古代人の穴や足跡

2017-12-04 16:45 | by 渡辺(主担) |

 美術部の高校3年生が卒業前につくる作品づくりの参考となる資料を探しに来ました。

Aくん「作品作りのためにインスピレーションを得たいのですが、古代人の掘った穴に意味があるのか知りたいんです。あと古代の人の足跡もあれば見たいのですが・・・」
司書「では、まずはどんな穴を掘っていたのか、絵の多い古代の資料をみてみましょう!」
と、まずは歴史の書架のところへ二人で移動。
専門書よりも、調べ学習用の資料のほうがイラストが多く掲載されています。まずは穴のイラストを調べてみると、主な穴は
①住居用、②狩りの罠、③水田、④食物倉庫、⑤ゴミ捨て場、⑥お墓、などがありました。
しかし、それはあくまでも生活にかかわる穴で、いずれも美術部のAくんのインスピレーションにはひっかかるものではなかったようです。
そこで・・・

閉架式の書架から古い資料もひっぱりだしてきました。その資料が、1987年から刊行されてきた『週刊朝日百科日本の歴史』(朝日新聞社発行)のシリーズ。「原始・古代編」をめくっていくと、第43巻の「使者を弔う」にいきあたりました。

それによると、「集落の中心に円形広場をつくる」、その外周に「家々を連ねる」、さらにその外苑に「ゴミ捨て場」をつくる、というのです。広場が「聖」、家々は「俗」、廃棄の場は「穢れ」を意味するとか。そして死者は中央広場に葬ったとなっています。
Aくん「古代の生活では〝円"をキーワードに穴を掘っていたのかも!!」と、縄文時代の集落が、バームクーヘンのような重圏構造だという図解をみて、どうやら美術作品のインスピレーションがわいてきたようです。
当初探していた、一つ一つの堀った穴に意味があるわけではありませんでしたが、生から死までを円を描いた生活空間で過ごしていたことは発見でした。
さらに、この資料には弥生時代の人が水田に残した多数の足跡の遺跡写真も掲載されており、Aくんも「まさか足跡の資料まであるとは思っていませんでした!」と大喜び。
Aくんがこれを参考に、どのような美術作品を創るのか、今からとても楽しみです!
(東京学芸大学附属国際中等教育学校:渡邊 有理子)

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