画材・技法から絵本をさがす

2019-10-15 18:56 | by 富澤(主担) |

 先日、来館された図工の先生から「クレヨンを使った授業をしようと思うのですが、何か参考になりそうなものはありませんか」とご相談を受けました。もう少し詳しく、とお話を伺うと、「低学年で使うイメージの強いクレヨンも、6年生が本気を出して描けば、あんな表現もこんな表現もできる、というようなことをしたい」とのことで、「クレヨン画で描かれた絵本などがあれば」と仰います。

 まずは、7類(芸術)の棚でクレヨンまたはパステルの技法が載っている本が2冊見つかりました。

 

『きょうからアーティスト 1/いろんな絵の具で絵をかこう!』(フィオナ・ワット∥編/結城 昌子∥訳)フレーベル館

 



『きょうからアーティスト 2/空、木、動物かきわけテクニック!』(フィオナ・ワット∥編/結城 昌子∥訳)フレーベル館




3巻目の、『きょうからアーティスト 3/なんでも使ってアートしよう!』でも、様々な技法が具体的に紹介されていますが、画材ごとの紹介ではなく、あまりクレヨンも登場しません。)

 
 絵本については「何がどのように描かれているのか」や、「絵とお話がぴったりあっているか」といったことには注目しても、「その絵本の絵が、どんな画材や技法で作られているのか」については、あまり意識したことがなかったことに気づきました。印刷されたものだと、どうしても平面的になることもあり、一見して何の画材や技法が使われているのか、素人では判断が難しく、あきらめかけたとき、目に飛び込んできたのが、

『てんぐ /おばけ話絵本 4』(杉山 亮∥作/加藤 休ミ∥絵)ポプラ社

 





です。和尚さんの言いつけをやぶり、留守番のときに悪いてんぐを封印している紐をほどいてしまった小僧さん。よみがえったてんぐにつかまってしまい・・・、という怖いお話。なんといっても、表紙のてんぐの顔のインパクトが抜群です。著者紹介を読むと、加藤休ミさんは「クレヨン・クレパスを使って製作をしている」との情報があり、まさに求めにぴったりの本でした。

もう一冊、

『ぼくのくれよん』(長 新太∥おはなし・え)講談社

 




も、クレヨン画のように見えたのですが、裏付けとなる情報を見つけることができず、提供はしませんでした。

 絵本でも、挿絵でも、どのような画材・技法で制作されたのか、ごく簡単にでも、ぜひ情報をのせてほしいと思いますし、今後絵本を選書するときには、その部分についても意識しておく必要があることを実感しました。まだまだ、絵本の見方が一面的だったことに気付かされ、テクニックに裏付けされた画家の仕事の奥深さに、敬意を新たにしています。

 

(東京学芸大学附属大泉小学校司書 富澤佳恵子)

次の記事 前の記事