このまえあそこにあった紫色の本はどこですか?

2018-02-13 14:25 | by 村上 |


  これも、レファレンスと呼べるのかな…という質問ですが、学校司書ならこんな聞かれ方を意外とよくするのではないでしょうか?
 図書館では、テーマ展示や授業用の別置コーナーなど、その時々に本棚から抜いて本を置くことがよくあります。この前まであった本が、今日はもう違う本に変わっているということも少なくありません。

  先日、保健体育の授業で、「健康新聞を作ろう」という探究学習を図書館で行っているときに、聞かれたのがこの記事のタイトルにした質問です。体の成長・心の成長・欲求不満・体と心の相関関係…など1年生が保健体育で学んできたことに関連した本を、約100冊ほど別置したコーナーをそのときは作っていました。ブックリストを配布し、本には通しナンバーをつけていたので、その場所なら、この本ではないかと「人体」に関する本を差し出してみたら、違うという返事。中は、小さな章にわかれていて、読み物風だったという。

 1週間前の授業記憶を探りました。この日はテーマ決めで、保健体育とは別に、自分の関心のあることから、マインドマップをつくろうという授業でした。何気なく生徒の様子を眺めていたら、マインドマップの真ん中に「感情」という言葉を書いたまま、ストップしている少年がいたので、こんな本も何かのヒントになるかもと差し出した一冊を、他のクラスも使えるかもと、別置コーナーにポンと置いたことを思い出しました。「これかな?」と手渡したら、「これです!あれ、全然紫色じゃないですねぇ…」と彼女。


  
 『「感情」の解剖図鑑』 (苫米地英人著 誠文堂新光社 2017)は、脳科学者でもある著者が、一般の人に向けて書いたものです。感情はそもそも自分の意思とは関係なく生じてしまうもの。その脳科学的メカニズムと対処の方法が書かれた本です。感情をコントロールすることは、一見難しそうですが、こうしてひとつずついろいろな感情を細かく見ていくと、中学生にもいろいろな気づきがありそうな本です。


  
 健康新聞作成のため、帰りがけに生徒はこの本を借りていきました。誌面の一部にこの本で得た知識も加わるのでしょうか…?
 
 2学期の終わりには、やはり展示コーナーに並べてあった本が見当たらないと、カウンターで聞かれました。その時は、残念ながらその本はすでに借りられていました。そこで「何が調べたかったの?」と聞いてみたら、色の組み合わせに迷っていたので参考にしようかと思ったとのこと。それならこんな本はどうかな?と7類に案内。色に関する本を何冊か渡しました。話しているうちに、日頃からとても「色」に関心を持っていることがわかりました。
 そこで、以前買った少し専門的な本『色の知識;名画の色・歴史の色・国の色』を手渡したら、「面白そう!借りてみます。」と、初めての借り手がつきました。たとえ本の所在を聞いただけのレファレンスであっても、ちょっと強引に踏み込んで、本につなげられるのは、学校図書館ならではかもしれません。

         
(附属世田谷中学校司書 村上恭子)

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