かっていく彼らの姿に元気をもらえます。


 ガリレオは「自然という書物は数学の言葉で書かれている」と綴りました。宇宙のあらゆる現象が数学で表されるとしたら、そこにロマンを感じるか、はたまた興ざめしてしまうか・・・。数学という学問に苦手意識を持たず、興味深い1冊からその世界の一端を覗いてもらえると嬉しいです。

(東京学芸大学附属竹早中学校 司書 中村誠子)


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